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JUGEMテーマ:ファンタジー恋愛もの 「またしても王妃の指輪ははずれなかったか・・・」 総長の一人が薄暗い部屋の中で言う。 「あともう一歩だったのがだが・・・」 「あのフィリナクを利用したのが悪かったか・・・」 「こうなれば皇太子を狙うか?」 大胆な発言が飛び出す。 「王妃がだめなら皇太子か・・・。それもよかろう」 「カタールの栄光のために」 「栄光のために」 ぞろぞろと五人の総長は部屋を出て行った。だが、一人だけ残ったものがいた。そしてその総長は一人の名を呼んだ。ヨタカと。 す...
星空のスピカ | 2016.06.17 Fri 00:03
サイスは薄暗い林の中を歩く。亜紀は黙ってそのまま進んだ。時折飛び出た枝が亜紀の腕や体を引っかく。血がにじむ。それと同じくして亜紀の心の中にも血が流れていた。愛するフィナンスと離れてフィリナクと結婚させられると思うと胸が張り裂けそうだった。だが、ここでめそめそしていられない。自分たちの道を自分で切り開かねばならない。 亜紀は毅然として胸を張って歩いた。 うっそうとした林を抜けると視界が開けた。そこには一軒の見慣れないみずぼらしい民家があった。 「こちらです」 サイスは低い声で小...
星空のスピカ | 2016.06.16 Thu 23:19
JUGEMテーマ:ファンタジー恋愛もの 日本とサンダール国融合のいささか手前の時刻、ある薄暗い一室で術が行われようとしていた。 長身で黄金の髪の毛が色白な顔を縁取り、見目麗しい青年だ。だが、瞳には何か違う、まるで地の底に暗いものを宿すような色があった。 青年は古びた本を片手に詠唱を始めた。青年の声が反響してまるで多重音楽のような状態を作り出し麗しく、そして不気味だった。部屋の外では側近サイスが控えていた。 そう。この青年こそ、フィリ国第一王子フィリナクであった。事前に謀反の事実を知...
星空のスピカ | 2016.06.12 Sun 15:54
JUGEMテーマ:ファンタジー恋愛もの 重ねられた手のひらを隔てていた壁が徐々に薄くなっていく。まるで透明な板のようなそれは急に消えてお互いの手のひらのぬくもりを与えた。 暖かさが通じる。思わず二人は抱き合っていた。 「フィー!」 「亜紀!」 亜紀は涙をこらえきれずほほに涙が伝う。 「泣かないで・・・亜紀」 フィナンスは優しい声で言うとそっと涙をぬぐう。 「俺はこの異世界との接触を解決しなくてはならない。会える時間は少なくなるけれど、俺は必ずここに来るから。毎朝亜紀の顔を見に来る。...
星空のスピカ | 2016.06.09 Thu 00:46
JUGEMテーマ:ファンタジー恋愛もの 戦争は終わった。サンダール国直属の侯爵家が統治に当たり、これでフィス国とサンダール国の二国になった。現在のところ両国の間で争いはない。今後もないとは言い切れないが順調に友好関係を保っていた。そしておなじく恋人たちも。 亜紀はようやく外へ出ることを許された。フィナンスはエンカに亜紀を乗せると真っ先に湖のほとりに来た。 「ここで君はこんな風に眠っていたんだ」 フィナンスは両手足を広げて説明する。 やだ、と亜紀は赤面する。花も恥らう乙女があられも...
星空のスピカ | 2016.06.06 Mon 10:46
JUGEMテーマ:ファンタジー恋愛もの かいがいしく蜂のように動き回る亜紀には疲れている暇はなかった。ずっと部屋の中で暮らしてきたため体力は衰えていたが気力でかばっていた。そんな亜紀をアリアンヌは別室に連れて行った。 「そこへお座りなさい」 はい、と素直に亜紀は答えていすに座る。 「あなたは救世主伝説をどう思うかしら?」 ずばり、と聞かれて亜紀は戸惑った。だが、しっかりと口を開く。 「伝説は伝説に過ぎません。しかし、その人にとって救いになるのなら伝説の価値はあります」 「あなたは信...
星空のスピカ | 2016.06.05 Sun 09:31
JUGEMテーマ:ファンタジー恋愛もの 地味な格好をしたサイスは情報を集めていた。フィス国解放団の動きが活発になってきたからだ。ほかの少数民族も決起を考えているらしい。早く手を打たねば・・・。またサイスは別の任務も請け負っていた。第一皇子フィリナクとの関係だ。これは王にも秘密だった。フィリナクはカラムより狡猾な人間だ。自分の父親を差し置いてすべてを手に入れようとしているようだ。果たしてそれがうまくいくかどうかはわからない。それにしてもこのフィス国を保つためには何か手を打たねばならない。...
星空のスピカ | 2016.06.04 Sat 20:28
その夜、キィ、という静かな、だが窓の開く音が聞こえた。この世界に来てから眠りの浅かった亜紀は不安から両手で自分を抱きしめた。フィナンスがこんなときにくるわけがない。不審者だ。直感がそう告げていた。広いベッドだ。亜紀はまくらをベッドの中に隠して厚みを出すと自分は壁際に小さく座っていた。薄衣がそっとあけられると膨らんでいるベッドに一刀が突き立てられた。鋭い短刀だ。寝ていたら心臓を一突きされてあっという間に死んでいただろう。 「フィー!」 亜紀はとっさにフィナンスを呼んでいた。すると声...
星空のスピカ | 2016.06.04 Sat 20:14
JUGEMテーマ:ファンタジー恋愛もの サンダーラ国一番美しいといわれる森の中を皇太子フィナンスは有翼馬エンカを駆けさせていた。あるときは空を飛び、あるときは大地をふみしめる。爽快な気持ちがフィナンスを満たしていた。木漏れ日がさしてくる。湖のほとりにくるとフィナンスはあるものをみつけてエンカを静かに止まらせた。 少女はまぶたを閉じて眠っていた。両手足を広げて安心しきったように眠っていた。見たこともない不思議な服装に身を包んで。黒い髪の毛が地面に広がっていて印象的だった。きっとそのまぶたを...
星空のスピカ | 2016.06.01 Wed 11:02
JUGEMテーマ:ファンタジー恋愛もの またエドとアイラはナントを逆戻る。そして王都をすぎてさらに東へ向う。長い旅の中アイラの中では緊張が破裂しそうなぐらい高まっていた。 あの人がお母さん? 馬車に乗っていたあのはかなそうな美人の貴婦人サリナ・・・。アイラとは似ても似つかぬ人物だった。それに名前が違う。戸籍に入っていたのはアリア。彼女はサリナ。どうして彼女が水鏡に映ったのか・・・。真相はまだ明かされていなかった。 幌馬車がパーヴの駅に着いた。降り立つエドとアイラ。そのアイラの表情は...
星空のスピカ | 2016.05.31 Tue 21:41
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