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JUGEMテーマ:ショート・ショート 嵐は過ぎ去ったけれど、空模様は雨交じり。細かな雨が気まぐれに漂っている。それで僕らは庭に出て、その雨を鑑賞することにした。あるいはその雨を纏った庭と触れ合うことにした。 「本当に気ままな雨だね」 縁側に腰掛けた彼女が呟き、温かい紅茶で満たされたカップに口を付ける。その目線は雨が舞う宙ではなく、庭の地面に向けられている。湿った地面は、見知らぬ獣の淑やかな寝姿のような感じがした。雨は断続的に舞う。その合間には陽光が踊ったりしている。だから僕...
pale asymmetry | 2026.10.27 Tue 15:39
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「塗りつぶされてるよ」 カーテンの隙間から窓外を覗く彼女が呟く。僕はその傍らに歩み寄り、窓外に目を向ける。確かに外には濃密な黒が満ちていた。何かが抜け落ちてしまったのか、あるいは何かにのし掛かられているのか、そんな感じに見えた。 「濃厚な黒だね」 僕がそう口にすると、彼女は外を見つめたまま頷く。その黒に気持ちを半ば奪われているようなそんな頷きだった。それが危険な兆候なのかどうかは僕には解らない。その濃厚な黒は綺麗だったから、気持ちが奪...
pale asymmetry | 2026.10.23 Fri 17:56
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「私は卵を抱えている」 彼女が唐突に告白する。夜明けが間近の時刻。暗いベランダ。僕らは真夜中に起きて夜を鑑賞していた。冷えた空気を掻き混ぜながら、温いワインを飲んだりして。 「そしてその卵は痛みを秘めている」 彼女は頬を赤らめて、真っ直ぐ夜を見つめて言う。夜の向こう側の大きな存在に向けて告白するように。 「君が痛みを抱えているわけじゃない」 僕はそっと囁いた。君の気を引くために。そうしなければ、君が夜の向こう側へ飛び立ってしまい...
pale asymmetry | 2026.10.19 Mon 15:34
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「あなたは計算機だという自覚が足りないのだと思う」 彼女は斜め上を見つめて言う。その言葉はだから、空に放ったのかもしれない。雲は多めだけど、陽光の満ちあふれた空に。 「世界に遍在しているのは定数ばかりじゃない」 そういうと、口笛を吹くように唇を尖らせた。あるいは僕には聞こえない周波数で、某かのメロディーが奏でられていたのかもしれない。北からの冷風が心地良かった。強めのその風と透明な旋律は絡み合ったのかもしれない。 「原子核反応だけで...
pale asymmetry | 2026.10.15 Thu 17:33
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「雨に寄り添われてる」 彼女の囁きで、僕は眠りから浮かび上がる。寝室は薄暗く、陽光の気配は感じられない。 「控えめな雨に、寄り添われてる」 彼女がまた、僕の耳元で囁く。確かに、雨の音がベッドの周りで踊っている。それはか弱く、けれど強く捧げるような舞踏だった。 「私はでも寄り添えないな」 彼女が低く笑う。 「どうして?」 僕は彼女に尋ねた。声は思ったより掠れていて、だから哲学的に響いた。その掠れた声が雨の舞踏を乱したような気...
pale asymmetry | 2026.10.13 Tue 17:36
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「私が蓄えているイメージは、私独自のものなのかしら?」 彼女は斜めの空を見つめて呟く。午後の遅く、小さなベランダで、僕らはコーヒーを飲みながら寛いでいる。彼女が見上げた空は、青と銀が斑に絡み合っていて、夏の名残と秋の先触れが混在していた。 「いいえ、私のイメージはもちろん私独自のもの。疑う理由などない」 僕よりも先に、彼女自身がそう答える。小さく頷き、カップに口を付ける。そして、微かに表情を歪める。 「でも、そのイメージは世界中に散...
pale asymmetry | 2026.10.07 Wed 17:28
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「あなたの躰を風は吹き抜けているかしら?」 やわらかく目を閉じて、中天に顔を向けながら、彼女が微笑んでいる。 「どうだろう。そう感じるけれど」 僕は風上に躰を向けて、その弱い風を前進で感じ取ろうとする。僕らは屋上に並んで佇んでいて、空では分厚い雲がとてものろのろと流れていて、だからごくゆったりとしたリズムで陽光を遮ったり解放したりしている。微かな風は僕の躰にぶつかることなく、擦り抜けていっているような気がした。あるいは、撫でる代わりに...
pale asymmetry | 2026.10.04 Sun 17:36
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「世界には、神様が溢れている」 彼女が当たり前のことのように言うので、僕も当たり前のこととして頷く。 「この辺りの神様のことよ」 そう言って、彼女は薄く笑う。何処かいやらしい笑顔だった。 「八百万的な?」 僕が確認すると、彼女は満足げに頷く。 「そう、付喪神的なものも含めてね」 企むような笑顔。すでにあなたも共犯よ、と言っているようだった。 「でも今日出会った子供らは、神なき子らだった」 彼女は少し遠くに視線を逃がす...
pale asymmetry | 2026.09.30 Wed 18:08
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「おかえり」 僕は言いながら少し照れてしまう。 「ただいま」 君は長閑に囁き、穏やかに笑う。 「どうだった?」 僕は敢えて漠然と訊く。君の世界の精度を分析したいとは思っていないから。 「そうね、つまらなかったわ」 君は一瞬遠くを見つめる眼差しになってから、少しだけ冷めた口調で言う。 「あなたの方は?」 君もまた漠然とした問いを投げかける。僕は君の喉元を見つめたまま、少しだけ声のトーンを上げることを意識する。 「普通...
pale asymmetry | 2026.09.27 Sun 16:50
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「終末は必ず来る。今日明日じゃなくてもいつか必ず来るものでしょう?」 君はそう言って、何処か愉しそうに笑う。 「今日明日に来ないからと言って、終末が失われたわけではない。終末は私たちの時間軸の先に必ず存在していて、いつかはきっと辿り着いてしまう」 君は部屋の窓を開け放つ。軽やかな午後の風が流れ込んできて、部屋の空気を踊らせる。 「私たちはその終末に係わることはないかもしれない。係わることになるかもしれない。それは全く解らない」 ...
pale asymmetry | 2026.09.24 Thu 18:13
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