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「設楽。俺と、結婚してくれ。一生傍にいてくれ。 愛しているんだ」 設楽の目に、見る間に分厚い涙の膜が張った。 「俺で良いの?」 「お前が良いんだ」 「俺はガキでストーカーで、人の気持ちを思いやることもできなうような奴なのに?」 「俺は、お前が良いんだ。お前は?俺はお前を安心させてやれるだけの甲斐性もねぇし、融通は利かないし、2人で風呂に入るのもいやがるような男だぞ?そんな俺でも、一生傍にいてくれるか?」 大竹の優しい声。設楽は涙を飛び散らしながら、大竹の胸に抱きついた。 「...
真昼の月 | 2019.05.22 Wed 08:02
「おい、腹は減ってな……」 その言葉は、最後まで口にすることはできなかった。 設楽に抱きつかれたのだ。 「うわっ、おい、設楽?」 設楽は大竹の肩口に顔を埋め、ぎゅっと大竹の背中を抱きしめている。設楽の体は、微かに熱い。 そんな設楽の背中を、大竹はぽんぽんと叩いた。 「設楽?どうした?」 「分かんな……」 「そうか」 まだ開いたままのドアの向こうから様子を見ていた是枝が、「部屋に行くなら、後で食事を届けようか?」と声をかけてくれた。大竹はそんな是枝...
真昼の月 | 2019.05.21 Tue 08:11
「もう告げてあるのかい?」 「薄々察している、という位です。告げさせてくれない、という感じですね。俺のいない所で設楽はご両親と色々やり合っているようなんですが……」 「難しいのかい?」 「ええ…。なかなか、手強い人達なんですよ」 大竹の困ったような顔に、是枝も同じような困った顔で応じた。 「男女の結婚でも年の差がそれだけあれば難しいこともあるだろうに、それでも君は智一君と筋を通して一緒になるつもりなんだね?私達のような関係には、まだ婚姻届はないけれど……君...
真昼の月 | 2019.05.20 Mon 08:03
「年の離れた弟……同い年だろう?」 「ええ。でも、啓介はそのくらい、純粋でしたよ。俺にも覚えがありますが……心の傷は、その傷の周りだけは、傷を受けた段階で時が止まってしまって、そこから動けなくなるんです。……啓介は、まさにそんな感じでした」 「……なるほど。それで、弟か……」 是枝は口の中で小さく呟いた。 「ええ。今でも、そう思ってしまう時があります」 大竹がわざとニヤリと笑うと、是枝も「それじゃあお兄ちゃんとしては、...
真昼の月 | 2019.05.19 Sun 08:02
「……君が、智一君と付き合うようになるまで、君の『友人』は啓介だけだった。そこまでして離れたくないと思う友人だ。……それでも、友人だった……?」 是枝の目が、射貫くように大竹を見つめている。 大竹に焦がれていた啓介を好きになったと言っていながら、是枝の目は、きつい。 ああ、そうか。それなのか。設楽も、きっと……。 「……そうなんですね……」 「なんだい?」 1人で納得している大竹に、是枝が少しだけ苛立った...
真昼の月 | 2019.05.18 Sat 08:03
大竹が昨日買い込んでいたチーズやブラックチョコレートを皿に盛って来ると、是枝は礼を言ってチョコを1つ摘まんだ。 「やっぱりMr.の息子さんだね。あの人も、酒を飲む時にチョコを摘まむだろう?」 「ああ……そうですね。普段あまりワインを飲まないので、つい。ワインと相性が合うチョコを揃えるのが難しいと、身内のソムリエに言われたことがあるんですが……」 「いや、この位重い赤には合うだろう。ふふ、君らしい」 是枝は楽しそうに笑うと、もう1つチョコを口に入れた。 「相...
真昼の月 | 2019.05.17 Fri 08:25
◇◇◇ ◇◇◇ ダイニングキッチンに入ると、是枝が1人でなにやらごそごそと物色していた。 「是枝さん、どうしました?」 「ああ、何か飲もうと思ってね。君も何か飲むかい?」 「ええ、お願いします」 是枝は軽く頷くと、まだお昼を過ぎたばかりだというのに、ワインのボトルを取り出してグラスに注いだ。 「設楽君は落ち着いたかい?」 「……どうでしょう。今は一応、ベッドで横になっていますが」 「ははは、うちの啓介と同じだな」 是枝は笑って大竹にグラスを差し出した。 「&hell...
真昼の月 | 2019.05.16 Thu 08:04
あの人が押し殺してきた感情を、押し殺してきた全ての日々を、踏みにじった人がいるというのなら、それは慎也の筈がない。 宮嶋さんが慎也に対して行ったことは、暴力だ。無理矢理に体を拓き、自分の欲望を押しつけて傷つける。誰の目にもそれは暴力だと映るだろう。 でも、それなら宮嶋さんの心を踏みにじった俺の行為は……? 宮嶋さんが心の奥底に封じ込めてきた物を無理矢理拓き、暴こうとするその行為は……!? 「落ち着け、設楽!そうじゃない!お前の恐怖も、嫉妬も、お前が俺を...
真昼の月 | 2019.05.15 Wed 08:02
2人が消えていった部屋のドアを見て是枝は……是枝は小さく溜息をつくと、軽く頭を振って、愛する人の傍らに腰を下ろした。 「啓介。よく、頑張ったね」 是枝はそう言って、宮嶋の肩を抱き寄せた。 この4年間、宮嶋は謝ることを許されずにここまで来た。それでも大竹は今まで通り、何事もなかったように宮島に接してきた。 まるで、罪などなかったように。 ……それが、どれだけ宮嶋を苦しめてきただろう。 「よく頑張った。啓介、よく頑張ったね」 「…&helli...
真昼の月 | 2019.05.14 Tue 08:01
あの時。 あの時、宮嶋は設楽に謝罪することはなかった。 謝罪する間もなかったし、設楽自身がそれを許さなかった。 でも今、宮嶋は子供のように泣きじゃくりながら、何度も何度も設楽へ謝罪をし続けている。 足の震えが止まらない。 この人を許せない気持ちは、今も変わらない。きっと、一生この人を許すことなどできない。 それなのに、設楽は自分の震える体をどうして良いのか分からなくなった。 この男を、ここで許してやることなんかできないと……でも…… お...
真昼の月 | 2019.05.13 Mon 08:05
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