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「ごめん、設楽君。ごめん、慎也」 うっすらと涙の浮かんだ瞳はしっかりと設楽を捉え、それから大竹に向かった。 「どう謝っても、俺のしたことは消えないけど、でも、謝らせて欲しいんだ。本当に、申し訳ないことをして、ごめん……」 宮嶋の震える頬を見て、設楽はそのまま視線を大竹に移し、それからもう1度宮嶋を見た。 「……俺は一生、あのことは許せないし、許さない」 「っ!」 設楽の固い声に、宮嶋の肩がビクリと震えた。 だって、アレは慎也の人間性を踏...
真昼の月 | 2019.05.28 Tue 08:03
「慎也君が智一君のご両親にご挨拶に伺うと言っていただろう?それに刺激された……という訳ではないんだけど、僕たちも式を挙げようかと思っているんだ」 「え?」 その台詞に誰より驚いた顔をしたのは、宮嶋だった。 式?式だって?確かにさっき結婚しようとは言われたけれど、でも式なんて聞いてないぞ……? 「ちょ…待って下さい、斎和さん。そんな事、さっき言わなかったじゃないですか」 「でも結婚しようって言っただろう?海外で小さな式を挙げようか。2人だけでも良いんだ...
真昼の月 | 2019.05.27 Mon 08:01
◇◇◇ ◇◇◇ 2人で絡まり合うように横になって、大竹と設楽は名前のつけられない気持ちに充たされていた。気持ちを重ねた幸福感。今ここにお互いがいるという充足感。初めて洞窟から出てきた後のような、眩しさも感じる。 だが、きゅうと小さな音が鳴って、その空気がどこかにするすると逃げてしまう。2人はそっと目を見合わせた。 「ごめん、おなか減った」 可愛らしく設楽が首を竦めると、大竹は笑い出しそうに目を細めた。 「朝も昼も食ってないもんな。下行くか?」 設楽はその提案に一瞬だけ考えるよ...
真昼の月 | 2019.05.26 Sun 08:06
慎也が好きだった。好きで、好きで、好きで、でも、慎也に嫌われたくなくて。親にも愛されなかった自分が誰かに愛される筈なんかなくて、もしも慎也に好きだと言ったら慎也も俺から離れてしまうと思っていた。もしも慎也に拒絶されたら、今度こそ自分は生きていられない。そう思った。 それでも、傍にいたかった。慎也の傍にいたかった。だって、慎也は初めて自分でも人を好きになれると教えてくれた人だから。 そうしてその執着や独占欲がこじれてこじれて、彼を────『慎也』を奪われたと思った。 ただの恋ならば、...
真昼の月 | 2019.05.25 Sat 08:16
「斎和さん……」 「君が長い間僕に言うことができなかったというのなら、僕が察しなければいけなかったんだ。すまなかったね」 「違います!!俺は…っ!」 ぎゅっと、是枝のシャツを握る。その手を、是枝がゆっくりと握りしめた。 「ふふ」 「……斎和さん?」 小さく笑った是枝を、宮嶋は怪訝そうに見つめた。 何故、ここで急に笑うのか。今のこの話題で? 「さっき、慎也君と話をしたんだ」 「……ええ」 是枝は、楽しそうに笑いながらそう言った。 そ...
真昼の月 | 2019.05.24 Fri 08:19
◇◇◇ ◇◇◇ 部屋に戻ると、宮嶋はベッドの上に座ってぼんやりとしていた。目元が腫れている。さっき是枝が部屋を出た時には布団の中でじっとしていたから、眠ってしまったかと思っていたのだが、ひょっとしたらずっと泣いていたのだろうか。 是枝が部屋に入っても無反応だった宮嶋だが、是枝が隣に座るなり、くにゃりと力が抜けたように、是枝の肩にもたれかかってきた。 「大丈夫かい?」 「……ええ」 「そう」 良かった、と言いながら、是枝は宮嶋の肩を抱いた。 「ふふ…&hellip...
真昼の月 | 2019.05.23 Thu 08:03
「設楽。俺と、結婚してくれ。一生傍にいてくれ。 愛しているんだ」 設楽の目に、見る間に分厚い涙の膜が張った。 「俺で良いの?」 「お前が良いんだ」 「俺はガキでストーカーで、人の気持ちを思いやることもできなうような奴なのに?」 「俺は、お前が良いんだ。お前は?俺はお前を安心させてやれるだけの甲斐性もねぇし、融通は利かないし、2人で風呂に入るのもいやがるような男だぞ?そんな俺でも、一生傍にいてくれるか?」 大竹の優しい声。設楽は涙を飛び散らしながら、大竹の胸に抱きついた。 「...
真昼の月 | 2019.05.22 Wed 08:02
「おい、腹は減ってな……」 その言葉は、最後まで口にすることはできなかった。 設楽に抱きつかれたのだ。 「うわっ、おい、設楽?」 設楽は大竹の肩口に顔を埋め、ぎゅっと大竹の背中を抱きしめている。設楽の体は、微かに熱い。 そんな設楽の背中を、大竹はぽんぽんと叩いた。 「設楽?どうした?」 「分かんな……」 「そうか」 まだ開いたままのドアの向こうから様子を見ていた是枝が、「部屋に行くなら、後で食事を届けようか?」と声をかけてくれた。大竹はそんな是枝...
真昼の月 | 2019.05.21 Tue 08:11
「もう告げてあるのかい?」 「薄々察している、という位です。告げさせてくれない、という感じですね。俺のいない所で設楽はご両親と色々やり合っているようなんですが……」 「難しいのかい?」 「ええ…。なかなか、手強い人達なんですよ」 大竹の困ったような顔に、是枝も同じような困った顔で応じた。 「男女の結婚でも年の差がそれだけあれば難しいこともあるだろうに、それでも君は智一君と筋を通して一緒になるつもりなんだね?私達のような関係には、まだ婚姻届はないけれど……君...
真昼の月 | 2019.05.20 Mon 08:03
「年の離れた弟……同い年だろう?」 「ええ。でも、啓介はそのくらい、純粋でしたよ。俺にも覚えがありますが……心の傷は、その傷の周りだけは、傷を受けた段階で時が止まってしまって、そこから動けなくなるんです。……啓介は、まさにそんな感じでした」 「……なるほど。それで、弟か……」 是枝は口の中で小さく呟いた。 「ええ。今でも、そう思ってしまう時があります」 大竹がわざとニヤリと笑うと、是枝も「それじゃあお兄ちゃんとしては、...
真昼の月 | 2019.05.19 Sun 08:02
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