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回想
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昔のことをふっと想いだす瞬間。
花の香り、風の香り、季節の流れの中で。
後悔もある。
懐かしい思い出。
だからこそ、今日を一生懸命に生きよう。
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その131 「種と実」

かいちゃんは種が好きであった。   おしろい花はどこにでもあって グリコのおまけのトランペットのような花を付ける。 色はほとんど赤だが、白いのもある。   花が終わったあと緑のガクの上に いつのまにか黒い丸い種が乗っかっている。 表面は梅干しの種のようにしわしわしていて、 石で叩きつぶすと白い粉が出てくる。   椿の木は幼稚園の生垣に1本だけ植わっていて 赤っぽい丸い実をつける。 実が割れるとつやつやした茶褐色の種が出てきて これは非常に貴重なもので...

あべゆかり の 回想法ノート | 2017.09.07 Thu 18:27

その130 「朝顔のタネ」

朝顔は順番に咲いてゆくので種も順にできる。 細々と名残りの花が咲いているときに 既にうす茶色のまん丸な種ができている。   完熟して乾燥したものは 触るとかさかさして 簡単にぽろりと取れて皮もがしゃがしゃと剥ける。   丸い皮の中は三つの部屋に分かれていて それぞれに黒い種がふたつずつ入っている。 種の形はリンゴを切ったときのような櫛型である。   完璧な種は6個全部がしっかり大きくて こういうのは『当たり!』である。 たいていは1個か2個、しなび...

あべゆかり の 回想法ノート | 2017.09.06 Wed 18:22

その129 「朝顔」

庭のどこに朝顔の蔓(つる)を這わせていたのか 記憶が定かでない。   朝起きると「今日はいくつ咲いた?」と を数えるのが 夏の日課であった。   開く前の朝顔は散髪屋さんの看板のようで 白と青紫がぐねぐね模様になっている。   ぴんと張ったような丸い花は 同じ蔓に付いていても 赤だったり青だったり紫だったりする。   花をむしってガラスのコップに入れ 割りばしでぐちゅぐちゅ つつくと きれいな色の水ができる。   つぼんだ花の先っちょ...

あべゆかり の 回想法ノート | 2017.09.05 Tue 20:11

その128 「夏休みの天気」

「夏休みの友」には天気を記録する欄があって 晴れの時はお日さまマーク、雨の時は傘マーク、 曇りの日には雲の絵を描くことになっていた。   夏休みの宿題をやり残して 八月の末に慌てるということはなかったが 天気の欄だけは ほとんど空白のままだった。   宿題をちゃんとやるくらいなら 天気を記録するくらい簡単ではないのか? と思うかもしれないが、問題はそう単純ではない。   朝は曇っていたとしても昼にはかんかん照りになり いきなり夕立が来て そのあとに虹が立...

あべゆかり の 回想法ノート | 2017.09.02 Sat 20:07

番外編「これが ”かいちゃん” だ!」

JUGEMテーマ:回想

あべゆかり の 回想法ノート | 2017.09.01 Fri 14:43

その127 「夏休みの友」

「夏休みの友」のことを かいちゃんは 「夏休みの敵」と呼んでいた。   勉強は嫌いではなかったが 宿題はとにかく めんどくさかった。   なかでも嫌なのは漢字の練習である。 「夏休みの友」とは別に『漢字練習帳』があって 1学期にならった漢字を10個ずつ書く。   そんなに書かなくても覚えられるではないか! かいちゃんは効率の悪いことが嫌いであった。   『花』という漢字を10個書くには 『一』をまず10個書く。 次にそれに『ちょんちょん』を付ける...

あべゆかり の 回想法ノート | 2017.08.30 Wed 18:54

その126 「地蔵盆の手品師」

ある夏の地蔵盆に手品師がやって来た。   集会所には舞台は無かったと思うが 子供たちは床にぺったりと座っているので おとなが前に立つととても大きく見える。   手品師は怪人二十面相のようなマントを着て ぴかぴかのシルクハットをかぶっていたので 『手品師じゃなくて奇術師かもしれない』と かいちゃんは過度な期待を抱いた。   ステッキを花に変えたり、切れた紐をつなげたり 意外とちゃっちいなと思っていたら突然、 手のひらから銀色の蜘蛛の糸のようなものを ...

あべゆかり の 回想法ノート | 2017.08.28 Mon 15:40

その125 「地蔵盆」

8月の終わりには『地蔵盆』があった。   町内の片隅にお地蔵さんが いつもはひっそりと鎮座しているのだが この日だけはお供え物が山のように置かれる。   回覧板で『地蔵盆のお知らせ』が回っているので 朝からお地蔵さんのところに行って お供え物がずんずん増えていくのを確認する。 総量が多くなれば分け前も多くなるから ここが重要なところである。   お地蔵さんは年中、色あせた前掛けを掛けているが 新しい赤いのを新調してもらっている。   夜に...

あべゆかり の 回想法ノート | 2017.08.26 Sat 19:53

その124 「ようせいゴラス」

「今年の町内の映画会は『ようせいゴラス』だ」と 姉が回覧板を見て教えてくれた。   幼稚園でキンダーブックを読破するほど本好きだった かいちゃんは喜んだ。   ”ようせい”というのはおとぎ話に出て来るやつのことだ。 有名なのはティンカーベルだが コロボックルというのがいるのも知っていた。 その年の映画会は ことのほか楽しみであった。   映画がはじまると宇宙とか地球が映ったので 「まんが映画じゃなくて特撮なのだな」と思った。   大...

あべゆかり の 回想法ノート | 2017.08.25 Fri 18:17

その123 「映画会の白幕」

町内映画会のスクリーンは白い布のようなもので スクリーンというより「白幕」であった。   空き地に立てた杭か電信柱に括りつけてあるので ピンと張ったつもりでも風でゆらゆら揺れる。   上映していたのは洋画だったと思うが 風が吹くたびに アップになった役者の顔が ぐにゃぐにゃ歪むのが面白かった。   映画が始まると人がいっぱいで暑いし ゴザに座っているとお尻が痛くなったので かいちゃんは白幕の裏側に行った。   少し鮮明度は落ちるが裏側にも映画は写...

あべゆかり の 回想法ノート | 2017.08.22 Tue 19:28

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