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勇気のボタン〜永久のサクラ〜 第七話 復讐の龍(1)

JUGEMテーマ:自作小説 サクラ君と出会ったあの日の出来事から一週間が経った。 私はいつものように山へ行き、お母さんに修行をつけてもらっていた。 相変わらず厳しくて、ちょっとでも気を抜くとすぐ怒られる。 だけどもう怖いとかしんどいなんて言っていられない。 あの日以来、私はもっと頑張らなきゃって決めたんだ。        ***** 家に帰って来たあの日、私はお母さんに謝った。 きっとすごく怒っているだろうなって思ったけど、ぜんぜんそんなことはなかった。 逆にとても心配していたみ...

SANNI YAKAOO | 2021.07.13 Tue 12:30

となえざんまい #04

JUGEMテーマ:自作小説    スピネルの地面に散乱する腐敗した花弁たち。よく見るとそれは全て勾玉だった。  ピンクがかった紅い地面にその勾玉の蒼翠はよく目立っている。その表層の光沢が、私には目に見える死臭に感じてしまう。そんなはずはないのだ。勾玉なのだから、それは生命の前段階のマテリアルのはずだ。それなのにそう感じてしまうのは、その勾玉たちがスピネルの地面にしっかりと固定されているからだろうか。私はそっと指を伸ばす。けれどその指先が勾玉に届く前に、何者かに阻まれて私の指は行方知れ...

pale asymmetry | 2021.07.12 Mon 21:58

勇気のボタン〜永久のサクラ〜 第六話 地返しの玉(2)

JUGEMテーマ:自作小説 ボロボロの古い納屋は屋根が穴だらけだった。 差し込む光が埃を照らし、私たちの足元をほんのりと暖かくする。 私は古い木箱の上に座りながら、サクラ君はボロボロの土壁にもたれかかりながら、七色に光る神秘的な玉を見つめていた。 「これが地返しの玉だ。」 嬉しそうに見せつける。 私は「知ってる、前に見たことがあるから」と手に取った。 《すごく綺麗。それに不思議な力が宿ってるのが分かる、さすが龍の秘宝だ・・・・。》 ・・・・なんとかこの玉を奪うことが出来た。 追いかけてきた川...

SANNI YAKAOO | 2021.07.11 Sun 10:18

勇気のボタン〜永久のサクラ〜 第五話 地返しの玉(1)

JUGEMテーマ:自作小説 岩肌がむき出しのゴツゴツした山が並んでいる。 所々木が生えているけど、ほとんど茶色の殺風景な景色だ。 そんな山の間に大きな川が流れていた。 山の間を縫って、地平線のずっと向こうまで伸びている。 眠り龍ことフミノサクラノリュウさんは「俺の地返しの玉を奪った龍があそこにいるんだ」と言った。 儚い印象の顔をくしゃっと歪ませて、桜のように美しい龍の衣が風にはためいている。 この風はきっとフミノサクラノリュウさんが起こしているものだ。 だって周りには風が吹いていない。 空は...

SANNI YAKAOO | 2021.07.10 Sat 10:28

勇気のボタン〜永久のサクラ〜 第四話 眠り龍(2)

JUGEMテーマ:自作小説 「なるほどねえ。あの岩に宿ってた龍を探してると。」 友達の白蛇がチロチロ舌を出しながら頷いている。 「けっこう長いことあの岩に宿ってたよね。それがいきなり出ていくっていうのはたしかに変だね。」 眠そうな顔で空を見上げる。 私は身体に付いた泥をブルブルっと振るいながら「あの岩に龍が宿ってること知ってたの?」と尋ねた。 「みんな知ってるよ。知らないのコマチくらいじゃない?」 「ええ!だって友達の誰もそんな話してなかったし。」 「コマチも知ってるもんだと思ってたからじゃ...

SANNI YAKAOO | 2021.07.09 Fri 10:28

勇気のボタン〜永久のサクラ〜 第三話 眠り龍(1)

JUGEMテーマ:自作小説 「ほう、あの龍出て行っちまったのか。」 お父さんが鍬を片手に言う。 畑仕事を中断して、大きな石に座って煙管を咥えた。 「ねえお父さん。このままじゃ修行が出来ない。どうにかしてあの龍を連れ戻さないと。」 さっきの出来事を話すと、渋い顔をしながら煙管に火を点けた。 「まずは見つけないといけない。お父さんならあの龍のこと何か知ってるんじゃない?」 「まあ・・・そりゃ知ってるっちゃ知ってるが・・・・、」 なんだか言いづらそうにしている。 私と目が合うとサっと逸らした。 「...

SANNI YAKAOO | 2021.07.08 Thu 11:59

勇気のボタン〜永久のサクラ〜 第二話 龍の宿る岩(2)

JUGEMテーマ:自作小説 私はタヌキだ。 モフモフした尻尾とモコモコした体毛のタヌキだ。 だから当然お父さんとお母さんもタヌキである。 でも普段は人間の姿で生活してる。 なぜならタヌキは化けるのが得意だから。 でもどのタヌキでも化けられるわけじゃない。 そしてタヌキじゃないからって化けられないわけでもない。 世の中には変わった動物がいて、化けたり人と話したり不思議な術を使ったりする。 そういう動物は霊力を宿していて、そういう動物のことを霊獣って呼ぶ。 私はタヌキの霊獣だ。 霊獣は意外に多くて...

SANNI YAKAOO | 2021.07.07 Wed 15:32

勇気のボタン〜永久のサクラ〜 第一話 龍の宿る岩(1)

JUGEMテーマ:自作小説 私には婚約者がいる。 だけど今は会えない。こことは別の世界で住んでるから。 そして私はまだその世界へ行くことは出来ない。 来年の春、桜が咲く頃までにやり遂げないといけない事があるんだ。 そうしないと彼のいる世界へ戻れない。 だから頑張らないといけない。だって約束したんだから。 来年の春には戻るって。一緒に桜を見ようって。 ぜったいに戻らないと・・・・。 今日も早起きをして、出かける支度をして、いつもの場所へと歩いて向かった。 深い深い山の奥にある大きな岩と、その近...

SANNI YAKAOO | 2021.07.06 Tue 13:27

となえざんまい #03

JUGEMテーマ:自作小説    万華鏡を覗くと必ず酔ってしまう。昔からずっとそうだった。  それは紋様の全体を捉えようとして、逆に紋様に私の全体が捉えられてしまうせいだ。鏡の内に電子雲のように束縛された紋様が、その腹癒せに私を束縛しようとして、それに私は逆らえない。どうして他の人たちはそれに逆らえるのか、私には解らなかった。私は、自身を紋様に束縛させないために揺さぶるしかなかった。紋様を固定しないために私自身の奥底の要を揺さぶるしかなかった。それで、酔ってしまうのだった。それならば...

pale asymmetry | 2021.06.09 Wed 21:59

となえざんまい #02

JUGEMテーマ:自作小説    夜の月面を思わせるくらいに寒い部屋だった。新月の月は空ではなく、ここで冷笑していたのだと思った。  壁際には水晶が並んでいる。碧色の水晶、翠色の水晶、紫色の水晶。全ての壁際にひしめき合うように並んでいたから、部屋が狭く感じる。さらにそれらの水晶たちを着飾るように、金と銀と紅の短冊が天上から賑やかにぶら下げられていて部屋の余白を削り取っていた。エアーコンディショナーの稼働音は耳につくほどだったけれど、水晶はともかく短冊は微塵も揺れていない。どういう仕掛...

pale asymmetry | 2021.05.24 Mon 22:22

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