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「そろそろ戻るわ」 そう言いながら立ち上がって克の方を振り向いた。克は肩をすくめながら、こう言う。「そうですね、兄さんに怒られたら嫌でしょうから」「そうね、ありがとう」 安堵しながらも家に向かって夫のいる部屋へと急ぐ。克はボンヤリとベンチに座ったまま空を仰いだ。
:+: notebook :+: | 2010.07.26 Mon 10:01
「そうね――昔克と付き合っていた頃を話したわ。初めてのデートがマリアさんのコンサートだったのよ」 圭はありのまま正直に夫に話す事に決めたようで、本当に正直に伝えた。「そうか」 つれない態度に圭は少し腹が立ったのだが、言い返せずそのまま口をつぐんでいる。確かに彼女に非があるようで滝川を責める理由がどこにもなかったからだ。「ごめんなさい、反省してるのよ。出過ぎたと思って」「いやいいよ」 即答で返されて圭はますます後ろめたく感じられる。
:+: notebook :+: | 2010.07.25 Sun 10:26
マリア・フランネリーの葬式が午後十二時に行われた。 キリスト教式の葬式であり、滝川夫妻は少し戸惑いつつも密かに参列する。マスコミの目から隠れるためである。 真っ青になったマリアの遺体は物悲しい人生を語っているようで、圭は思わずむせび泣く。彼女は幸せだったのか? あったかもしれないが、ほんの一時の事だったのではないかと思うと涙が自然とこぼれてくる。
:+: notebook :+: | 2010.07.24 Sat 00:18
滝川夫妻はヒースロー空港に到着するや否やタクシーに乗り込んで急いで克の自宅に向かった。 運転手にもっと速く! とせかしたので、運転手は少し切れながらも飛ばしていく。 圭の瞼は真っ赤に腫れて、無残なものであったがそれはそれでかわいそうだと同情心が芽生えてしまう不思議な存在であった。 克の自宅はロンドン郊外の田舎の方にあり、ひっそりと物悲しいたたずまいであった。
:+: notebook :+: | 2010.07.24 Sat 00:17
JUGEMテーマ:恋愛小説 今、すごくハマってる小説!僕の好きな人が、よく眠れますように中村航さんです(^^)*もう、すっごくすっごくよかった!なんか、全体的にユーモアのある文章なんだけど、きゅん、として、悲しくなって、いたたまれなくなって。中村航さんの書く小説は、その世界では、2人が運命共同体で、いつでも、なんか微笑ましいくらい好き合ってて。羨ましいな、とか思う。表現とか、現実の世界を忘れちゃうくらいその中に浸っちゃうんだよね。本文より引用。「好き」「大好き」「おれのほうが好き」「私のほうが...
愛 し | 2010.07.23 Fri 18:52
「しかし――私たちはそういうのを一切考えてないんですが」 滝川が眉を寄せながら理事長に訴えた。圭もまたそのようにして彼女を見詰める。「ですが、チャンスなのですよ? 息子さんを偉大な人物に育て上げられる事が出来ますし、ホラ、わたしの学校だって名が上がるでしょう?」 理事長の言葉に若い夫婦は固まった。
:+: notebook :+: | 2010.07.22 Thu 12:20
和則の幼稚園で文化祭があり、和則の独唱部分が少しあると本人が言っていたので滝川夫妻はかなり胸を弾ませながら観客席に座って背筋を伸ばして息子を探していた。 すると、舞台で子供達の中からひょっこりと前に出て来た和則が息を大きく吸い込んで歌った。
:+: notebook :+: | 2010.07.21 Wed 09:54
「さあおねんねしましょうねえ」 かなりご機嫌な声でいそいそとベビーベッドに一人ずつあやしながら寝かせている様子が窺える。双子の世話は大変そうだが、圭は苦にならなかった。 彼女はこのしんどい時さえ幸せだと思えるのだった。周りが見れば、しんどそうでよく頑張るなあと感嘆の言葉が出てしまう。せっせと寝かせてはその隙に掃除をしたり、ご飯の仕度をしたりするの好きらしい。 よくテレビで主婦が「アタシの存在は一体何なのさ」と文句たれているのだが、それが圭にとって理解に苦しむくらいだったので幸いそういっ...
:+: notebook :+: | 2010.07.20 Tue 11:22
運転手が着きましたよ、と言うまでは二人は抱き合ってぐっすりと眠りこけていたのだった。「ああ……ご苦労。友子さん、着きましたよ」「んん……」 眠たそうに目をこすったので、アイシャドウが濁ってしまった。友子は克の腕を掴んで降りようとしたので克は友子の手を握って待って、と引き止めた。「僕は今夜は気が進みません」「どうして?」「気が進まないから、と言ったでしょう」 頭の中には圭の事で一杯だからなんぞ言えるはずがない、と考えながらも言い訳を探した。
:+: notebook :+: | 2010.07.20 Tue 11:21
「さ、どうぞ」 克がエスコートしながらレストランに入っていった。克のお気に入りのレストランは静かな住宅街にある小さなフランス料理店であったが、ここは芸能人や裕福な人の御用達の店であり、その振る舞いは素晴らしいものであった。 ワインも数多く揃えており、克もいくつか買ってその店に保存してもらっているのだった。彼が来た時にそのワインを振舞うのが、この店ではならのサービスである。 友子は戸惑いながらもレストランの装飾に目を奪われる。室内の装飾は、厳格であり、中央のシャンデリアは見事なものであり...
:+: notebook :+: | 2010.07.18 Sun 10:38
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