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掌編。超短編。など、名前は様々。
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月下の訪問者

JUGEMテーマ:ショート・ショート 最初に思ったのは、枯葉の上で、蝶が死んでいる。ミズナラの林の中、ぽっかりと、そこだけが明るい。木漏れ日を受けて、輝いているかのように。 誇張では無く、本当に、そう思ったのだ。 空から落ちた時の、最後の羽ばたき、そのままに、ああ、蝶が死んで落っこちている、と。 勘違いに気が付いたのは、歩きながら読んでいた本を閉じて、その場所に近付いて見た時だ。 思わず知らず、自分は息を付いていた。美麗にして精緻な細工を凝らした、宝飾品だと、一目では、どうしても、気が付かなかった...

One bard's ditty | 2009.09.26 Sat 22:45

Pain

JUGEMテーマ:ショート・ショート深い蒼を見詰めた。肌を撫でる潮風は、ほんのりと辛い匂いを纏い自分に絡みつく。深く深い蒼の色が、目に突き刺さるようだった。

Le Figuier Commun | 2009.09.26 Sat 17:19

träd

JUGEMテーマ:ショート・ショート 木のような少年だった。 手足が木の枝のように細かったことも、 身じろぎもせず床に座り込んでいたこともそうだが、 少年の顔が木に彫られたような顔をしていたのだ。 彼の眼は節穴のようで、瞼の奥を覗き込んでも 眼球らしきものは見当たらなかった。 私が彼の目の前で体を動かしてみても、私の姿を追うことはなく、 眼が見えているのかどうかすら疑わしかった。 ぎこちなく片側だけ開いた唇から発せられるのは、 言葉ではなく、ただの音だった。 体の中に気管や内臓があって、 何らかの生命...

Infinity With You | 2009.09.26 Sat 15:14

風吹く草原で

JUGEMテーマ:ショート・ショート 「古代の遺跡の前で、写真を撮りたいなんて、お客さん、そりゃ、無茶だ。」 タクシーの運転手が、いつもの調子と言った様子で、遠来と直ぐに解る格好のお客を宥めている。 この地方の何処に行っても、同じような情景を見る事は出来るだろう。背景は、様々だろうが。 今日のお客は、二人。熟年のいかにも正直そうな夫婦ものだ。無理だろう。私は思った。そんな事言っても。品の良い奥様の手には、既にニコンが握られている。旦那様の方は、憮然として、腕を組んで、遺跡を眺めている。 一番近い街...

One bard's ditty | 2009.09.25 Fri 23:03

ある朝の風景

JUGEMテーマ:ショート・ショート 小鳥の啼き交わす声で、眼が覚めた。 昨夜は飲み過ぎた。 でも、絶対に、自分ひとりの責任では無い。 眼を覚ますと、いつもの寝室の天井が、朝の光の中で、眼に入る。 久し振りに、昔の友人に出会ったのだ。 頭痛がする頭で、どんな話を、居酒屋でしたのか、思い出そうとする。 色々だ。 子供の頃の事。学校の事。釣りの事。 熱いエールを何杯もお代わりして、何が悪い。 いつの間にだか、周りにいた人間を巻き込んで、乾杯の掛け声を繰り返していたような気もするが。 だったら、どうだと...

One bard's ditty | 2009.09.24 Thu 23:13

ちの色 水のいろ

許されるならば、全ての涙を掬い取ろり吐き出される冷たい息を 命の息吹にかえて見上げた空があまりにも赤く 紅く涙の色で滲ませよう流れ出す血と引き換えに 空の青さを取り戻そうよ

ペシミスティックと謳われて(β | 2009.09.24 Thu 22:08

Vino Bianco

樽のうえに黒猫を配した愛らしいラベルのドイツワインを手に取ると、晋が首を振る。「そんな甘いのいやだよ」甘口のワインは美味しいけれど、この壜を手に取ったのは、猫が可愛かったから。固執する必要はなかった。

さまよえるbitch | 2009.09.24 Thu 22:06

3

JUGEMテーマ:ショート・ショートいつも私をまっすぐ見つめるその眼を、私はどうしても同じように見つめ返すことができない。だがその眼は、私がすでにその眼に雁字搦めにされどんなに足掻こうとも逃れられないと分かっているのだ。微笑みの欠片も、温もりの残骸も存在しない鋭利な刃物のようなその眼に、私は恐怖さえ覚えていた。蜘蛛の巣より巧妙に私を捉えるその眼から、どうか自由にして欲しい。時折、その眼が私ではない誰かへ向く。不意に私を解放したその眼は、打って変わって親愛の情や穏やかな優しさを湛えた。私は僅かな時間...

Infinity With You | 2009.09.24 Thu 17:26

リンコさんの話

JUGEMテーマ:ショート・ショート姉と弟。

。○おうちがいちばん○。 | 2009.09.24 Thu 01:23

夢の中で

JUGEMテーマ:ショート・ショート 新しい花が、広い庭の、入り口近くの薔薇の繁みに咲こうとしていた、晩秋の午後。 街一番の病院に、一人の見舞い客が訪れた。 話し声と行き交う人々(特に看護婦)でざわざわしている廊下をくぐり抜け、客はコートの裾をひらめかせ、とある病室のドアを潜った。 途中、2階の窓から、階下の庭を見下ろす、入院患者の側を通り抜ける時も、そちらをちらとも見る事も無ければ、此処に至るまで、誰にも案内を乞うことも無く。 晴れた日の病室。花瓶の百合と丁度、待っていた、若い背の高い医師が、彼...

One bard's ditty | 2009.09.23 Wed 23:38

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