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JUGEMテーマ:ショート・ショート 私の隣で、噴水の水面に映った姿には、二枚の七色に輝く翅が有った。私の姿形は、いつもと全く変わらない(少し、進歩が有れば良いのに。)。 背筋も凍る瞬間の後、私は、傍らのガール・フレンドを、恐る恐る振り向いた。 ラケルは、いつもの通り、私に、どじでチビで、冴えない私に、輝く笑顔を投げ掛けてくれた。 だが。 「ウィリス。」 私の名前を呼ぶその声は、少しばかり、震えていた。 「な、何だい?ラケル?」 「私が、怖くない?」 「怖い?君が?!」 意外なその単語に、私は却って...
One bard's ditty | 2009.09.27 Sun 23:38
JUGEMテーマ:ショート・ショートこの部屋には窓がない。窓がないから、カーテンもない。僕は優しい彼女に閉じ込められてここから一歩も外に出られない。僕はとても醜い。彼女がこの狭くて暗い部屋から僕を出してくれないのは、夏場でも帽子と、マスクと、サングラスと車いすなしで外を歩けないほど僕が余りにも醜いせいだと思っていた。彼女はとても美しくて、顔も、髪も、手足も、身体も、僕と同じ人間にはとても見えなかった。人間に見えないのは僕の方だ。彼女に出会うまで、誰も僕に近寄ってくる人間はいなかったし、彼女がしてく...
Infinity With You | 2009.09.27 Sun 19:22
JUGEMテーマ:ショート・ショート 最初に思ったのは、枯葉の上で、蝶が死んでいる。ミズナラの林の中、ぽっかりと、そこだけが明るい。木漏れ日を受けて、輝いているかのように。 誇張では無く、本当に、そう思ったのだ。 空から落ちた時の、最後の羽ばたき、そのままに、ああ、蝶が死んで落っこちている、と。 勘違いに気が付いたのは、歩きながら読んでいた本を閉じて、その場所に近付いて見た時だ。 思わず知らず、自分は息を付いていた。美麗にして精緻な細工を凝らした、宝飾品だと、一目では、どうしても、気が付かなかった...
One bard's ditty | 2009.09.26 Sat 22:45
JUGEMテーマ:ショート・ショート深い蒼を見詰めた。肌を撫でる潮風は、ほんのりと辛い匂いを纏い自分に絡みつく。深く深い蒼の色が、目に突き刺さるようだった。
Le Figuier Commun | 2009.09.26 Sat 17:19
JUGEMテーマ:ショート・ショート 木のような少年だった。 手足が木の枝のように細かったことも、 身じろぎもせず床に座り込んでいたこともそうだが、 少年の顔が木に彫られたような顔をしていたのだ。 彼の眼は節穴のようで、瞼の奥を覗き込んでも 眼球らしきものは見当たらなかった。 私が彼の目の前で体を動かしてみても、私の姿を追うことはなく、 眼が見えているのかどうかすら疑わしかった。 ぎこちなく片側だけ開いた唇から発せられるのは、 言葉ではなく、ただの音だった。 体の中に気管や内臓があって、 何らかの生命...
Infinity With You | 2009.09.26 Sat 15:14
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「古代の遺跡の前で、写真を撮りたいなんて、お客さん、そりゃ、無茶だ。」 タクシーの運転手が、いつもの調子と言った様子で、遠来と直ぐに解る格好のお客を宥めている。 この地方の何処に行っても、同じような情景を見る事は出来るだろう。背景は、様々だろうが。 今日のお客は、二人。熟年のいかにも正直そうな夫婦ものだ。無理だろう。私は思った。そんな事言っても。品の良い奥様の手には、既にニコンが握られている。旦那様の方は、憮然として、腕を組んで、遺跡を眺めている。 一番近い街...
One bard's ditty | 2009.09.25 Fri 23:03
JUGEMテーマ:ショート・ショート 小鳥の啼き交わす声で、眼が覚めた。 昨夜は飲み過ぎた。 でも、絶対に、自分ひとりの責任では無い。 眼を覚ますと、いつもの寝室の天井が、朝の光の中で、眼に入る。 久し振りに、昔の友人に出会ったのだ。 頭痛がする頭で、どんな話を、居酒屋でしたのか、思い出そうとする。 色々だ。 子供の頃の事。学校の事。釣りの事。 熱いエールを何杯もお代わりして、何が悪い。 いつの間にだか、周りにいた人間を巻き込んで、乾杯の掛け声を繰り返していたような気もするが。 だったら、どうだと...
One bard's ditty | 2009.09.24 Thu 23:13
許されるならば、全ての涙を掬い取ろり吐き出される冷たい息を 命の息吹にかえて見上げた空があまりにも赤く 紅く涙の色で滲ませよう流れ出す血と引き換えに 空の青さを取り戻そうよ
ペシミスティックと謳われて(β | 2009.09.24 Thu 22:08
樽のうえに黒猫を配した愛らしいラベルのドイツワインを手に取ると、晋が首を振る。「そんな甘いのいやだよ」甘口のワインは美味しいけれど、この壜を手に取ったのは、猫が可愛かったから。固執する必要はなかった。
さまよえるbitch | 2009.09.24 Thu 22:06
JUGEMテーマ:ショート・ショートいつも私をまっすぐ見つめるその眼を、私はどうしても同じように見つめ返すことができない。だがその眼は、私がすでにその眼に雁字搦めにされどんなに足掻こうとも逃れられないと分かっているのだ。微笑みの欠片も、温もりの残骸も存在しない鋭利な刃物のようなその眼に、私は恐怖さえ覚えていた。蜘蛛の巣より巧妙に私を捉えるその眼から、どうか自由にして欲しい。時折、その眼が私ではない誰かへ向く。不意に私を解放したその眼は、打って変わって親愛の情や穏やかな優しさを湛えた。私は僅かな時間...
Infinity With You | 2009.09.24 Thu 17:26
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