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夢ゆらら 第二部 第一話クロスオーバー

JUGEMテーマ:ファンタジー恋愛もの     重ねられた手のひらを隔てていた壁が徐々に薄くなっていく。まるで透明な板のようなそれは急に消えてお互いの手のひらのぬくもりを与えた。 暖かさが通じる。思わず二人は抱き合っていた。 「フィー!」 「亜紀!」  亜紀は涙をこらえきれずほほに涙が伝う。 「泣かないで・・・亜紀」  フィナンスは優しい声で言うとそっと涙をぬぐう。 「俺はこの異世界との接触を解決しなくてはならない。会える時間は少なくなるけれど、俺は必ずここに来るから。毎朝亜紀の顔を見に来る。...

星空のスピカ | 2016.06.09 Thu 00:46

夢ゆらら 第五話 夢ゆらら

JUGEMテーマ:ファンタジー恋愛もの    戦争は終わった。サンダール国直属の侯爵家が統治に当たり、これでフィス国とサンダール国の二国になった。現在のところ両国の間で争いはない。今後もないとは言い切れないが順調に友好関係を保っていた。そしておなじく恋人たちも。  亜紀はようやく外へ出ることを許された。フィナンスはエンカに亜紀を乗せると真っ先に湖のほとりに来た。 「ここで君はこんな風に眠っていたんだ」  フィナンスは両手足を広げて説明する。  やだ、と亜紀は赤面する。花も恥らう乙女があられも...

星空のスピカ | 2016.06.06 Mon 10:46

夢ゆらら   第四話 戦いの向こうに

JUGEMテーマ:ファンタジー恋愛もの    かいがいしく蜂のように動き回る亜紀には疲れている暇はなかった。ずっと部屋の中で暮らしてきたため体力は衰えていたが気力でかばっていた。そんな亜紀をアリアンヌは別室に連れて行った。 「そこへお座りなさい」  はい、と素直に亜紀は答えていすに座る。 「あなたは救世主伝説をどう思うかしら?」  ずばり、と聞かれて亜紀は戸惑った。だが、しっかりと口を開く。 「伝説は伝説に過ぎません。しかし、その人にとって救いになるのなら伝説の価値はあります」 「あなたは信...

星空のスピカ | 2016.06.05 Sun 09:31

夢ゆらら   第三話 救世主伝説

JUGEMテーマ:ファンタジー恋愛もの    地味な格好をしたサイスは情報を集めていた。フィス国解放団の動きが活発になってきたからだ。ほかの少数民族も決起を考えているらしい。早く手を打たねば・・・。またサイスは別の任務も請け負っていた。第一皇子フィリナクとの関係だ。これは王にも秘密だった。フィリナクはカラムより狡猾な人間だ。自分の父親を差し置いてすべてを手に入れようとしているようだ。果たしてそれがうまくいくかどうかはわからない。それにしてもこのフィス国を保つためには何か手を打たねばならない。...

星空のスピカ | 2016.06.04 Sat 20:28

夢ゆらら   第二話 契約

  その夜、キィ、という静かな、だが窓の開く音が聞こえた。この世界に来てから眠りの浅かった亜紀は不安から両手で自分を抱きしめた。フィナンスがこんなときにくるわけがない。不審者だ。直感がそう告げていた。広いベッドだ。亜紀はまくらをベッドの中に隠して厚みを出すと自分は壁際に小さく座っていた。薄衣がそっとあけられると膨らんでいるベッドに一刀が突き立てられた。鋭い短刀だ。寝ていたら心臓を一突きされてあっという間に死んでいただろう。 「フィー!」  亜紀はとっさにフィナンスを呼んでいた。すると声...

星空のスピカ | 2016.06.04 Sat 20:14

夢ゆらら   第一話 First Kiss

JUGEMテーマ:ファンタジー恋愛もの   サンダーラ国一番美しいといわれる森の中を皇太子フィナンスは有翼馬エンカを駆けさせていた。あるときは空を飛び、あるときは大地をふみしめる。爽快な気持ちがフィナンスを満たしていた。木漏れ日がさしてくる。湖のほとりにくるとフィナンスはあるものをみつけてエンカを静かに止まらせた。 少女はまぶたを閉じて眠っていた。両手足を広げて安心しきったように眠っていた。見たこともない不思議な服装に身を包んで。黒い髪の毛が地面に広がっていて印象的だった。きっとそのまぶたを...

星空のスピカ | 2016.06.01 Wed 11:02

アイラの物語第一部第六章 再会

JUGEMテーマ:ファンタジー恋愛もの  またエドとアイラはナントを逆戻る。そして王都をすぎてさらに東へ向う。長い旅の中アイラの中では緊張が破裂しそうなぐらい高まっていた。  あの人がお母さん?  馬車に乗っていたあのはかなそうな美人の貴婦人サリナ・・・。アイラとは似ても似つかぬ人物だった。それに名前が違う。戸籍に入っていたのはアリア。彼女はサリナ。どうして彼女が水鏡に映ったのか・・・。真相はまだ明かされていなかった。  幌馬車がパーヴの駅に着いた。降り立つエドとアイラ。そのアイラの表情は...

星空のスピカ | 2016.05.31 Tue 21:41

第五章 水鏡

JUGEMテーマ:ファンタジー恋愛もの    アイラの毛布を作っていた店はつぶれていた。だがその店の関係者がいるとの情報をエドはつかんできた。その人間のいる村へと急ぐ。 「ちょっと。ちょっと待ってよ。そんなに早く歩かないで!」  ぜいぜいと息を切らしながらアイラはエドに抗議する。 「悪かった・・・」  上の空でエドは答える。 「って聞こえてないわね〜」  アイラはつかつかとエドに歩み寄ると背伸びして両耳をひっぱった。 「いってー。何するんだよ!」 「ってエドが何も聞いてないからでしょ! もうちょ...

星空のスピカ | 2016.05.30 Mon 22:38

第四章 手がかりをもとめて

JUGEMテーマ:ファンタジー恋愛もの  アイラは長い栗毛の髪の毛をさらっと払いのけて外の空気を吸った。幌馬車の中はずっと満員で新鮮な空気などろくに吸えなかったからだ。もっともナントに着く頃には客はほとんどいなかったが。生活レベルの低いナントには出稼ぎに出て行くものはいても入ってくる人間は少なかった。よそ者が来たという目でみられる。自然とナントの人間の口は堅くなっているようだ。そこからどうやってアイラの身元を割り出すか問題だった。 「ねぇ。なんか場違いじゃない? 私たち。すごい目でみられている...

星空のスピカ | 2016.05.24 Tue 21:58

第三章 すれ違い

JUGEMテーマ:ファンタジー恋愛もの 「それではいってらっしゃいませ」  城の玄関でウェンがかしこまって言う。村には何のてがかりもなかった。再び二人は旅に出ることにした。 「うん。いってきます。ママのこと・・・」  ほんの一瞬泣きそうになったアイラは言葉を詰まらせた。また母親を泣かせるようで出て行きたくなかった。母親はひとりでいい。でも真実も知りたい。心の中でアイラは葛藤を繰り返していた。 「万事大丈夫でございます」  めったに笑わないウェンが微笑む。  その微笑でアイラはようやく安心した。この...

星空のスピカ | 2016.05.15 Sun 06:07

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