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掌編。超短編。など、名前は様々。
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貴方の右側

JUGEMテーマ:ショート・ショート音楽くらいかけてほしい。いまだ慣れない座席でシートベルトを絞めて、それだけで窮屈だと感じるのに、途切れがちな会話がさらにまた息の詰まる空気をつくりだす。それでも、もう五回目の乗車になる。密閉された空間に乗り込んだ僕たちはどちらもぎこちなく笑っている、のだと思う。僕の方の携帯電話は充電されていたのだが向こうはそうじゃなかったらしく、いそいそと「じゃあ寿司にしよう、寿司食べに行こう」と言われたので、無条件にうんと頷いた。次に、何一つとして食べたいものが言えなかったこ...

記憶と夢―短編集― | 2009.08.29 Sat 01:09

幸せと首飾り

  親戚の結婚式に行く準備をしている時だった。父も母もいつもよりきれいな服装をしていて、私自身もきれいな服を着せられた。何をしに行くのかよく分かっていない私は、母の首に下がるものをみて、目を輝かせた。「おかあさん、それ、おさとうみたいだね」私の言葉を聞いて、母は首を傾げる。その動きに合わせて、白い粒の連なりが揺れた。「どうして?」「こないだ、おかあさんが作ったクッキーについてたのににてる」 ああ、と母は手を叩き、やわらかく微笑んだ。 母が作ってくれたクッキーは、銀色の小さな粒で飾られてい...

カメレオンの憂鬱 | 2009.08.29 Sat 00:14

とある日の悪夢

 私は実家に帰省していた。独り暮らしとは違い、何もしなくても食事の用意がされるというのは本当に素晴らしい。 母親のありがたさをひしひしと感じながら、パソコンをつけて、ネットサーフィンをしていた。 ふと気付くと、足下に実家で飼っている猫がいたので抱き上げた。 白くて柔らかい身体。前に見たときより一回り大きくなっていた。 抱き上げて、気付いた。 猫の首が、頭部が、ない。「え?」 あまりにも異様な猫の姿に、一瞬頭が真っ白になった。何が起きているのだろう。これはなんだろう。 本来首がついているはずの...

カメレオンの憂鬱 | 2009.08.29 Sat 00:11

サカノボル

JUGEMテーマ:ショート・ショート 空の青さよりも雲の白さが目立つ午後だった。風は穏やかに私の頬をかすめる。しかしそんな穏やかさとは裏腹に、彼らは東京の海の臭みを口元に運んできた。飲んでいたアイスティーがひどくまずい。その味が元々まずいものなのか、この海の臭みによるものなのか判断が付かないくらいにまずかった。私は吐きそうになるのをこらえ、これから船に乗るのにこんなに気分が悪くて大丈夫なのだろうかと思うと、なぜだか笑えた。720円もかかった浅草行きの切符を握り締める。見つめる先の海には空き缶が浮...

La lune bleu | 2009.08.26 Wed 23:35

死闘の館 3

JUGEMテーマ:ショート・ショート  老人の話はそれほど長いものではなかったが、ここがひどくさびしい場所だということはいやでも理解できた。それほどこの建物は息苦しい。あまりにも深く募った人恋しさや哀しさが、そこかしこにあふれている。それは数年前に出て行ったという主人の家族の写真や、何年も使われていない部屋の埃を見るのにもまして、この屋敷全体を覆っている、どこか重苦しい粘着質な冷たさの中にこそ潜んでいる気がした。 話を聞く間伏せていた目をあげると、老人の顔がドアにはめ込まれたガラス越しにこちら...

つらつら | 2009.08.26 Wed 02:54

土手 ススキの穂

土手 緑 ススキ 茶色 穂 肌色 川 キラキラ銀色 道 グレー アスファルト おじさん こんにちわ暖かくなってきたね おじさんの帽子 水色 可愛い 色だね ペンペン草 なずな 白 夕日 白 色 色々 色んな色ある 今日はちゃんとカラー color 全体的に白いフィルタ

ペシミスティックと謳われて | 2009.08.23 Sun 21:48

雪の降る所

JUGEMテーマ:ショート・ショート  窓の外を見ると、しんしんと降り続ける雪景色しか無かった。心を躍らせることもなく、なんとなく感傷的になる。この季節には田舎のお役所仕事は案外忙しい。忙しいと言っても、都会のそれとは量も勝手も違うわけだが、私にとってその忙しさはありがたかった。  私はこの街が大嫌いだった。皆と同じように東京という都会に強い憧れを抱いていた。家族や友達の話す訛りの強い言葉が大嫌いで、一日中テレビに噛り付いて標準語を練習した。それなのになぜ、今こんなちっぽけな市役所で働いて...

La lune bleu | 2009.08.23 Sun 18:37

SS:Morte dell'estate

巡り続ける ---------------------------- JUGEMテーマ:ショート・ショート

星月夜〜gestirnte nacht〜 | 2009.08.23 Sun 04:20

小さな夜

JUGEMテーマ:ショート・ショート 目の前が明るいことにふと気付いて目を開けてみると、もう朝になっていた。多少なりとも寝ていたのだろうが、ずっと頭の中をとりとめのない言葉たちがぐるぐると動きまわっていたようで、一睡もできずに朝を迎えた気分だ。それにしても、なぜそういった朝の光は眩しいほどに輝いて見えるのだろうか…そんなことを茫然と考えていると、胸のあたりからふわっと何かが出て行った気がした。心なしか黒かったような…。ふと、もう「一睡もできなかった日の朝」の気分でない自分に気付く。そうか、あれ...

名もなき日々を | 2009.08.22 Sat 14:19

三日月と少女

JUGEMテーマ:ショート・ショート ああさみしや。誰も側にいてくれぬ。 星々の距離は語り合うにはあまりに遠く、忘れ去るには近すぎる。 白い三日月、静寂の海。 少女は帰り道、ただ一人一つの歌を歌う。 ゆりかごの上で聞いたあのうたを。 少女は怖かった。幼い体には世界の沈黙がのしかかり。 少女の声は遥か天上に昇り、あわれ月を癒す。 ああうれしや。ああうれしや。氷のような我が身にも、花が咲くような。 月の大きな大きな声は波を揺すり海が動く。 明日はきっと凪の海。小さな足もさらわれない。 子どもらの賑やかな声...

名もなき日々を | 2009.08.22 Sat 14:19

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