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瑞穂が目を覚ましたとき、伊豆はもう隣にいなかった。瑞穂は慌てて着替えを済ますと、下へ降りて伊豆の姿を探す。そこへやってきた柿本が瑞穂に声を掛けてきた。 「よお、起きたか」 「おはようございます。あの、航…、伊豆は?」 「ああ、奴なら裏で草刈りしてくれてる。暑くなる前にって、えらく早く起きてきたが、さっさと終わらせて遊びに行きたいんだろう」 そう言って、日に焼けて深い皺の入った仏頂面を、少し緩ませた。 「ちょうど良い。あんた裏行って奴を呼んできてくれ、朝飯にしよう...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.07.16 Tue 12:27
夏休みに入って最初の月曜日。 早朝、瑞穂は家の近くの公園へと急いでいた。今日から3日間、伊豆と旅行に出かける。家族には電車で行くと言ってあるので、家の前まで来てもらうわけには行かない。伊豆が公園までバイクで迎えに来てくれることになっていた。 まだ日が昇って間もない公園の空気は、少し湿り気を帯びた冷たい靄が薄く広がっていて、気持ちがいい。公園の反対側の藤棚の下、伊豆がバイクを停めて、ベンチに腰かけて待っていた。瑞穂はちらりと時計を見た。まだ約束の時間の15分前だ。待ちきれずに早く...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.07.15 Mon 14:43
「あら、今帰り?」 午後9時過ぎ、仕事を終えた梶原が通用門を出ると、そこに相原が立っていた。 今し方降り出した雨に、ちょうど傘を広げているところだった。そろそろ朝晩が冷え込み始める季節だ。冷たい雨に湿った空気が頬をなでる。 「あーあ、降ってきたか」 傘を持ってない梶原は、真っ黒な空を見上げて呟いた。 「入ってけば? けっこう大きいの、この傘」 いつもの鞄に加えて、大きな紙袋を抱えた相原が大き目の水色の傘を差しかける。梶原は、差しにくそうしている傘を持...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.07.14 Sun 21:56
「航平」 放課後、いつものようにバイクを停めてある路地に向かう途中、瑞穂が前を歩く伊豆を呼び止めた。言おう言おうと思いながらもなかなか切り出せずにいた瑞穂だが、明日からはもう期末試験に入ってしまう。ここで成績が下がったり、帰りが遅かったりしたら、旅行にいくことを許して貰えなくなるかもしれない。 振り向いた伊豆に、覚悟を決めて切り出す。 「試験が終わるまでは、早めに家に帰るようにするよ。この頃ずっと帰りが遅かったから、お父さん怒ってて…。夏休みの旅行、許してくれなくな...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.07.14 Sun 20:21
「ふん。渋谷に来んのに、いちいちおまえらの許可がいんのかよ…。ざけんな!」 伊豆はそばにあった灰皿スタンドを、彼らに向かって蹴り倒した。 「てめえっ!」 彼らの一人が殴りかかってきたのを、伊豆は避けながらも男の襟首を掴んで、その男の腹に思い切り膝を突き上げた。つぶされた蛙のようなくぐもった声を漏らして、崩れ落ちたところを、蹴り飛ばす。 伊豆の容赦のない殴打に怯んだのか、彼らは仲間が自分たちの方へ転がってきてもなお、動けずにいた。 だが数では自分たちの方が勝ってい...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.07.14 Sun 20:17
登場人物プロフィールはこちら 主人公東郷の邸宅 私が毒を盛られた事件は、刑事事件ではなく、裁判を起こす場合は民事訴訟扱いとなった。 つまり私が、被害を被ったと毒を盛った相手に損害賠償請求しない限り、保証も何も発生しない。 私個人が、どうやって犯人を探し出せるというのだ? テレビ放送中の出来事であり、視聴者やファンの間でも憶測を呼び、ネットでもこの怪事件でもちきりだった。 しかし、不思議とテレビや新聞で...
大人のためのBL物語 | 2019.07.14 Sun 15:54
「瑞穂さん、お帰りなさい。お夕食は?」 午後九時を過ぎて帰宅した瑞穂に、華名子はいつもと変わらない様子で声を掛ける。この何日間か夕食の時間に間に合わない日が続いていた。瑞穂の帰りは日に日に遅くなりつつあった。 自分の部屋へ上がろうと、そっと居間の横の廊下を通っていた瑞穂は、仕方なく立ち止まった。 「ごめんなさい。遅くなって…」 「そうね。お腹すいたでしょう? 食べていらしたの?」 「ううん」 華名子は置いてある瑞穂の夕食の用意をしにダイニングへ向かいながら、言...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.07.14 Sun 10:19
次の日、瑞穂が学校へ行くと、珍しく伊豆はもう席についていた。 教室に入ってきた瑞穂に、クラスメイトが近寄ってくる。休んでいた自分のことを心配してくれていた級友に答えながらも、瑞穂は早く、伊豆の近くに行きたかった。伊豆の前の自分の席に。ようやく自分の席にたどり着いた瑞穂は、伊豆に声を掛ける。 「おはよう」 「…おはよう」 ぶすっとした表情のまま、瑞穂の方を見もしないで、それでも伊豆は小さく答えた。 その日、授業をサボることもなく伊豆はずっと瑞穂の後ろに座っていた。相変わらず...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.07.13 Sat 19:42
次の日、瑞穂が学校へ行くと、珍しく伊豆はもう席についていた。 教室に入ってきた瑞穂に、クラスメイトが近寄ってくる。休んでいた自分のことを心配してくれていた級友に答えながらも、瑞穂は早く、伊豆の近くに行きたかった。伊豆の前の自分の席に。ようやく自分の席にたどり着いた瑞穂は、伊豆に声を掛ける。 「おはよう」 「…おはよう」 ぶすっとした表情のまま、瑞穂の方を見もしないで、それでも伊豆は小さく答えた。 その日、授業をサボることもなく伊豆はずっと瑞穂の後ろに座っていた。...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.07.13 Sat 19:38
「瑞穂さん?」 朝、いつもの時間になっても起きてこない瑞穂の部屋のドアを、華名子がノックする。返事はなかった。瑞穂はいつも、起こさずとも時間になれば身支度を整えて下のダイニングに降りてくる。華名子は、そっとドアを開けた。 「瑞穂さん、どうかした? 具合でも悪いの?」 まだベッドに横たわったままの瑞穂の顔は蒼く、唇の端が切れて赤く腫れていた。 「瑞穂さん! どうしたの、いったい」 驚いて駆け寄る華名子の声に、瑞穂が目を開ける。 「お母さん…。ごめん、大丈夫だから...
サバクノバラトウミノホシ。 | 2019.07.12 Fri 12:46
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