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JUGEMテーマ:ショート・ショート 君の素子が加速する夢を見た。目覚めて最初に考えたのは、素子って何だろうということ。よくよく考えてもそれが何なのかさっぱり解らなかった。なのに君の素子が加速する夢を見たのだ。何だか解らないものが、加速するという振る舞いを纏う。僕はそれを確かに観測していた。そして混乱していた。眩惑されたかも知れない。でもそれが観測に影響を及ぼしたとは思えない。僕はその詳細を記録したはずなのに、当然だけれどそれは夢の中だったから、何に記述したのは解らないし、目覚め...
pale asymmetry | 2026.09.18 Fri 18:31
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「それはとても小さな舟だったよ」 祖母は蝋燭に火を着けて、そんな風に語り出した。奥座敷のその部屋には窓がなく、四方を襖で仕切られていたから、蝋燭がなければ真っ暗だっただろう。その部屋には照明さえもなかったのだ。 「どのくらい小さいかというと、小指の爪くらいの小ささだったよ」 祖母はそう言いながら私の左手を取り、その小指の爪をやわらかく撫でた。 「だからなのか、その舟は微かな舟と呼ばれていたよ」 私の左手に触れている祖母の両手はと...
pale asymmetry | 2026.09.17 Thu 18:06
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「フーコーの精霊? 振り子を操る精霊?」 僕が問い返すと、彼女は弾けるように笑った。 「フーコーじゃなくて、風向。風の向きの方」 そう言って、彼女が部屋のエアコンディショナーを指差す。 「エアコンの風向がどうしたの?」 僕はエアコンディショナーに近づき、その送風口に手を翳す。ちゃんと冷風が吹き出ていた。 「見て」 彼女はそう言いながら、エアコンディショナーのリモコンを僕に差し出す。小さな液晶に色々な情報が表示されていた。 ...
pale asymmetry | 2026.09.13 Sun 11:51
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「時間って、本当に流れていると思う?」 あなたが真剣な表情で訊くから、私は少し身構える。 「時間って流れるものなの?」 思わず私は問い返していた。 「流れる以外にある?」 あなたが少し戸惑うように訊く。 「例えば積み重なるとか、あるいは織り上げるとか」 「時間が積み重なる……。時間を織り上げる……」 あなたは遠い眼差しで、私の言葉を繰り返し、何度か首を傾げる。 「確かに。でもやっぱり流れるが一番...
pale asymmetry | 2026.09.11 Fri 18:18
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「それはあなたの感受性が働いているからでしょう?」 あなたはそう言いながら、私の前髪を弄ぶ。風よりも上手に、日差しよりもしっかりと。 「幾つもの儀式を纏ってきたから、そのような感受性が備わったのでしょうね」 前髪を弄んでいた指先は、いつの間にかつむじの辺りを撫ぜている。その渦の奥底にある真理を摘まみ取ろうとしているかのように。 「でもどんな儀式にだって、遊びが備わっている。だから儀式は常に変化の余地を有している」 あなたは遠くを...
pale asymmetry | 2026.09.10 Thu 18:41
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「傘を持ってきたのに、雨の気配もない」 少女は空を睨んで嘆く。確かに空は銀色で、夏の勢いを抱えたままだ。銀色の向こうに、次の季節の青が待機しているのかも知れないけれど、地上を這い回る僕らからはそれを確認することは出来ない。 「こんな嵐は間違ってる」 青年は喉を鳴らしてソーダ水を飲んだ後、長閑な口調で言う。本当に間違っていると思っているのか、それとも間違っているという想いを愉しんでいるのか、そんな曖昧な表情で。 「まあ、世界は間違いだ...
pale asymmetry | 2026.09.04 Fri 18:37
JUGEMテーマ:ショート・ショート 誰かは眠りにつこうとしているだろう。別の誰かは目覚めようとしているだろう。僕はあわいを滑っている。君は飛び立とうとしているかもしれない。あるいは空港の片隅で、僕と同じように雨滴を眺めているかも知れない。でも君はちゃんと地に足を着けて、重力をある程度操っているだろう。僕の方は重い車を走らせているにもかかわらず、この夜と朝のあわいを滑っているとしか思えない。風が少し強まっているから、君はそのことを危惧しているかも知れない。でもこれ以上に強くなる気...
pale asymmetry | 2026.09.03 Thu 08:08
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「みそらの色をのせると良いよ」 僕の画用紙を覗き込んで、少女はそう言って得意げに笑う。 「みそらの色ってどんな色?」 僕が尋ねると、少女は空を指差す。 「晴れた空の色」 その声に導かれて、僕は空を見上げる。輪郭の僅かな部分にだけ雲を抱えた空は、夏の陽光のせいで銀色に発光している。空全体がそんな感じだったから、眩しすぎて色は良く解らなかった。 「晴れ過ぎていて、よく見えないよ」 僕がそう言うと、少女も空を見つめて目を細める。...
pale asymmetry | 2026.08.31 Mon 18:07
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「カボチャからカボチャの馬車を連想するのは安易だと思う」 彼女はきっぱりと言い切る。 「じゃあ、何を連想するの?」 私が尋ねると、彼女は僅かに肩を竦めた。 「例えば、カボチャのUFOとか」 そう言った後、彼女は何故かはにかむように笑った。 「UFOは面白いと思うけれど、それは何処まで運んでくれるんだろう?」 「たぶん宇宙の中心まで。あるいは遙かな未来まで」 「過去には行けない?」 「過去は駄目。もうそれはとっくに失われているか...
pale asymmetry | 2026.08.28 Fri 18:30
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「朝の色って何色だと思う?」 彼女が唐突に訊いてくる。僕らは縁側に並んで腰掛けて、レモンティーを飲んでいる。縁側に面した庭は、今まさに朝の色に染まろうとしている。僕らはときどき早起きして、そういう庭を眺めて過ごしたりしている。 「朝の何の色? 光の色? 空気の色? 庭の色?」 僕が聞き返すと、彼女は首を傾げ少しの間黙り込む。 「朝全体の色……かな?」 自分自身に問い掛けるように、彼女はぽつりと答える。僕はレモンティー...
pale asymmetry | 2026.08.22 Sat 11:49
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