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熱のあるときは水枕をあてる。 茶色いゴムで出来た袋のようなやつで 中に水と氷を入れて、口のところを 銀色の金具で止めるようになっている。 熱が高くてぼーっとしているときは 別になんとも感じないのだが 少し意識がはっきりしてくると ゴムくさいのがひどく気になる。 タオルをぐるぐる巻いてあるのだが 寝返りをするとちゃぷちゃぷ音がするし 湿気たタオルは後頭部に張り付くようで およそ快適とは言い難い。 まんがなどに出てくる おでこを...
あべゆかり の 回想法ノート | 2018.02.19 Mon 17:53
お中元で貰う水ようかんのセットに 缶入りのプリンがあって 黄色い部分をスプーンですくっていくと 最後に茶色いキャラメルソースが残る。 お医者さんにもらった水薬は ちょうどこのキャラメルソースに似ていて 甘いようだが かすかな苦みがある。 美味しいというわけではないが 家にある粉薬はどれも苦いので それよりはずいぶんましである。 水薬の瓶は最初はガラスだったが まもなくプラスチックに代わって 中身の茶色の液体はオレンジ色に代わった。 &nbs...
あべゆかり の 回想法ノート | 2018.02.18 Sun 19:09
風邪の薬だったかどうかは忘れたが ガラス瓶に入った茶色い液体を 飲まされた覚えがある。 ガラス瓶の口はコルクだったように思う。 それを すぽんと抜いて飲むのだが 瓶には長い線と短い線で目盛りが刻んであって ひと目盛り分だけ飲むように言われる。 どれくらい飲めばいいのか分からないので 別の容器に移してくれればいいのだが 瓶の口のガラスが分厚いので 移そうとするとじょびじょび こぼれてしまう。 ちょびっとずつ飲んで目盛りの線に近づけるが たい...
あべゆかり の 回想法ノート | 2018.02.17 Sat 20:17
風邪をひいて熱を出すと 『りんごのすりおろし』が食べられる。 元気なときは おろしてなどくれないし 一度自分でやってみたことがあるが 病気のときに感じるほど美味しいとは思わなかった。 りんごはすぐに茶色く変色してしまうので 食べる直前におろさなければならない。 熱でうつらうつらしている かいちゃんが ふと目が覚めたときに食べさせるために 母は ずっと様子を見ていたのだろう。 すりおろしたりんごは甘くて冷たくて 喉が痛くても するんと...
あべゆかり の 回想法ノート | 2018.02.15 Thu 20:48
小学校の前のバス停には石碑が建っていた。 たたみ一畳分くらいの大きさで なんだかよく分からないが 漢字がいっぱい書いてある。 石碑の周りには大小の石が配置してあって バスを待つ間に 石から石へ ぴょんぴょん跳んで遊ぶ。 柵があるわけでもなく、バス停の真後ろなので バス待ちのための遊具のように思っていた。 かいちゃんは一度、漢字の解析を試みたが ひとつとして知った字がなかったので あっさりと諦めた。 ランドセルを背負った...
あべゆかり の 回想法ノート | 2018.02.09 Fri 18:21
小さい頃、バスには車掌さんが乗っていた。 車掌さんは女の人で紺色の制服と制帽を被って お腹のところに大きな黒いがま口を下げている。 扉はバスの中腹に付いていて、バスが停まると 車掌さんが中から扉を開けてくれる。 二段になった階段を上ってバスに乗るのだが 1段の高さがとても高いので ちっこい かいちゃんは階段を上ることが面白い。 母がごそごそと財布からお金を出して 「どこどこまで」と車掌さんに告げると 「〇〇円です」と言いながら...
あべゆかり の 回想法ノート | 2018.02.08 Thu 17:53
小学校の木の床を油拭きするときは しゅろ箒で いつもより丁寧に床を掃く。 バケツに入った茶色っぽい液はどろっとしていて 消毒薬のような油臭いような変な臭いがする。 白い布紐がびろびろと束になったようなモップを バケツにそろそろと浸けると モップは黄色いような茶色のような色に染まる。 ぼとぼとと滴を垂らしながらバケツから引き揚げ 床に液体を塗っていくのだが 自分では やった覚えがないのに やけにそのシーンをはっきりと憶えている。 「...
あべゆかり の 回想法ノート | 2018.02.04 Sun 16:20
小学校の古い木造の校舎の床は 木目や節穴の浮いた細長い板で出来ていて 時折り『あぶらぶき』というのをしていた。 先生たちは『油引き』と言っていたように思うが 大きなモップで床を端っこから拭いていくので かいちゃんたちは『油拭き』と言っていた。 自分たちでやったかどうか定かではないのだが とにかくその日は机を全部教室の外に出す。 廊下は狭いから、まずは片側に机をずらっと並べる。 椅子もきちんと入れておく。 その上にもう一段、机を逆さまにして ...
あべゆかり の 回想法ノート | 2018.02.02 Fri 16:10
3年生のときに小学校は新築になったが それまでは木造二階建ての古い建物だった。 部屋の真ん中に大きな樽型のストーブがあり 用務員のおじさんが石炭を入れにきていた。 ストーブには太い煙突が付いていて 排気は教室の外に出るようになっている。 それでも炭が燃えるあたたかい匂いは 教室中にひたひたと充ちていた。 ストーブでお弁当を温めたという話をよく聞くが かいちゃんの小学校は給食だったので そういう覚えは全く無い。 ストーブのそばの席...
あべゆかり の 回想法ノート | 2018.01.29 Mon 18:40
年末に母に連れられて銀行に行く楽しみは 新しい手帳を貰うことであった。 縦横の比が2:1くらいの細長い手帳で色は黒か紺。 銀行のマークの付いた紙袋に 恭しく入っていた。 背表紙のところには細い鉛筆が刺さっているが 細くて短いのでとても書きにくい。 鉛筆の頭は大学の帽子のようになっていて 手帳に挿さむ しおり紐が付いている。 前のほうはスケジュール帳になっていて 途中から罫線だけが入ったページが続く。 後ろのほうはアドレス帳で、そのあとには ...
あべゆかり の 回想法ノート | 2018.01.27 Sat 20:00
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