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第七部 4.

  マリア・フランネリーの葬式が午後十二時に行われた。 キリスト教式の葬式であり、滝川夫妻は少し戸惑いつつも密かに参列する。マスコミの目から隠れるためである。 真っ青になったマリアの遺体は物悲しい人生を語っているようで、圭は思わずむせび泣く。彼女は幸せだったのか? あったかもしれないが、ほんの一時の事だったのではないかと思うと涙が自然とこぼれてくる。

:+: notebook :+: | 2010.07.24 Sat 00:18

第七部 3.

  滝川夫妻はヒースロー空港に到着するや否やタクシーに乗り込んで急いで克の自宅に向かった。 運転手にもっと速く! とせかしたので、運転手は少し切れながらも飛ばしていく。 圭の瞼は真っ赤に腫れて、無残なものであったがそれはそれでかわいそうだと同情心が芽生えてしまう不思議な存在であった。 克の自宅はロンドン郊外の田舎の方にあり、ひっそりと物悲しいたたずまいであった。

:+: notebook :+: | 2010.07.24 Sat 00:17

I want you to fall asleep

JUGEMテーマ:恋愛小説 今、すごくハマってる小説!僕の好きな人が、よく眠れますように中村航さんです(^^)*もう、すっごくすっごくよかった!なんか、全体的にユーモアのある文章なんだけど、きゅん、として、悲しくなって、いたたまれなくなって。中村航さんの書く小説は、その世界では、2人が運命共同体で、いつでも、なんか微笑ましいくらい好き合ってて。羨ましいな、とか思う。表現とか、現実の世界を忘れちゃうくらいその中に浸っちゃうんだよね。本文より引用。「好き」「大好き」「おれのほうが好き」「私のほうが...

愛 し | 2010.07.23 Fri 18:52

第七部 2.

 「しかし――私たちはそういうのを一切考えてないんですが」 滝川が眉を寄せながら理事長に訴えた。圭もまたそのようにして彼女を見詰める。「ですが、チャンスなのですよ? 息子さんを偉大な人物に育て上げられる事が出来ますし、ホラ、わたしの学校だって名が上がるでしょう?」 理事長の言葉に若い夫婦は固まった。

:+: notebook :+: | 2010.07.22 Thu 12:20

第七部 1.

  和則の幼稚園で文化祭があり、和則の独唱部分が少しあると本人が言っていたので滝川夫妻はかなり胸を弾ませながら観客席に座って背筋を伸ばして息子を探していた。 すると、舞台で子供達の中からひょっこりと前に出て来た和則が息を大きく吸い込んで歌った。

:+: notebook :+: | 2010.07.21 Wed 09:54

第六部 15.

 「さあおねんねしましょうねえ」 かなりご機嫌な声でいそいそとベビーベッドに一人ずつあやしながら寝かせている様子が窺える。双子の世話は大変そうだが、圭は苦にならなかった。 彼女はこのしんどい時さえ幸せだと思えるのだった。周りが見れば、しんどそうでよく頑張るなあと感嘆の言葉が出てしまう。せっせと寝かせてはその隙に掃除をしたり、ご飯の仕度をしたりするの好きらしい。 よくテレビで主婦が「アタシの存在は一体何なのさ」と文句たれているのだが、それが圭にとって理解に苦しむくらいだったので幸いそういっ...

:+: notebook :+: | 2010.07.20 Tue 11:22

第六部 14.

  運転手が着きましたよ、と言うまでは二人は抱き合ってぐっすりと眠りこけていたのだった。「ああ……ご苦労。友子さん、着きましたよ」「んん……」 眠たそうに目をこすったので、アイシャドウが濁ってしまった。友子は克の腕を掴んで降りようとしたので克は友子の手を握って待って、と引き止めた。「僕は今夜は気が進みません」「どうして?」「気が進まないから、と言ったでしょう」 頭の中には圭の事で一杯だからなんぞ言えるはずがない、と考えながらも言い訳を探した。

:+: notebook :+: | 2010.07.20 Tue 11:21

第六部 13.

 「さ、どうぞ」 克がエスコートしながらレストランに入っていった。克のお気に入りのレストランは静かな住宅街にある小さなフランス料理店であったが、ここは芸能人や裕福な人の御用達の店であり、その振る舞いは素晴らしいものであった。 ワインも数多く揃えており、克もいくつか買ってその店に保存してもらっているのだった。彼が来た時にそのワインを振舞うのが、この店ではならのサービスである。 友子は戸惑いながらもレストランの装飾に目を奪われる。室内の装飾は、厳格であり、中央のシャンデリアは見事なものであり...

:+: notebook :+: | 2010.07.18 Sun 10:38

第六部 12.

 「その、今度ご一緒にお食事でも行きたいのですが――よろしいでしょうか?」 そう言うとますます頬を赤らめて俯いた。克は少し鼻で笑い、いいですよと返事をしてタバコを咥えて吸う。「ほっ本当ですかっ! ありがとうございます!」 パッと見上げた女性は瞳を輝かせながら克の顔を窺ってまるで美しい宝石を見ているかのような惚れ惚れとした表情で見詰めていた。克は吸殻にタバコを押し付けて火を消すと、女性の方を顔を向けて爽やかな笑顔を浮かべた。

:+: notebook :+: | 2010.07.17 Sat 13:53

美少年の 哀

JUGEMテーマ:恋愛小説  遠い昔 かの南の国 ファラオの支配し国ありき かの国では 他国同様 身分の高い者は 妻をめとる以外にも 高尚な趣味として 美少年を愛する習わしあり 昔 昔 南の大国 近隣の小国を威圧し 我がもの顔に 振る舞いし 某小国 貢物とて 美しき少年を 大国の王に献上せり 王 一目で気に入り 近習となす 少年は わずか十歳 王は たいそう大事にし 床に呼んでも 無理強いすることなく 少年が自然に受け入れるまで 大切に 時を過ごせり いつしか 少年も 王を慕い ついに 王より...

シリウスの泉   | 2010.07.16 Fri 21:41

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