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JUGEMテーマ:ショート・ショート 「私が蓄えているイメージは、私独自のものなのかしら?」 彼女は斜めの空を見つめて呟く。午後の遅く、小さなベランダで、僕らはコーヒーを飲みながら寛いでいる。彼女が見上げた空は、青と銀が斑に絡み合っていて、夏の名残と秋の先触れが混在していた。 「いいえ、私のイメージはもちろん私独自のもの。疑う理由などない」 僕よりも先に、彼女自身がそう答える。小さく頷き、カップに口を付ける。そして、微かに表情を歪める。 「でも、そのイメージは世界中に散...
pale asymmetry | 2026.10.07 Wed 17:28
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「あなたの躰を風は吹き抜けているかしら?」 やわらかく目を閉じて、中天に顔を向けながら、彼女が微笑んでいる。 「どうだろう。そう感じるけれど」 僕は風上に躰を向けて、その弱い風を前進で感じ取ろうとする。僕らは屋上に並んで佇んでいて、空では分厚い雲がとてものろのろと流れていて、だからごくゆったりとしたリズムで陽光を遮ったり解放したりしている。微かな風は僕の躰にぶつかることなく、擦り抜けていっているような気がした。あるいは、撫でる代わりに...
pale asymmetry | 2026.10.04 Sun 17:36
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「世界には、神様が溢れている」 彼女が当たり前のことのように言うので、僕も当たり前のこととして頷く。 「この辺りの神様のことよ」 そう言って、彼女は薄く笑う。何処かいやらしい笑顔だった。 「八百万的な?」 僕が確認すると、彼女は満足げに頷く。 「そう、付喪神的なものも含めてね」 企むような笑顔。すでにあなたも共犯よ、と言っているようだった。 「でも今日出会った子供らは、神なき子らだった」 彼女は少し遠くに視線を逃がす...
pale asymmetry | 2026.09.30 Wed 18:08
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「おかえり」 僕は言いながら少し照れてしまう。 「ただいま」 君は長閑に囁き、穏やかに笑う。 「どうだった?」 僕は敢えて漠然と訊く。君の世界の精度を分析したいとは思っていないから。 「そうね、つまらなかったわ」 君は一瞬遠くを見つめる眼差しになってから、少しだけ冷めた口調で言う。 「あなたの方は?」 君もまた漠然とした問いを投げかける。僕は君の喉元を見つめたまま、少しだけ声のトーンを上げることを意識する。 「普通...
pale asymmetry | 2026.09.27 Sun 16:50
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「終末は必ず来る。今日明日じゃなくてもいつか必ず来るものでしょう?」 君はそう言って、何処か愉しそうに笑う。 「今日明日に来ないからと言って、終末が失われたわけではない。終末は私たちの時間軸の先に必ず存在していて、いつかはきっと辿り着いてしまう」 君は部屋の窓を開け放つ。軽やかな午後の風が流れ込んできて、部屋の空気を踊らせる。 「私たちはその終末に係わることはないかもしれない。係わることになるかもしれない。それは全く解らない」 ...
pale asymmetry | 2026.09.24 Thu 18:13
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「あなたと私が触れている装置は似ている。同じかも知れない」 あの人は穏やかな口調でそう言った。実は私もそのことは考えていた。同じとは思わなかったけれど、とてもよく似ていると思っていたのだった。 「同じではないとしたら、制御の在り方に違いがあるのかもしれませんね」 あの人はそう言って、少し恥ずかしそうに笑う。別に恥ずかしがっているわけではない。あの人はいつだってそんな風に遠慮がちに笑うのだ。 「私の制御は不確実性を有している。でもあな...
pale asymmetry | 2026.09.23 Wed 17:45
JUGEMテーマ:ショート・ショート 君の素子が加速する夢を見た。目覚めて最初に考えたのは、素子って何だろうということ。よくよく考えてもそれが何なのかさっぱり解らなかった。なのに君の素子が加速する夢を見たのだ。何だか解らないものが、加速するという振る舞いを纏う。僕はそれを確かに観測していた。そして混乱していた。眩惑されたかも知れない。でもそれが観測に影響を及ぼしたとは思えない。僕はその詳細を記録したはずなのに、当然だけれどそれは夢の中だったから、何に記述したのは解らないし、目覚め...
pale asymmetry | 2026.09.18 Fri 18:31
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「それはとても小さな舟だったよ」 祖母は蝋燭に火を着けて、そんな風に語り出した。奥座敷のその部屋には窓がなく、四方を襖で仕切られていたから、蝋燭がなければ真っ暗だっただろう。その部屋には照明さえもなかったのだ。 「どのくらい小さいかというと、小指の爪くらいの小ささだったよ」 祖母はそう言いながら私の左手を取り、その小指の爪をやわらかく撫でた。 「だからなのか、その舟は微かな舟と呼ばれていたよ」 私の左手に触れている祖母の両手はと...
pale asymmetry | 2026.09.17 Thu 18:06
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「フーコーの精霊? 振り子を操る精霊?」 僕が問い返すと、彼女は弾けるように笑った。 「フーコーじゃなくて、風向。風の向きの方」 そう言って、彼女が部屋のエアコンディショナーを指差す。 「エアコンの風向がどうしたの?」 僕はエアコンディショナーに近づき、その送風口に手を翳す。ちゃんと冷風が吹き出ていた。 「見て」 彼女はそう言いながら、エアコンディショナーのリモコンを僕に差し出す。小さな液晶に色々な情報が表示されていた。 ...
pale asymmetry | 2026.09.13 Sun 11:51
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「時間って、本当に流れていると思う?」 あなたが真剣な表情で訊くから、私は少し身構える。 「時間って流れるものなの?」 思わず私は問い返していた。 「流れる以外にある?」 あなたが少し戸惑うように訊く。 「例えば積み重なるとか、あるいは織り上げるとか」 「時間が積み重なる……。時間を織り上げる……」 あなたは遠い眼差しで、私の言葉を繰り返し、何度か首を傾げる。 「確かに。でもやっぱり流れるが一番...
pale asymmetry | 2026.09.11 Fri 18:18
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