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Corundum Spirit Demon #03

JUGEMテーマ:自作小説    それが何かと問われれば、勾玉でしょうと私は答えただろう。誰も私に尋ねてはくれなかったのでその言葉を口にすることはなかったけれど、私にはそれは勾玉にしか見えなかった。真円と、そこから伸びる尾のような曲線が先端をやわらかく尖らせている。青と緑が、いや蒼と翠が慈しみ合うように重なった色彩を纏ったそれは、空中を踊るように漂っていた。それは那由他よりは遙かに少なかったけれど、数えきることは出来ないような数。そんな数の勾玉が、私の周りを漂い、私の鼻先で群舞している...

pale asymmetry | 2021.01.29 Fri 22:36

Corundum Spirit Demon #02

JUGEMテーマ:自作小説    私は迷っていた。すっかりと、はっきりと、そしてくっきりと。あの人が言っていた迷う人の意味は結局教えてもらえなかったから、この状況に閉じ込められていることが私が迷う人だからなのかどうかは解らない。けれど今この瞬間迷っていることは認めざるを得ないし、それにそう、私は閉じ込められているのだ。私は迷い閉じ込められている。そういう想いに囚われている。いくつもの枠が私を幾重にも取り囲み、入れ子構造の内に私を取り込んでいる。そんな気がしてならない。この枠は私の内側に...

pale asymmetry | 2021.01.23 Sat 22:18

Corundum Spirit Demon #01

JUGEMテーマ:自作小説    窓辺から斜めに見つめた空は、狡賢いネズミのような灰色だった。ドンヨリと曇っているくせに、どことなく煌めいていたりする。まるで世界の本性をよく知っていて、知った上で知らないふりをしているかのようだ。でも本当は知らないのだ。その演技をしているだけだ。そうやって、ネズミはサヴァイブしているのだろう。そういう狡賢さがなければ、空は蹂躙されてしまうのだろう。人間のような、泥人形と大差ない愚かしい知性体に。眼差しを斜めに下げる。誰もいない中庭の噴水は、止まっている。...

pale asymmetry | 2021.01.21 Thu 22:43

傍若なる水戦は彩色を施し悦に浸る

JUGEMテーマ:自作小説    嫋やかな響きだった。それは中天から降ってきた。ガラスのベルのような音色だとクシナダは感じた。ガラスのベルが綺麗な音色を放ちながら破壊され、永遠に破壊され続けるような響きだと感じた。何度聞いてもそんな風に感じ、砕け散るガラスのイメージが、砕け散る姿のまま停止した時間に閉じ込められるイメージが、彼女に染みこんだ。初めての響き、初めてのイメージ。そうも感じた。それは仕方のないこと。彼女には彼女ではない者が重なっていたのだから。そういう感覚にはもう慣れていた。...

pale asymmetry | 2021.01.16 Sat 22:18

エンジンが勢いを無くして停止

こりゃたまげた、いきなりエンストするとはね。古いわけでもないし、やっぱり暑さにやられたのかな。諦めてロードサービスを呼ぶ。 JUGEMテーマ:自作小説

慎重にすべき発言 | 2021.01.16 Sat 12:50

牢獄の皇女と本来そこに居るはずの将軍 18

その部屋にはその子供以外誰もいなかった。 けたたましい声で泣き喚いている小さな子供の傍に誰もいなかったのだ。 いつもはこんなことはない。 誰かしらが四六時中、入れ代わり立ち代わり見守っている。 その日、偶然、誰もいなかったのだ。 父親は足をとめるつもりも、ましてや部屋に入るつもりも無かった。 ただ、子供は泣いていた。 くすんだ金色、碧い目。 その顔立ちは、自分の妹によく似ている。 自分と同じ顔の妹に。 どうしても自分に似ているとは思いたくない。 息も絶え絶えな赤い髪の子は可愛い。 自分...

SolemnAir | 2021.01.10 Sun 22:43

牢獄の皇女と本来そこに居るはずの将軍 17

「これは、また……つくづくエリザとシャロの娘だねえ」 壁にたたきつけられてけろりとしながらエイザは立ち上がる。 ゆらりとシャザはラズの前に立っていた。 傷が開いて血が滴って。 それでも彼女は床に座り込んだ彼の前に立っていた。 そしてその、先ほどまで男の父親がつかんでいた腕をつかむ。 今度は柔らかい指が、優しく。 「シャザ?傷が――」 一度その床を見てラズがその顔を見上げた時だった。 きいいいいいいいいいいいいいいいい 耳をつんざくような高音が鳴り響く。 誰が彼女の名を呼んだか。 魔法...

SolemnAir | 2021.01.10 Sun 18:59

「とある赤髪の独白」

いいか。 そんなにきれいなもんじゃない。 どろっどろのきったない、触りたくもないようなもんであふれてる。 そんなものから目を背けて、その目にきれいなもんばかり映したって 結局、そのきれいさの尺度は違うテーブルの上だ。 同じようなきれいな水を三個比べる時と 明らかに変色して汚れている水、 透明度はあっても変色している水、 飲めるか微妙な水の三個を比べる時、 「きれいさ」の幅が違うだろ。 別にそれだっていいんだよ。 きれいな水の中でどれがきれいだのこれは不純物が混じってるだの 好きに品評会...

SolemnAir//3LOVERS | 2021.01.09 Sat 19:28

XIII.魔法の杖?

JUGEMテーマ:自作小説     父は珍しいものを集めることが好きだった。 伯爵という立場を存分に利用し欲しいものは全て手に入れた。 異国の装飾品、呪術儀式に使う薬、失われた文明の品々、中には不思議な力を持つ人間など 一人の人間の欲望のためにありとあらゆる形でそれらは掻き集められていった。   そこで用意されたのが“旧街”だ。 もとから郊外のため住む者は疎らだったこの土地はやがて“異民の居住区”となり 実質は“伯爵のコレクション場&rdqu...

魚と紅茶(旧・とかげの日常) | 2021.01.03 Sun 12:00

「暗い喰らい位」

ここは戦場だ。 弱い者は消される。 強者に取り込まれるか取り入るか。 生まれた時からその階級は決まっている。 それはほぼ覆らない。 主神や女神はまさに霞を喰って生きている。 早い話が捕食を必要としない。 ただ強者に弱者が消される時、次の者がどこかに出現するという。 その絶対数は変わらないということだ。 だが、最弱の神が消されたからといって同等の神が出現するわけではない。 それぞれの神域が乱立しぶつかりあうのがこの世界ヒダマリだ。 それはどこかの異世界のように星を持つわけでも他に生き物...

SolemnAir//3LOVERS | 2020.12.31 Thu 21:35

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