[pear_error: message="Success" code=0 mode=return level=notice prefix="" info=""]

数日後、圭の家に一本の電話が鳴った。 急いで出ると、そこには懐かしい声が聞こえてきたので、圭は思わず友の名を呼ぶ。「わあ、麻奈! お久し振りね」 高校時代の仲良くしていた友人であり、ロンドンにも遊びに来た事もある。「どう? 元気にしてた?」『ぼちぼちよ。ねえ、これからちょっと会えない?』 麻奈からの突然の誘いに圭は少しためらう。子供が二人寝ている上に夫は仕事、和則は幼稚園だからである。
:+: notebook :+: | 2010.07.29 Thu 09:07
「とりあえず、降りてこい」 男は布団を踏み潰しながら天井に隠れている部屋の住人に声をかけた。 部下の二人が天井を叩いて刺激したのでやめろ、と制した。「そんなことをしたら頼めるモノも頼めなくなるだろう?」 ちったぁ頭を使え、と男はタバコを思い切り吸った後、胸ポケットに収まっていた携帯灰皿を取り出して丁寧に火を消して入れた。「俺は乱暴な事は嫌いなんだよ」 その割にはドアを乱暴に開けたのだが、それを男はまるきり自覚していないように思われる。
:+: notebook :+: | 2010.07.27 Tue 08:41
本を買う時は、だいたい裏表紙の説明を読んで買います。特に初めて読む著者のものは。こちらの本は裏表紙にミステリーと書いていました。でも私的には恋愛小説だと思います。最初から合コンで始まり、男女の出会いとしては平凡にストーリーは進んでいきます。でも時代背景は80年代中頃。私より少し上の世代で、バブルを実体験した世代です。話は大きくは2つ別れていて、最初は静岡が舞台となり出会いから結ばれるまでの幸せな話しになっています。後半はウブだった男性が仕事の関係で静岡から東京で出て行き、どんどん世界を広げオ...
kuuの読書感想 | 2010.07.27 Tue 02:38
「そろそろ戻るわ」 そう言いながら立ち上がって克の方を振り向いた。克は肩をすくめながら、こう言う。「そうですね、兄さんに怒られたら嫌でしょうから」「そうね、ありがとう」 安堵しながらも家に向かって夫のいる部屋へと急ぐ。克はボンヤリとベンチに座ったまま空を仰いだ。
:+: notebook :+: | 2010.07.26 Mon 10:01
「そうね――昔克と付き合っていた頃を話したわ。初めてのデートがマリアさんのコンサートだったのよ」 圭はありのまま正直に夫に話す事に決めたようで、本当に正直に伝えた。「そうか」 つれない態度に圭は少し腹が立ったのだが、言い返せずそのまま口をつぐんでいる。確かに彼女に非があるようで滝川を責める理由がどこにもなかったからだ。「ごめんなさい、反省してるのよ。出過ぎたと思って」「いやいいよ」 即答で返されて圭はますます後ろめたく感じられる。
:+: notebook :+: | 2010.07.25 Sun 10:26
マリア・フランネリーの葬式が午後十二時に行われた。 キリスト教式の葬式であり、滝川夫妻は少し戸惑いつつも密かに参列する。マスコミの目から隠れるためである。 真っ青になったマリアの遺体は物悲しい人生を語っているようで、圭は思わずむせび泣く。彼女は幸せだったのか? あったかもしれないが、ほんの一時の事だったのではないかと思うと涙が自然とこぼれてくる。
:+: notebook :+: | 2010.07.24 Sat 00:18
滝川夫妻はヒースロー空港に到着するや否やタクシーに乗り込んで急いで克の自宅に向かった。 運転手にもっと速く! とせかしたので、運転手は少し切れながらも飛ばしていく。 圭の瞼は真っ赤に腫れて、無残なものであったがそれはそれでかわいそうだと同情心が芽生えてしまう不思議な存在であった。 克の自宅はロンドン郊外の田舎の方にあり、ひっそりと物悲しいたたずまいであった。
:+: notebook :+: | 2010.07.24 Sat 00:17
JUGEMテーマ:恋愛小説 今、すごくハマってる小説!僕の好きな人が、よく眠れますように中村航さんです(^^)*もう、すっごくすっごくよかった!なんか、全体的にユーモアのある文章なんだけど、きゅん、として、悲しくなって、いたたまれなくなって。中村航さんの書く小説は、その世界では、2人が運命共同体で、いつでも、なんか微笑ましいくらい好き合ってて。羨ましいな、とか思う。表現とか、現実の世界を忘れちゃうくらいその中に浸っちゃうんだよね。本文より引用。「好き」「大好き」「おれのほうが好き」「私のほうが...
愛 し | 2010.07.23 Fri 18:52
「しかし――私たちはそういうのを一切考えてないんですが」 滝川が眉を寄せながら理事長に訴えた。圭もまたそのようにして彼女を見詰める。「ですが、チャンスなのですよ? 息子さんを偉大な人物に育て上げられる事が出来ますし、ホラ、わたしの学校だって名が上がるでしょう?」 理事長の言葉に若い夫婦は固まった。
:+: notebook :+: | 2010.07.22 Thu 12:20
和則の幼稚園で文化祭があり、和則の独唱部分が少しあると本人が言っていたので滝川夫妻はかなり胸を弾ませながら観客席に座って背筋を伸ばして息子を探していた。 すると、舞台で子供達の中からひょっこりと前に出て来た和則が息を大きく吸い込んで歌った。
:+: notebook :+: | 2010.07.21 Wed 09:54
全653件中 161 - 170 件表示 (17/66 ページ)