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勇気のボタン〜永久のサクラ〜 第五話 地返しの玉(1)

JUGEMテーマ:自作小説 岩肌がむき出しのゴツゴツした山が並んでいる。 所々木が生えているけど、ほとんど茶色の殺風景な景色だ。 そんな山の間に大きな川が流れていた。 山の間を縫って、地平線のずっと向こうまで伸びている。 眠り龍ことフミノサクラノリュウさんは「俺の地返しの玉を奪った龍があそこにいるんだ」と言った。 儚い印象の顔をくしゃっと歪ませて、桜のように美しい龍の衣が風にはためいている。 この風はきっとフミノサクラノリュウさんが起こしているものだ。 だって周りには風が吹いていない。 空は...

SANNI YAKAOO | 2021.07.10 Sat 10:28

勇気のボタン〜永久のサクラ〜 第四話 眠り龍(2)

JUGEMテーマ:自作小説 「なるほどねえ。あの岩に宿ってた龍を探してると。」 友達の白蛇がチロチロ舌を出しながら頷いている。 「けっこう長いことあの岩に宿ってたよね。それがいきなり出ていくっていうのはたしかに変だね。」 眠そうな顔で空を見上げる。 私は身体に付いた泥をブルブルっと振るいながら「あの岩に龍が宿ってること知ってたの?」と尋ねた。 「みんな知ってるよ。知らないのコマチくらいじゃない?」 「ええ!だって友達の誰もそんな話してなかったし。」 「コマチも知ってるもんだと思ってたからじゃ...

SANNI YAKAOO | 2021.07.09 Fri 10:28

勇気のボタン〜永久のサクラ〜 第三話 眠り龍(1)

JUGEMテーマ:自作小説 「ほう、あの龍出て行っちまったのか。」 お父さんが鍬を片手に言う。 畑仕事を中断して、大きな石に座って煙管を咥えた。 「ねえお父さん。このままじゃ修行が出来ない。どうにかしてあの龍を連れ戻さないと。」 さっきの出来事を話すと、渋い顔をしながら煙管に火を点けた。 「まずは見つけないといけない。お父さんならあの龍のこと何か知ってるんじゃない?」 「まあ・・・そりゃ知ってるっちゃ知ってるが・・・・、」 なんだか言いづらそうにしている。 私と目が合うとサっと逸らした。 「...

SANNI YAKAOO | 2021.07.08 Thu 11:59

勇気のボタン〜永久のサクラ〜 第二話 龍の宿る岩(2)

JUGEMテーマ:自作小説 私はタヌキだ。 モフモフした尻尾とモコモコした体毛のタヌキだ。 だから当然お父さんとお母さんもタヌキである。 でも普段は人間の姿で生活してる。 なぜならタヌキは化けるのが得意だから。 でもどのタヌキでも化けられるわけじゃない。 そしてタヌキじゃないからって化けられないわけでもない。 世の中には変わった動物がいて、化けたり人と話したり不思議な術を使ったりする。 そういう動物は霊力を宿していて、そういう動物のことを霊獣って呼ぶ。 私はタヌキの霊獣だ。 霊獣は意外に多くて...

SANNI YAKAOO | 2021.07.07 Wed 15:32

勇気のボタン〜永久のサクラ〜 第一話 龍の宿る岩(1)

JUGEMテーマ:自作小説 私には婚約者がいる。 だけど今は会えない。こことは別の世界で住んでるから。 そして私はまだその世界へ行くことは出来ない。 来年の春、桜が咲く頃までにやり遂げないといけない事があるんだ。 そうしないと彼のいる世界へ戻れない。 だから頑張らないといけない。だって約束したんだから。 来年の春には戻るって。一緒に桜を見ようって。 ぜったいに戻らないと・・・・。 今日も早起きをして、出かける支度をして、いつもの場所へと歩いて向かった。 深い深い山の奥にある大きな岩と、その近...

SANNI YAKAOO | 2021.07.06 Tue 13:27

となえざんまい #03

JUGEMテーマ:自作小説    万華鏡を覗くと必ず酔ってしまう。昔からずっとそうだった。  それは紋様の全体を捉えようとして、逆に紋様に私の全体が捉えられてしまうせいだ。鏡の内に電子雲のように束縛された紋様が、その腹癒せに私を束縛しようとして、それに私は逆らえない。どうして他の人たちはそれに逆らえるのか、私には解らなかった。私は、自身を紋様に束縛させないために揺さぶるしかなかった。紋様を固定しないために私自身の奥底の要を揺さぶるしかなかった。それで、酔ってしまうのだった。それならば...

pale asymmetry | 2021.06.09 Wed 21:59

となえざんまい #02

JUGEMテーマ:自作小説    夜の月面を思わせるくらいに寒い部屋だった。新月の月は空ではなく、ここで冷笑していたのだと思った。  壁際には水晶が並んでいる。碧色の水晶、翠色の水晶、紫色の水晶。全ての壁際にひしめき合うように並んでいたから、部屋が狭く感じる。さらにそれらの水晶たちを着飾るように、金と銀と紅の短冊が天上から賑やかにぶら下げられていて部屋の余白を削り取っていた。エアーコンディショナーの稼働音は耳につくほどだったけれど、水晶はともかく短冊は微塵も揺れていない。どういう仕掛...

pale asymmetry | 2021.05.24 Mon 22:22

となえざんまい #01

JUGEMテーマ:自作小説    陰性の雨が、しゃならしゃならと舞っていた。  当然夜は暗雲に覆い被され、星々も月も見えない。まあ新月の夜だったから、月はもとから見えはしないのだけれど。そういう天然の光りの代わりに、斜め上方の家々の窓から漏れ出る明かりが瞬ぎ、川端の遊歩道を控えめに照らしていた。ただそれは本当に控えめすぎて、加えて遊歩道の面が石畳だったから、私の足取りはそろりそろりと畏まらざるを得なかった。こんなことなら、表玄関に通じる側の道を選べばよかった。つい懐かしさにかられて川...

pale asymmetry | 2021.05.22 Sat 22:04

Corundum Spirit Demon #07

JUGEMテーマ:自作小説    世界は、発情したカレイドスコープだった。  私は蒼玉に強く抱かれていた。そして、蒼玉を強く抱きしめていた。私は激しく燃え上がったままだ。橙の炎を噴火のように天に向けて放っている。それは激しく渦巻き、世界の何もかもを巻き込んで奪い取ろうとしているかのようだった。私を抱く蒼玉もまた燃え上がっていた。冷たい碧瑠璃の炎。それが戯れるように、あるいは諭すように、私の炎に巻き付いている。私の炎が螺旋を描き、蒼玉の炎も螺旋を描いた。ああ、これは二重螺旋だ。私たちは...

pale asymmetry | 2021.05.01 Sat 21:53

「恥を知り端を折れば多知を識る」

きちんと編み込まれた長い金髪はいつも肩から前方に垂れ下がり 胸を越えたところまでたどり着く。 真っ直ぐきれいな姿勢はお手本のよう。 身にまとう服は全てどこから見ても豪華すぎず華美すぎず しかし確かに値が張るものであることがわかる。 彼はいつも穏やかに微笑みを絶やさず、 立場がどれほど違っていようとも、 その話を親身になって聞くし、見下ろすこともない。 非常に優秀な成績でありながらも、勤勉で、 手を抜くタイプではない。 とはいえ、全力投球といった熱血ではなく、 時にはわざと手を抜いて見せて...

SolemnAir//3LOVERS | 2021.04.25 Sun 22:29

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