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JUGEMテーマ:自作小説 星が昇っていく。 私を置き去りにして。空を黒く染めながら。 そういえば子供の頃、そして青年の頃、こんな風に空を眺めるのが好きだった。 あの頃、私は夢を抱いていた。 この為に生まれてきたのだという夢を。 しかし実現に向けて動くことはなかった。到底無理だと理解していたから。 夢は夢だと言い聞かせ、現実的な路線を貫いて生きてきた。 そうやって夢を捨てることは、まるでもう一人の自分を捨てるような痛みであったし、人生の意味から目を背けるような罪悪感さえあった。 だがそれでい...
SANNI YAKAOO | 2022.01.10 Mon 13:27
JUGEMテーマ:自作小説 星たちは、風景を発情させる発条なのだろうと思えた。それともそれを巻く螺子なのだろうか。そしてその風景に私はいない。 星といっても、夜の宙の星ではない。それは星形正多面体。淑やかにいやらしい銀朱色の星たち。それが決して触れ合うことなく、無数に舞っている。そうすることで星たちは風景を記述しているのだろう。世界の起伏を、世界の斑を、そして世界に秘された境界を。だから星たちは装置なのだ。それは人形を歩ませる装置なのだ。だから当然人形が歩いている。風景の真ん...
pale asymmetry | 2021.12.03 Fri 21:51
ざわめき 積 緋露雪 ――君にはあのざわめきが聞こえないのかい? ――えつ、何の事だい? ――時空間が絶えず呻吟しながら《他》の《何か》への変容を渇仰してゐるあのざわめく音が、君には聞こえないのかい? ――ふむ。聞こえなくはないが……その前に時空間が渇仰する《他》とはそもそも何の事だね? ――へつ、《永劫》に決まつてらあ! ――えつ、《永劫》が時空間にとつての《他》? ――さうさ。《永劫》の相の下で時空間はやつと自らを弾劾し果(お...
My First JUGEM | 2021.11.29 Mon 19:04
二度目のチャイムが鳴った。 強すぎるクーラーのせいで、部屋は冷え切っていた。右腕には赤い痕ができていて、私はよだれを、その右腕で拭い、左手で、それをさするように腕にこすりつけた。読みかけの本はスピンを挟まないままで閉じられていた。私は束の間、放心した。一体何が起こっているのかわからなかった。スマホの電源ボタンを押すと、「ついたよ」のメッセージが届いていて、私は着替えも、鍋も、何の用意もしていないことに気付いて、体温が一気に上がった。 急いでドアの鍵を開けにいこうと思うけれど、冷た...
nothing but a headache | 2021.11.29 Mon 01:19
洗面台の排水溝の髪の毛を取り、スポンジでみがき、蛇口を伸ばして、洗剤の泡を流す。上の方から、円を描くように流すと、泡は一度、底の方に溜まる。私はその上から小刻みに水を当てて、泡を流し切った。 休日の初日に行われる掃除は、私の場合、決まって洗面台から始まるのだった。私は洗面台を洗い終えると、鏡を水拭きして、タオルで拭き、タオルを洗濯かごに投げ入れた。投げ入れてから、今から洗濯機を回すことを思い出して、ああ、それなら直接洗濯機に入れればよかった、などと思ったりする。たった一枚のタオルが洗...
nothing but a headache | 2021.11.26 Fri 02:04
JUGEMテーマ:自作小説 夢幻(むげん)空 ( くう ) 花 ( げ ) 序 なんだかんだであれやこれやと思ひ悩みながらの十年以上の思索の結果、埴谷雄高の虚体では存在の尻尾すら捕まへられぬといふ結論に思ひ至った闇尾(やみを)超 ( まさる ) は、それではオイラーの公式から導かれる虚数iのi乗が実数になるといふことを手がかりに虚体をも呑み込む何か新たな存在論が出来ぬかと思案しつつ、それを例へば虚体は存在に至るべく完全変態する昆虫の生態を模して存在の蛹のやうなものと強引に看做してし...
My First JUGEM | 2021.11.24 Wed 18:03
今さら身体を離したところで、何をごまかせるわけでもなかった。みい子は私と抱き合ったままで声の方を振り返り、「はっ?」と、喉から息を出した。それは声になっていなかった。それもそのはずで、両手を腰に当てて、私たちを見下ろしているのは、どれだけの数の偶然が重なろうが、ここにいるはずのない人物なのだった。 もちろん、朝、あかねが私たちに気付いたことを私は知っていた。驚かなかったわけではない。まずいと思ったのは確かだった。けれども、たとえ再来週、三人で集まったとしても、あかねがそのことに触れる...
nothing but a headache | 2021.11.19 Fri 01:53
目の前の水槽では、ロクセンスズメダイがせわしなく泳ぎ回っていた。たまに側面をこちらに向けて止まるものがいると、縦に何本か引かれた黒いラインが、私の目を寄り目にして、隣同士の線を重なり合わせた。太さの違うそれらの線は、ステレオグラムのように、互いが重なると、いびつに、へこんだり、浮かび上がったりした。 「意味わからん。それいうために、きょう休もうっていったん?」 「ううん。休もうっていったのは、ただの思い付きだったよ。いつか、愛子にはいわないといけないと思ってたけど、きょういうつもりはな...
nothing but a headache | 2021.11.10 Wed 02:03
頭の上を、エイたちが泳いでゆく。 一匹や二匹ではなく、何十匹というエイが、トンネル状になった水槽の上を横切ってゆく。 午後からは、アポイントメントが三件あるだけだった。水族館前のバス停を降りて、私は予定を変更する電話をかけた。あしたにしようかとも思ったけれど、来週の月曜日にした。あした、何か特別な予定があるわけではなかった。けれど、仕事をする気持ちにはならないだろうということはわかっていた。 私たちは、頭上を飛び交う、エイの白いお腹を見上げながら歩いた。お腹に口があるというの...
nothing but a headache | 2021.11.06 Sat 03:04
鏡を見て、泣いている自分を確認した。感情並みに化粧が崩壊していた。ティッシュを取り出して、鼻をかんだ。気を抜いた途端にふわっとみい子の顔が浮かんで、こみ上げて、また私は泣いた。我慢したけれど、無駄だった。上と下のくちびるがともに強く上と下から押されすぎて、口許に不格好なしわができるのが自分でもわかった。 私は倒れた自転車の横にぺたんと座り込んだ。地面に残った雨でズボンが濡れようが、もうどうだってよかった。泣きたいわけでもないし、投げやりになりたいわけでもなかった。けれど、そうなるしかな...
nothing but a headache | 2021.10.30 Sat 02:15
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