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2年生のときクラスに 『鼻たれ じゅんこ』 と呼ばれる子がいた。 時々クラスに来るお客さんのような存在で 誰とも話そうとしなかったので みんなは近寄ろうとはしなかった。 小学校では冬の間、プールで金魚を飼っていて 理科の時間にみんなで観察に行っていたのだが ある時 じゅんちゃんがプールに落ちてしまった。 先生がすぐ助け上げたので 大したことにはならなくて 給食の時間には体操服に着替えて じゅんちゃんは自分の席に座っていた。 その姿が...
あべゆかり の 回想法ノート | 2018.01.25 Thu 15:10
2月の節分の頃は一番寒くて その寒いときに小学校では耐寒訓練があった。 『ウサギ狩り』と、かいちゃんたちは呼んでいた。 学校からバスか電車だったか忘れたが 少し離れた、そう高くない山のふもとまで行く。 全学年でずんずん登っていくのだが 同じルートをたどるのではなく いろいろな方角から山頂を目指すのである。 包囲網を縮めていって獲物を追い詰めるような動きが 『ウサギ狩り』と言われる所以であろう。 当然ながらウサギを捕らえたことはない...
あべゆかり の 回想法ノート | 2018.01.20 Sat 20:28
冬休みが終わって学校に行くときには 寒さが ずんと厳しくなっている。 雪はたまにしか降らないが 舗装されていない道が多かったので 霜柱がいっぱい立っている。 まだ誰にも踏まれていない霜柱を踏むと しゃりんと潰れて靴の底がきゅっと鳴る。 学校へ行く道端には あちこちに 水の入ったバケツや漬物の樽のようなものがあって 表面がすっかり凍ってしまっている。 金魚鉢がわりの火鉢の表面もすっかり凍って 中の金魚は大丈夫だろうかと みんなで代...
あべゆかり の 回想法ノート | 2018.01.15 Mon 21:29
お年玉は銀行に貯金するものだと かいちゃんは思っていた。 欲しいものがあったとしても とりあえず一度 銀行に預けて 必要な時に必要な分だけ出金するものだと 母が かいちゃんに教え込んだのである。 欲しかったものはクリスマスに貰ったので たいして何が欲しいということもない。 友だちが持っているタミーちゃんは気になるが どうしても欲しいというほどではないし 梅田の阪急百貨店まで行かないと売っていない。 母に連れられてバスで駅前の住友銀...
あべゆかり の 回想法ノート | 2018.01.12 Fri 22:06
冬休みが終わって三学期の話題は 『お年玉をいくら貰ったか』だった。 お年玉は『玉』というわりに 硬貨ではなく紙幣で貰うのが通常で ぽち袋にぺらんと一枚、三つに畳んで入っている。 紙幣には百円と五百円と千円があって もしかしたら五千円と一万円もあったかもしれないが かいちゃんたちの世界では見たことはなかった。 かいちゃんの家のあたりは新興住宅地だったが 小学校の近くには古くからの農家が多くて そういうところは親類縁者が固まって住んでいる。 &...
あべゆかり の 回想法ノート | 2018.01.11 Thu 22:26
父も母もお酒を飲まない人だったのだが 料理用として家には日本酒が置いてあった。 元日にはそれを少しだけ『お屠蘇』に使う。 「本当のお屠蘇は味醂に薬草を入れたものだ」 と 毎年、母がそう言いながらお酒を徳利に移す。 土瓶に湯を沸かして蓋を取って徳利を浸ける。 「これを『お燗』という」と また母が言う。 お燗をするときは 杉の割り箸を 徳利の酒の中に差し込んでおく。 「杉の香りでお酒が美味しくなるのだ」と これも母の毎年の台詞である。 ...
あべゆかり の 回想法ノート | 2018.01.10 Wed 18:49
父が自動車好きだったので けっこう早くから家に車があった。 お正月には玄関のところと 車のナンバープレートの上に しめ飾りを付ける。 車の前は風が通るように金網状の部分があるので そこに括りつけるのである。 稲わらとウラジロと白いギザギザの紙と 小さな橙が付いているだけなのに けっこうな値段がするので 母は文句を言いながらも毎年それを買っていた。 近所だけがそうだったのかもしれないが しめ飾りはみんな飾っていたが 『門松』という...
あべゆかり の 回想法ノート | 2018.01.09 Tue 18:50
かいちゃんの家のお雑煮は 白みそ仕立てで 焼いていない丸いお餅を入れる。 雑煮用の細い大根と人参が入っていて 最後に青海苔を振りかける。 おせちは前日までにできているが お雑煮は元日の朝 作るので、母はやはり忙しい。 姉たちは台所やお膳の支度を手伝い、 父は 届いた年賀状を確認している。 かいちゃんの元日の初仕事は お雑煮に入れるお餅を数えることである。 おじいちゃんは3個で おばあちゃんは2個 おとうさんは3個で おかあ...
あべゆかり の 回想法ノート | 2018.01.08 Mon 20:43
大晦日の日 母は朝からおせち料理の仕上げをし 父は掃除の気になるところをやり直して かいちゃんや姉たちは言われるままに あっちを手伝ったりこっちを手伝ったりする。 昼過ぎになると 母はまだ何やかやしているが かいちゃんたちは暇になる。 午後3時になると、歩いて15分ほどのところの 宮山温泉という銭湯が開く。 『温泉』と付いているが水道水を沸かしているだけだと みんなが言っていたが定かではない。 夜は紅白歌合戦を見なければならないし 7人家族...
あべゆかり の 回想法ノート | 2018.01.07 Sun 17:41
暮れの大掃除で必ずやらされたのは 六畳間の掃き出し窓のガラス拭きである。 青っぽい円筒の缶に入った液体の洗剤があって 小さなフタに1杯分をバケツ一杯の水に入れる。 たしか ”マイペット” という名前だったと思う。 かいちゃんは雑巾をしっかり絞れないので 父か姉が絞ってくれたのを使う。 母はもっぱら台所でお正月の料理を作っている。 濡れた雑巾で拭いたガラスは 一瞬きれいになったように見えるが 乾いてくると拭いた跡が白く浮き上がる。 ...
あべゆかり の 回想法ノート | 2017.12.29 Fri 18:57
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