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Invading endeavor (Optional code) #02

JUGEMテーマ:自作小説    魚たちは、鱗ではなく羽毛を纏っていた。それは錦の斑模様の羽毛だった。鱗はどうしたのだろうか。何者かに剥ぎ取られたのか。あるいは自ら脱ぎ捨てたのか。それは進化か、それとも退化か。それとも、進化のように退化することによって生み出される過剰な進化だろうか。どれであったとしても違和感はない。何故ならその錦の斑模様は、雨だったから。その模様には雨が表されていたから。その雨は怒り狂う雨だった。  この世界を誕生させた最初の雨だったかもしれない。あるいはこの世界を...

pale asymmetry | 2022.02.07 Mon 21:32

Invading endeavor (temporary code) #02

JUGEMテーマ:自作小説    見境なく卑猥な膨らみを顕示する柱が立ち並んでいた。その密度は高すぎて、それが構造上の必要性を超えた数であることは確かだった。全て純白の柱たち。純白であるのにどこまでも卑猥な波動を放っている。透明なそれは強い粘度を有していて、それが系潜師の皮膚を波打たせる。噛むように舐めるように。すなわち柱たちは系潜師に繁殖行動を求めているのだった。  溺れそうに濃いその波動のなかを、鱗が群れを成して泳ぎ回っていた。玉虫色に輝く鱗だった。それは魚から零れ落ちたものに違...

pale asymmetry | 2022.02.05 Sat 21:45

Invading endeavor (Optional code) #01

JUGEMテーマ:自作小説    風は中天から地面へと真っ直ぐに墜落するように吹いていて、その風は無数の花片を伴っている。その墜落はある種の堕落であり、そのせいか花片は透明だ。色彩を持たないそれは、すなわち質量も有しない。色彩こそが粒子を加速させ、それが質量を生み出すのだから。くだらない理屈だけど、それが現実だ。だから本当は風は吹いていないし、花片もその風に織り込まれてはいない。  確かにあるのは砂だけだった。それは黄金色の細やかな砂で、そうであるが故に猛威を振るう因子だった。現にこ...

pale asymmetry | 2022.02.03 Thu 21:53

Invading endeavor (temporary code) #01

JUGEMテーマ:自作小説    その事件は遙かな過去に起こっていたし、今まさに起ころうとしていたし、そして遙かな未来に起こる事象でもあった。つまりすでに取り返しのつかない状態であり、瞬発力によって回避出来る状態でもあり、そして予言の中にしか存在しない事象でもあった。とにかく、それは熱の欠片も残っていない抱擁の残像であり、抱擁のために両手を広げた放熱であり、抱擁という概念だけが空回りしている出鱈目な事象であるということだ。  出鱈目な旅は、極東のステーションから始まる。大陸を横断する...

pale asymmetry | 2022.01.31 Mon 21:20

短編小説「最後のトランペット」

JUGEMテーマ:自作小説 継続は力なり。 夏に始めたダイエットは年を越え、翌年の一月まで続いた。 もちろんこれからも続けるつもりだ。 なにせ今までこれといって目標を達成した試しがない。 色んなことに挑戦しては挫折したり、飽きたり、気づけば忘れていたり。 継続なんて言葉は自分の中になかった。 しかし小学二年生の甥っ子に駆けっこで負けたとなれば、もはやそうも言っていられない。 あれは悔しかった。 去年の夏、忙しい妹夫婦に変わって甥っ子と姪っ子の遊び相手を務めた。 『兄ちゃん暇でしょ?明日子供の...

SANNI YAKAOO | 2022.01.24 Mon 13:28

短編小説「猫大名」

JUGEMテーマ:自作小説 イライラした時は山に登ることにしている。 川を渡った先にある小さな山だ。 原生林がたくさん残っているし、山道は険しい獣道なので、なかなか登りがいがある。 しかも標高が150メートルと低いので、時間が掛からずに登り下りが出来るのが魅力だった。 今日はちょっとイライラすることがあったので、山を登って身体を動かし、山頂で景色を眺めてリフレッシュした。 気分も落ち着き、下山途中にある湧水で喉を潤し、麓の神社に着く頃にはすっかり心が晴れていた。 砂利敷きの神社の駐車場で背伸び...

SANNI YAKAOO | 2022.01.22 Sat 13:41

短編小説「時を越えた指輪」

JUGEMテーマ:自作小説 クリスマスになんで親父と二人で過ごさないといけないのだろう。 せっかく雪が降るホワイトクリスマスなのに。 それもスコップ片手に雪と土を掻き分ける重労働なんて。 「なあ親父。もう出て来ないって。」 年老いた背中を丸めながら、足を踏ん張ってせっせと掘り返している。 昔は消防士として慣らした肉体も、70歳ともなれば年相応に衰えていく。 それでもせっせと雪と土を掘り返し、「何サボってる。お前も手を動かせ」と言った。 「もう腕がパンパンだよ。どんだけ掘り返したと思ってるんだよ。...

SANNI YAKAOO | 2022.01.18 Tue 11:25

短編小説「約束の朝」

JUGEMテーマ:自作小説 ある人は約束は守るものという。 ある人は約束は破るものという。 じゃあ私はどうかっていうと、約束はしないものだと決めている。 約束には二つの罪があって、一つは無駄に期待を持たせること。 守ってもらえなかった時、ひどく裏切られた気分になる。あれはかなり効く。 もう一つは無駄に責任を背負うということ。 重い物なんて背負いたくない。なるべく身軽でいたい。だから破りたくなる。 でも破れば人の期待を裏切り、期待に応えようとすると責任を背負う。 要するに守ろうと破ろうと良いこ...

SANNI YAKAOO | 2022.01.15 Sat 14:49

短編小説「氷結の過去」

JUGEMテーマ:自作小説 暖房が効き始めた車の中、トロトロ進む前の車を睨む。 先月から出張が続いていてうんざりしていた。そろそろ疲れも限界だ。 だけど今日、この街での出張を終えればしばらく休めるので、それを励みに睡魔と疲労をなんとか押し殺していた。 前の車はまだトロトロ走っていて、だからといってクラクションを鳴らすことも出来ない。 なぜなら昨晩に降った雪が凍っているせいで、路面がアイスバーンになっているのだ。 ほとんど雪が降ることがないこの街では、スタッドレスを履いている車は少ないようだ。...

SANNI YAKAOO | 2022.01.13 Thu 18:02

短編小説「二人の軌跡」

JUGEMテーマ:自作小説 冬を描いた一枚の絵が飾ってある。 掛け軸や賞状やカレンダーに混じって、冬の油絵が飾ってあるのは目を引く。 しかもここは田舎の古びた家で、未だに囲炉裏があるというレトロぶりだ。 だから油彩の風景画なんてアンバランスなインテリアが余計に際立つ。 久しぶりに訪れた友人の家、二年前に来た時はこんな絵はなかった。 僕は特に絵に興味があるわけじゃないけど、なんだか見入ってしまう。 別にそう変わった絵じゃない。 抽象画とか現代アートとか、そういった奇抜な感じじゃなくて、しっとり...

SANNI YAKAOO | 2022.01.12 Wed 16:07

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