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JUGEMテーマ:自作小説 「もう諦めろ。」 岩みたいに大きな亀が眠そうな目で呟く。 ここはいつも修行しているあの山。 相変わらず緑が綺麗で、滝の音は心地いいし、ゆるい風が気持ちいい。 でもそんな美しい景色とは正反対に、サクラ君の心はささくれ立っていた。 「なぜだ!なぜ協力してくれない!?」 人間に化けたサクラ君が必死の形相で詰め寄る。 さっきから何度もお願いしているけど、万年亀さんは「ダメだ」と首を振るばかりだった。 「お前の気持ちは分かるが無理はものは無理だ。もう桜の龍のことは諦めろ。」...
SANNI YAKAOO | 2021.07.24 Sat 10:59
JUGEMテーマ:自作小説 どんなに長く続くモノでも、いつか終わりを迎える。 永遠って言葉にするのは簡単だけど、実際はとても難しい。 だってどんなに完璧にやろうとしたって、いつ予想もしない出来事が起きるか分からない。 最初は小さなほころびから始まって、気づけば大木を倒してしまうほどのトラブルに発展するかもしれないから。 私は藁のベッドに寝たまま、沼の龍から聞いた話をした。 サクラ君は表情を変えずにずっと空を見上げたままだった。 私はまだまだ疲れが回復しないから、喋るのが辛くなって口を閉じた。...
SANNI YAKAOO | 2021.07.23 Fri 12:19
JUGEMテーマ:自作小説 霊獣にとって霊力はなにより大事なものだ。 とくに私みたいに身体の弱い霊獣だと、霊力の消耗は体力の消耗よりずっと疲れる。 いくら内に宿る霊力が大きいからって、ジュースでも飲むみたいにゴクゴク吸われたらたまったものじゃない。 立つどころか意識さえ保てなくなる。 私はしばらく気絶していて、目を覚ましたあともまだ気を失いそうなほどフラフラだった。 そっと胸に手を当てると、地返しの玉の鼓動が伝わってくる。 どうやらまだ私の中にあるみたいだ。けどもう霊力を吸われている感じはし...
SANNI YAKAOO | 2021.07.22 Thu 11:28
JUGEMテーマ:自作小説 疲れてる時っていうのは布団に入った瞬間に夢に落ちてしまう。 昨日はずっと緊張と不安に包まれていたから、布団に横になるなり眠ってしまった。 身体はすごくダルいし、心も重いし。 昨日は本当に大変だった。よく無事に帰ってこられたなって思う。 お母さんの言う通り、私とサクラ君だけじゃこうはいなかったかもしれない。 沼の龍が手を貸してくれたから、どうにかこうにか無事でいられたんだ。 ・・・・疲れと安堵のせいで、私は泥みたいに眠っていた。 そして夢を見た。夢とは思えないほど鮮...
SANNI YAKAOO | 2021.07.21 Wed 11:25
JUGEMテーマ:自作小説 家に戻って来たのは夜が明ける少し前のことだった。 遠い空がじょじょに青く染まっていく。 とても気持ちの良い朝けだけど、私の家の前では修羅場が起きていた。 「もうやめて!」 人間に化けたお父さんの背中にしがみつき、グイっと引っ張った。 なぜならお父さんは怒り狂っているからだ。 石みたいな拳には血管が浮いていて、しがみついた身体は岩みたいなゴッツイ筋肉で硬くなっている。 そんなお父さんの目の前にはサクラ君がいて、顔にたくさんの痣を作っていた。 鼻血は出てるし口も切れて...
SANNI YAKAOO | 2021.07.20 Tue 11:41
JUGEMテーマ:自作小説 目の前に木屑が散らばっている。 盛り土みたいに小さな山になっていて、風が吹くとパラパラと流れていく。 サクラ君は木屑を掬い、懐かしむように匂いを嗅いでいる。 私は空を見上げ、さっきまでここに立っていた桜の木を思い浮かべた。 《外へ出た瞬間、ジェンガみたいにボロボロ崩れちゃった。もうほんとに限界だったんだ・・・・。》 どうして桜の龍が自分から死を選んだのか? その理由を沼の龍から聞いていたから、土に還ることが出来てほんとによかったと思ってる。 寿命のない龍だからこそ...
SANNI YAKAOO | 2021.07.18 Sun 13:45
JUGEMテーマ:自作小説 時間を掛けて悩んだらあとは行動あるのみ。 悩んで行動したから後悔しないなんて思ってるわけじゃないけど、こうだと決めたら歩き出さないといけない。 「やっぱり綺麗。」 私は戻ってきた。あの桜の中に。神秘的で幻想的な景色の中に。 三つの山、その間を流れる二つの川、目に見える全てを包む満開の桜と、真っ白に輝く空。 ここが天国ですよって言われたら信じるかもしれない。 それくらいに綺麗な景色だ。 でもこれは遠い昔に消えてしまった幻だ。 それを生み出してるのは・・・・、 「霧の...
SANNI YAKAOO | 2021.07.17 Sat 11:32
JUGEMテーマ:自作小説 よく悩むだけ時間の無駄なんて言うけど、私はそんなことないと思ってる。 悩んでも仕方のないことならともかく、ちゃんとした悩みはちゃんと時間を掛けて悩んだ方がいい。 そうじゃないと「ああしておけば」とか「こうしておけば」とか後悔するからだ。 生きる道はなかなか後戻りが出来ないから、道が二つに分かれていたら立ち尽くすのはおかしいことじゃない。 私は膝を抱えたまま、泥水の川の傍で座り込んでいた。 「サクラ君・・・・助けに行った方がいいのかな。」 自分の中で答えは決まってい...
SANNI YAKAOO | 2021.07.16 Fri 11:22
JUGEMテーマ:自作小説 一度あることは二度ある。 もう関わりたくないと思っていた龍の揉め事にまた巻き込まれる羽目になった。 こんなことなら山に行くんじゃなかった・・・・。 けど今さら悔やんでも遅い。 サクラ君にさらわれて、見たことのない場所まで連れて来られてしまった。 そこはどんな場所かっていうと、大きな山が三つ並んでいて、その隙間を二つの川が流れている。 民家や畑や田んぼはまったくなくて、霊獣どころか動物の気配さえほとんどない。 なんだか変わった場所だけど、一番の特徴は『桜』だ。 「綺...
SANNI YAKAOO | 2021.07.15 Thu 11:35
JUGEMテーマ:自作小説 一人で待つ時間ほど長いものはない。 誰もいない家でお父さんとお母さんの帰りを待つのは気が重かった。 だから山へ行った。 私一人じゃ修行は出来ない。けど家にいても落ち着かない。 ミズチちゃんは『怖いから隠れとく』といって、蛇に戻って石垣に引っ込んでいった。 他の数少ない友達は離れた場所に住んでいて、こんな状況だと会いに行くのも億劫になる。 となると気の紛れる場所はあの山しかなかった。 トンビに化けて風に乗り、あっという間に大きな岩までやって来た。 岩の傍に降りた私は...
SANNI YAKAOO | 2021.07.14 Wed 11:00
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