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第六部 3.

  四月に入ると滝川も忙しくなり、圭のお腹も大きく膨らんでいた。和則は冷静沈着な性格なのかずっと素面のままであった。「和則、大丈夫なの?」 手に引かれて入園式が始まるまでの待ち時間で心配そうに覗き込む母親に、和則はにっこりと笑った。「大丈夫だよ、僕は上手くやるから」「そう……あまり算数が出来る事を自慢に話したら駄目よ?」「分かってるって」 出来のいい息子に少し心配になってきたのだが、当の本人に緊張感も感じ取ることが出来なかった。

:+: notebook :+: | 2010.07.08 Thu 09:42

第六部 2.

 「和則、本当にいいのか? ここで」 滝川が不安げに息子の顔を見ながら確認するので、和則は顔をしかめていいよ、とぶっきらぼうに返事をした。「本当に?」 圭も心配そうに息子を見下ろす。「別に、どこでも一緒だと思うよ。それより、本屋へ行こう」 和則はにっこりと笑って父親の手を握って引っ張っていく。可愛らしいが、不安は解消されなかった。

:+: notebook :+: | 2010.07.08 Thu 09:40

第六部 1.

 「んーっんーっ」 静かな部屋にその可愛い声が響き渡ったので、圭は何事かと思って台所から出て声のした部屋に向かう。「何してるの? 和則」「そこにあるプラモデルが欲しいの」 和則が手を伸ばしてタンスの上にある船のプラモデルを取ろうと背伸びしながら頑張っていたので、圭はクスッと笑いながらそれを取ってやる。

:+: notebook :+: | 2010.07.06 Tue 10:17

第五部 15.

 「兄さん、話があるんですがちょっといいですか?」 長く感じられた沈黙を破った克が、滝川にこう声を掛けた。滝川はピクリ、と反応を示して何だ? と応答する。「ここじゃ、何ですから」 と言った後に玄関に向かう。滝川はそのまま後に続いて向かった。圭は不思議そうに二人を見送り、何事もなかったようにして和則をあやし始める。 玄関の外に出た二人は、そのまま階段を下りて外に出た。

:+: notebook :+: | 2010.07.05 Mon 12:38

第五部 14.

  いつも人が忙しそうに重たい荷物を持って広い空間を彷徨っているように見えた。 ここは、成田空港であり、家族三人で祖母を迎えに来たのである。息子の和則にとっては祖母とは初対面である。しかし、和則は嬉しそうにキャッキャッとはしゃいで電子掲示板や他のコンピューターなどに関心を持って大喜びしていた。「この子、コンピューター関係にとても関心持つわね?」

:+: notebook :+: | 2010.07.04 Sun 10:58

第五部 13.

 「さ、母さん入ってください」「克、ここは?」「母さんの家ですよ。僕が稼いで建てたんです。ここなら、父さんにもばれないし、来る事はないと思います。それに、僕のお兄さんの事も心配でしょう?」 克が少し鼻息を荒くしながら、一気に一通りの事をまくしたてた後、静かな空間が漂った。 かなり広いホールの中に、二人だけがポツンと立っている。はたから見れば淋しそうな雰囲気を帯びていたが二人の間には絆が深まろうとしているところであった。

:+: notebook :+: | 2010.07.03 Sat 11:30

美丘。

JUGEMテーマ:恋愛小説 今月始まる、吉高由里子さん主演のドラマ「美丘」の原作本。買ってしまった…!!そして途中までマックで読んでしまった…!!で、途中で泣きそうになったから家に帰ってきた←本当はマックで勉強するはずだったんだけどなぁ…(遠い目みんな結構勉強してたよorz吉高さん好きだし、何より相手役の林くんが気になってしょうがない私←楽しみだなー^^はぅ…でも7月はテストなのですよ;;

車輪が回り出したら、 | 2010.07.02 Fri 23:44

第五部 12.

 「あなた、和則がリモコンでテレビをつけることに成功したのよ! その時の和則の喜びようったら!」 滝川が仕事から帰ってくるやいなや、圭が嬉しそうに今日の出来事をわーっとまくし立てたので、ちょっと待てよ、と苦笑いしながら上着を脱いだ。「で? リモコンをいじって、テレビをつけたのか? 自分で?」「ええ、そうよ。しかも自分の見たい番組をつけたのよ」「へえー、賢いんだな」 息子の利発な瞳は滝川の父親、滝川和則に瓜二つで二人はきっとしっかりした大人になってくれるに違いないと期待を寄せているのだった...

:+: notebook :+: | 2010.07.02 Fri 09:26

第五部 11.

 『それがですね、分からないんです……突然電話が掛かってきて、怯えたような声でマリアさんが――』 電話の向こうでは騒がしい声と電話の音がけたたましく響いてきた。 圭の元マネージャー、矢田はマリアの所属する事務所に就いたのだが、そのマリアさえもやめるということなので滝川は気の毒に思え始めてくる。「怯えたような?」『ええ』「それは、どういうことだ? その時の様子は?」『わたしが受けたわけじゃないので、なんともいえませんが……とにかくやめる、と言ってましたから……ちょっと、忙しいので切らせてもらっても?』

:+: notebook :+: | 2010.07.01 Thu 09:27

第五部 10.

 「母さん、ちょっといい?」「なあに、克?」 広々とした部屋には、クィーンサイズのベッドに大きな窓があり、その窓から太陽の光がさんさんとベッドを照らしている。 マリアの寝室にノックして入ってきた克は、相変わらずすらっとした長身でその伸びた手は白く、美青年という名詞によく当てはまるものであった。

:+: notebook :+: | 2010.06.30 Wed 09:15

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