[pear_error: message="Success" code=0 mode=return level=notice prefix="" info=""]
JUGEMテーマ:ものがたり 防波堤で釣りをしていたら、奇妙な魚を釣り上げた。硝子のような質感で、輝く体色を橙から黄色へ、黄色から緑へ、緑から水色へ、そしてまた橙へと緩やかに変化させる。背鰭、胸鰭、腹鰭、臀鰭、尾鰭の全てが身体よりも大きく、その全ての鰭には細かな幾何学模様があって、それが万華鏡のように可憐に蠢いている。棘のようなものは見当たらなかったので、手に取ってみる。マシュマロのように軽く、宝石のように冷たかった。 「やあ、これは面白い魚を釣り上げられましたね」 長身の...
pale asymmetry | 2019.01.26 Sat 20:53
JUGEMテーマ:ものがたり この大陸に立ち尽くす少年の左目は青い。サファイアのように。青いのは左目だけだ。その瞳は、隠された風に繋がっている。 海を挟んだ向こうの大陸、そこに腰掛ける少年の左目は緑。エメラルドのような。緑なのは左目だけ。その瞳は、隠された雲に繋がっている。 大陸と大陸の真ん中、群島の一つに寝そべる少年の左目は金色。トパーズのような。金色なのは左目だけ。その瞳は、隠された雨に繋がっている。 三人の少年の目の前には、パラボラアンテナが建っている。そんなに...
pale asymmetry | 2019.01.22 Tue 20:48
JUGEMテーマ:ものがたり 僕は首の長い鳥で流れていた。巨大な鳥だ。絨毯みたいに。透明な瑠璃色をした、翼の小さな鳥だった。空間には歯がある。まあ、見えないけれど。その鳥の長い首にも歯があり、それが噛み合って僕と鳥は流れていたのだった。つまり世界はそういう歯車の連動で上手にやっていることが実に多くて、そういう意味では、僕らは流れていたというより、転がっていたという方が良いのかもしれない。それでもあえて流れていたといっているのは、その鳥が液体だったからだ。液体は、やっぱり流れるもの...
pale asymmetry | 2019.01.16 Wed 19:01
JUGEMテーマ:ものがたり 雨の音で目が覚めた。心が、招かれるような雨の音色だった。きっと、創生期のこの惑星に降った雨の音色はこんなだっただろう、と思ってしまうような音だった。私は寝床を出ると、庭に面した縁側に続く引き戸へと忍び足で近づく。何故だろう、そうしなければあやういバランスが崩れてしまいそうな気がしたのだ。まだ半分夢うつつだったから、そんな気がしたのかもしれない。 扉を開放する。雨は見当たらなかった。ああやっぱり、と私は思った。何か手順を間違えて、僅かに歪めてしまっ...
pale asymmetry | 2019.01.06 Sun 20:47
JUGEMテーマ:ものがたり 夜食を買いにコンビニに行った帰り道、歩道の真ん中にSを見つけた。街灯の少ない暗い路上で、そのSはタンポポ色に輝いていた。大きさは僕の掌くらい。極薄く、金属質。膝を折り、じっと見つめてみる。どういう仕組みで光っているのかは解らない。もちろん、これが何なのかも解らなかった。 プラスチックバッグを路上に置き、両手を地面について顔を近づけてみる。微かに何かの音が聞こえた。聞いたことのある音に思える。しばらく考えを巡らせてみて、それがソングだと気づいた。つま...
pale asymmetry | 2019.01.05 Sat 21:13
JUGEMテーマ:ものがたり その場所には、巨大なビルディングが建つはずだった。その地方都市のランドマークになるはずだった。区画が整備され整地され、翌々日から工事が始まるはずだった。しかし今から三年前のその日、突然その場所の真ん中にフットプリントが出現した。それは巨大な足跡で、指は六本あった。踵が尖っていた。 最初にそれを見つけた若者たちが、メジャーを用意してそのサイズを測ろうとした。そのときフットプリントの上に足を踏み出そうとした若者の一人が、弾き飛ばされた。数メートル飛ば...
pale asymmetry | 2018.12.22 Sat 21:36
JUGEMテーマ:ものがたり 時間には、三つの様態があるのだという。第一に、過去から未来へと直線的に進む時間。第二に、季節や月の満ち欠けや、暦のように循環する時間。そして第三にひたすらに解ける時間。第一と第二はともかく、第三についてはどう解釈すればいいのか、私には上手く咀嚼できない。この三つの様態とは、私がフィールドワークで訪れたある場所での考え方だ。そこには、確かに時間の三つの様態が存在した。その存在の意味は、私には曖昧模糊としたままだけれど。 陽光に煌めく錦織の...
pale asymmetry | 2018.12.13 Thu 21:23
JUGEMテーマ:ものがたり 叔母が火星にバカンスに出かけたので、庭の管理を任された。管理といっても、僕が日常的にしなければならないことは特にない。つまり主な仕事は留守番だ。その庭は、石だけで構成されていた。様々な大きさ、形、色彩だったけれど、石は石だ。貴石でもなければ半貴石でもない。ただ輝石は混じっていたので、陽光を綺麗に弾き、晴れた日には光の幾何学紋様を纏う庭だった。 この庭は叔母の私的な所有物だったが、世界中から鑑賞希望者がやって来る。この『世界』とは文字通りの世界だ。...
pale asymmetry | 2018.12.06 Thu 21:00
JUGEMテーマ:ものがたり トイレに入ろうとしたら、トイレの照明のスイッチがオンになっている。自宅のトイレのことだ。いつからかはよく思い出せないけれど、トイレに入ろうとすると、いつもスイッチがオンになっているのだ。 もちろん、トイレを出たときにスイッチはオフにしている。しているはずだ。最初はうっかり消すのを忘れていたのかと思ったけれど、何度も続いたあとは、ちゃんとトイレを出たときにオフにしたことを確認している。確実に、しっかりと。 けれど次に入ろうとすると、やっぱりスイ...
pale asymmetry | 2018.11.26 Mon 21:27
JUGEMテーマ:ものがたり 私は気持ち良い仕事をしている。あるいは、気持ち良いを仕事にしている。それは、生殖行動に関する仕事だ。種を蒔く仕事といってもいい。それも百発百中だ。といっても、不妊治療とかに関する事ではない。私のカスタマーは子供は欲しいけれど、性交はしたくないという女性。もしくは、子供が欲しいけれどパートナーは男性ではないという女性。そういう女性と私は生殖行動をする。いや、するわけではない。というか、するのだ。この辺りは少し複雑だ。 私は女性だ。そしてペニスを有し...
pale asymmetry | 2018.11.25 Sun 21:25
全1000件中 521 - 530 件表示 (53/100 ページ)