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お盆の頃だったと思うが、 集会所横の空き地で 映画会をする日があった。 いつも走り回って遊んでいる空き地に 白い大きな幕が張られる。 杭を特別に立てていたのか 電信柱を利用していたのかは定かでない。 幕の前の地面にはどこかから集められた ゴザが敷きつめられる。 かいちゃんたち子供は なんとなくそわそわして 映画の始まるのを待っているのだが 「暗くならんと映らへんねんで。一回、帰り」と 町内会のおじさんに追い払われる。 夕飯を済...
あべゆかり の 回想法ノート | 2017.08.21 Mon 18:47
鯖の切り身を蒸し器で蒸して レモン汁とマヨネーズをかけたものを 母は『ムニエル』と呼んでいた。 小ぶりの鯖を三枚におろしてふたつに切る。 身の真ん中に細かい骨があるのを 大きな毛抜きで丁寧に1本ずつ抜く。 塩コショウをしてレモンの輪切りを乗せ 湯気の上がった蒸し器で蒸す。 冷めてから マヨネーズをレモン汁でのばしたものをかけて 上品に盛り付ける。 母にしては珍しく洋風な料理であった。 『ムニエル』というのは魚に塩コショ...
あべゆかり の 回想法ノート | 2017.08.20 Sun 20:27
母は蒸し器をよく使っていた。 細いさつま芋をしょっちゅう蒸していたし じゃがいもも茹でずに蒸していた。 きのうの残りの冷やご飯も 蒸して温かくして昼ごはんに食べる。 蒸し器は黄色いアルマイトの円筒形で 深さがあって蓋も こんもり丸かった。 底から4センチほどのところに出っ張りがあって ぷつぷつ穴のあいた円盤のようなものを ここに嵌めこむようになっている。 円盤の下には水を入れておき 蓋の内側にはふきんを被せる。 ...
あべゆかり の 回想法ノート | 2017.08.18 Fri 18:38
すいかをどこまで食べるかは重要な問題だった。 すいかの実は赤くて皮は緑色であり、 その間に実とも皮とも言えない白い部分がある。 三角形のすいかは とんがったとことろが甘くて そこをかじると次に、種の密集している部分がある。 みんなはすいかを かぷかぷ食べて 種をぷっぷっと吐き出していたが、 かいちゃんはそれが嫌で お箸の先っちょで種をほじくりだしていた。 種を取り出すのは面倒だが、このあたりはまだ甘い。 なおも かじかじと食べて行くと ...
あべゆかり の 回想法ノート | 2017.08.17 Thu 20:46
夏の夕方には夕立が来る。 家から北の方角に箕面山が見えていて 山の上の空が墨を流したような色になると 夕立がやって来る。 かんかん照りのように見えても この雲を見つけたら 「洗濯物を入れてー」と叫ぶ。 お隣りとは庭続きだからもちろんのこと お向かいや2軒先まで届くように 「夕立ち来るでー」と叫ぶのである。 黒雲の足は速くて あっというまに あたりが薄暗くなって 大粒の雨がぺたっ ぺたっと音を立てて落ちてくる。 ざーっ...
あべゆかり の 回想法ノート | 2017.08.16 Wed 20:35
すいかは八百屋さんで売っていた。 店先に丸いまま ずらっと並んでいて 半分にしたものなどは置いてなかったから 家族が少ない家は人数に合わせて 小さなスイカを買っていたのかもしれない。 赤と白のビニールヒモを組んだネットを すっぽりと被せると二本の持ち手の部分ができる。 ちっこくて力の無い かいちゃんには 絶対に持つことができない。 母が抱えて帰るか、 二人の姉が持ち手を片側ずつ持って 提げて帰った。 冷蔵庫には入りきら...
あべゆかり の 回想法ノート | 2017.08.15 Tue 20:36
台所の床は木で出来ていて 一部分が羽目板のようになっていた。 入口に近いところの2枚の床板の合わせ目に 小さな”へこみ” があって そこに指をかけると 長方形の板が持ち上がって外れる。 下はむき出しの土間だが 梅干しとか糠みその壺を入れてあった気がする。 かいちゃんが町内のプールから帰って来ると 母がそのあたりにバスタオルを敷いてくれる。 台所は北側にあるし、床下からの風が 羽目板の隙間からすうすうと上がってくるので ...
あべゆかり の 回想法ノート | 2017.08.13 Sun 20:40
海で泳ぐときは あまり顔をつけないけれど プールだと顔をつけてばちゃばちゃするので 耳に水が入ってしまう。 頭を動かすと耳の奥でごろごろと音がする。 首を曲げて片足でケンケンをしたり プールサイドに腹ばいになって 温まったコンクリートに耳を押しつけると にゅるりと出てくることが多いのだが どうしてもだめなときもある。 ほおっておくと中耳炎になる と脅されていたので 家に帰って母に ”こより” を作ってもらう。 ちり紙を...
あべゆかり の 回想法ノート | 2017.08.11 Fri 18:26
そうめんは真ん中のところを紙で括ってある。 そうめんを湯掻くときは「ひとりに2把ずつ」 帯をほどくのが かいちゃんの仕事だった。 帯の端っこを見つけて引っ張ると くるんとそうめんが回転してほどける。 乱暴にやると折れてしまうので そおっとていねいにしなければならない。 引っ付かないように お湯の中にバラバラと入れ 長い菜箸でかき混ぜると、すぐにまたお湯が沸騰して そうめんが白く盛り上がってくる。 母はコップ一杯の水を手早く入れて ...
あべゆかり の 回想法ノート | 2017.08.10 Thu 16:31
洲本にいる叔父は寿司屋をやっていて かいちゃんが大阪に帰る前の日には カウンターでお寿司を食べさせてくれた。 カウンターの上に ”ばらん”という緑いろの葉っぱを敷いて はしっこのところに薄いピンク色の 甘酸っぱい生姜を乗せてくれる。 大きくて重い お湯呑みには 魚へん の漢字がいっぱい書いてあった。 魚の名前が分からないので適当に握って貰っていたが 透きとおったイカを噛んだとき ウッと喉に詰まりそうになった。 イカの身は口...
あべゆかり の 回想法ノート | 2017.08.07 Mon 17:43
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