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JUGEMテーマ:自作小説 厨子の内には何もない。何もないということは、そこには睡蓮があるということになる。 だからそこには水面があるということになり、睡蓮はそのあるはずのない水面に浮かんでいることになる。その水面は宇宙であるのだと教わっていたけれど、そこでは常に紋様が睡蓮を取り囲んで交歓していると聞いていたのに、今は睡蓮だけが浮かんでいた。ではその水面はもう宇宙ではないのか、どうして宇宙ではなくなったのか、いやそもそも厨子は存在するのか、本当のところは何も解らない。私の内は...
pale asymmetry | 2021.10.29 Fri 21:36
公園から手をつないで出てくるみい子ときゆみを見たのは、自転車で会社に向かう途中だった。 気持ちのいい朝だった。五時すぎに目覚めた私は、五時半まで二度寝をして、それからシャワーを浴びて、朝の準備をした。朝食を食べ終えても、家を出るまでは、まだ一時間半くらいの余裕があった。私はテレビをつけて、朝のニュースにチャンネルをあわせた。アメリカではハリケーンが上陸し、日本では首相が体調不良で辞任していた。コロナの感染者数は心なしか落ち着きを見せていたけれど、感染したら、つまはじきになるかと思うと...
nothing but a headache | 2021.10.24 Sun 23:44
JUGEMテーマ:自作小説 ・片恋のシャーラ(プロトタイプ版)の第14弾です(詳しい説明は第1弾に書いてあります)。 他のページはコチラ→「片恋のシャーラ(プロトタイプ版)1/2/3/4/5/6/7/8/9/10/11/12/13/15/16/17/18/19/20/21/22/23/24/25/26/27/28/29/30/31/32(終)」 (下部にある「カテゴリー別・小説一覧」からも他ページに跳べます。※他の小説も混じった「もくじ」になっています。) 「お久しぶりでございます...
言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜 | 2021.10.14 Thu 21:31
JUGEMテーマ:自作小説 眠りは円形ではない。それは閉じてはいない。開いているのだ。そこに煌めくアンモライトを取り込むために。 「さあ、あなたも踊りなさい。のほほんとしていてはいけません」 母は両手に大きな扇を持ち、それをたおやかに泳がせている。踊っているようにも見えたけれど、二尾の魚を戦わせているようにも見えた。あるいはその魚たちは特別な獲物を奪い合っているのかもしれない。その意味のある両腕の躍動に反して、両脚やそれが繋がる胴体は出鱈目としか思えない振る舞いで、夜気を攪...
pale asymmetry | 2021.10.13 Wed 21:34
「ねえ、みい子?」 「え、なに、もう朝? 寝坊した?」 「ううん」 「まだ六時前か。はーびっくりした。きゆみこんな時間にどしたん?」 「きょうふたりで仕事休も」 「は?」 「休んで水族館いこう」 「なんで?」 「なんででも」 「ありえんすぎる。今日私会議なんやけど」 「いっしょに風邪ひこ?」 「あのさ、きゆみ、まじでいってる?」 「めっちゃまじでいってる」 ふたりで目を合わせて、そのまま一瞬時間が止まった。みい子はいったん視線を外してから、「はあああ、まじかあ」...
nothing but a headache | 2021.10.13 Wed 02:12
みい子のスマホの目覚ましが鳴る、その少し前に、私は目を覚ました。五時五十分だった。もう一度寝ようと目をつむっても、ふしぎと寝付けなかった。いつもならみい子が起きる前に目覚めることはないし、ひとりのときも、目覚ましを追い抜いて目が開くことなんて、まずありえないことだった。 コンタクトもメガネもつけていない私は、ぼんやりとした視界のまま、天井を見上げた。目を閉じて、もう一度開けて、ここには眠気が少しも存在していないことに気付いた。いつ以来だろう、と私は思う。嫌な予感があった。予感であって...
nothing but a headache | 2021.10.10 Sun 14:53
JUGEMテーマ:自作小説 桜が狂い咲いた神無月のことだった。下の姉が神隠しに遭った、と上の姉から聞かされた。 下の姉は十二歳で、まだ山風の橋を渡っていない。だから神隠しに遭ってしまったのだと、上の姉は嘆いた。そのとき私は十歳で、だからもちろん山風の橋を渡っていない。それでその話を聞いたときにはとても怖かった。心の底から恐れ戦いた。山風の橋を渡っていないということは、下の姉も私もまだ人ではないということになる。この川の周辺の世界では、そういうことになる。人ではない存在は、いろ...
pale asymmetry | 2021.10.02 Sat 21:57
私はみい子を見た。さっきまであかねと電話をしていたみい子を見た私は、胸がしめつけられて、誰よりも近くにいるのに、嫉妬する自分をとめられなかった。うしろを向いたままのみい子の首筋に、くちびるをくっつけて、離して――。そんなことをしても、何の言い訳にもならない。私は眠っているみい子の隣で、みい子のスマホのなかを見るのをやめられなかった。 私は画像フォルダを開いた。真っ先にメッセンジャーアプリを見ないのは、おいしいものを最後に取っておくような、というと、まるで、のぞき見が趣味のようだけれど、...
nothing but a headache | 2021.09.25 Sat 03:23
JUGEMテーマ:自作小説 条の大橋の真ん中に、イチョウの巨木が佇んでいた。この世界が最初にまぐわった、快楽のシンボルのように。 私は川に寄り添うように伸びる遊歩道から、そのイチョウを見上げていた。イチョウの巨木は大橋からはみ出さんばかりの体躯で、大橋の往来は完全に妨害されていた。でも心配はない。イチョウの巨木は大橋の路面からは少しだけ浮き上がっている。つまり実際に大橋に生えているわけではないのだ。何故なら、そのイチョウの巨木は大橋が出来るずっとずっと昔から存在していて、つま...
pale asymmetry | 2021.09.23 Thu 21:21
うがいをして、コンタクトを捨てた。メガネケースからメガネを取り出して、そっと閉めた。仕事終わりよりも、何よりも、コンタクトを外すと、今日が終わった、と思う。目を開ける力が、すうっと弱まるのがわかった。 私はみい子の眠るベッドに向かって歩いた。愛子がみい子になって、もう六年くらいが経つけれど、みい子とももう長いな、と何となく思う。みい子とは、友人時代も含めると、もう七年もいっしょにいることになるのだ。弟とは、年に数回しか会わないことを思えば、肉親以上の関係といってもいいのかもしれなかっ...
nothing but a headache | 2021.09.15 Wed 01:39
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