[pear_error: message="Success" code=0 mode=return level=notice prefix="" info=""]
「……君が、智一君と付き合うようになるまで、君の『友人』は啓介だけだった。そこまでして離れたくないと思う友人だ。……それでも、友人だった……?」 是枝の目が、射貫くように大竹を見つめている。 大竹に焦がれていた啓介を好きになったと言っていながら、是枝の目は、きつい。 ああ、そうか。それなのか。設楽も、きっと……。 「……そうなんですね……」 「なんだい?」 1人で納得している大竹に、是枝が少しだけ苛立った...
真昼の月 | 2019.05.18 Sat 08:03
大竹が昨日買い込んでいたチーズやブラックチョコレートを皿に盛って来ると、是枝は礼を言ってチョコを1つ摘まんだ。 「やっぱりMr.の息子さんだね。あの人も、酒を飲む時にチョコを摘まむだろう?」 「ああ……そうですね。普段あまりワインを飲まないので、つい。ワインと相性が合うチョコを揃えるのが難しいと、身内のソムリエに言われたことがあるんですが……」 「いや、この位重い赤には合うだろう。ふふ、君らしい」 是枝は楽しそうに笑うと、もう1つチョコを口に入れた。 「相...
真昼の月 | 2019.05.17 Fri 08:25
◇◇◇ ◇◇◇ ダイニングキッチンに入ると、是枝が1人でなにやらごそごそと物色していた。 「是枝さん、どうしました?」 「ああ、何か飲もうと思ってね。君も何か飲むかい?」 「ええ、お願いします」 是枝は軽く頷くと、まだお昼を過ぎたばかりだというのに、ワインのボトルを取り出してグラスに注いだ。 「設楽君は落ち着いたかい?」 「……どうでしょう。今は一応、ベッドで横になっていますが」 「ははは、うちの啓介と同じだな」 是枝は笑って大竹にグラスを差し出した。 「&hell...
真昼の月 | 2019.05.16 Thu 08:04
あの人が押し殺してきた感情を、押し殺してきた全ての日々を、踏みにじった人がいるというのなら、それは慎也の筈がない。 宮嶋さんが慎也に対して行ったことは、暴力だ。無理矢理に体を拓き、自分の欲望を押しつけて傷つける。誰の目にもそれは暴力だと映るだろう。 でも、それなら宮嶋さんの心を踏みにじった俺の行為は……? 宮嶋さんが心の奥底に封じ込めてきた物を無理矢理拓き、暴こうとするその行為は……!? 「落ち着け、設楽!そうじゃない!お前の恐怖も、嫉妬も、お前が俺を...
真昼の月 | 2019.05.15 Wed 08:02
2人が消えていった部屋のドアを見て是枝は……是枝は小さく溜息をつくと、軽く頭を振って、愛する人の傍らに腰を下ろした。 「啓介。よく、頑張ったね」 是枝はそう言って、宮嶋の肩を抱き寄せた。 この4年間、宮嶋は謝ることを許されずにここまで来た。それでも大竹は今まで通り、何事もなかったように宮島に接してきた。 まるで、罪などなかったように。 ……それが、どれだけ宮嶋を苦しめてきただろう。 「よく頑張った。啓介、よく頑張ったね」 「…&helli...
真昼の月 | 2019.05.14 Tue 08:01
あの時。 あの時、宮嶋は設楽に謝罪することはなかった。 謝罪する間もなかったし、設楽自身がそれを許さなかった。 でも今、宮嶋は子供のように泣きじゃくりながら、何度も何度も設楽へ謝罪をし続けている。 足の震えが止まらない。 この人を許せない気持ちは、今も変わらない。きっと、一生この人を許すことなどできない。 それなのに、設楽は自分の震える体をどうして良いのか分からなくなった。 この男を、ここで許してやることなんかできないと……でも…… お...
真昼の月 | 2019.05.13 Mon 08:05
登場人物プロフィールはこちら 主人公東郷の邸宅 マネージャーの楠本氏に黙って出て来てしまった結を、ドイツの私の家からパリの結の自宅へ車で送った。 片道4時間計8時間の見送りになるので、結は遠慮したが、お互いその分一緒にいられるので結局そうした。 国境でパスポートを見せるわけではないし、日本で言えば、違う県に行って帰って来るようなものだ。 結のアパルトマンの駐車場に車を停め、結のシートベルトを外してやる...
大人のためのBL物語 | 2019.05.12 Sun 09:17
「それに、俺達のせいで苦しんでいる設楽の傷を、どうやったら癒やせるのか、俺には分からなかった。設楽がその事実を無かったことにしたいんなら、そうした方が良いのかと思っていた。……それでお前が苦しむことになったとしても、俺には設楽の心を守る方が大事だったから。……すまなかった」 宮嶋は激しく首を振った。 「何で…っ!俺にそんな風に謝るなっ!俺が……俺がお前にあんなひどいことをしたのに……!慎也、ずっと設楽君の名前を呼んでたんだぞ。&hellip...
真昼の月 | 2019.05.12 Sun 08:03
「ごめんね。ここの壁は思っていたより薄いみたいで、君達の声が結構聞こえてきたんだよ。……一昨日は良かったんだ。慎也君が設楽君を抱いていた一昨日なら。でも昨日、立場が逆であるのに、2人が一昨日と変わらずに、情熱的に愛し合っている声を聞いて……。文句を言い合っていても、君達の声には何の鬱屈も無かった。羨ましいくらい仲睦まじかったよ。その声を聞いて、啓介が言ったんだ。『これが慎也のセックスだというのなら、あの夜はセックスですらなかったんだ』って。……それから、ず...
真昼の月 | 2019.05.11 Sat 08:02
「啓介はまだですか?」 「ああ……慎也君、起こしてきてくれるかな」 そう言った是枝は、顔に笑顔を貼りつけたまま、目で何かを告げてきた。 「……え?ああ、分かりました」 そのままダイニングから出て行こうとすると、設楽が「俺が行こうか?」と尋ねてきたが、「いや、いい。お前は昼飯よろしく」とドアに手を掛ける。 重い体を引きずって階段を上がろうとすると、ギシリと音がした。階段を見上げると、宮嶋が強張った顔で降りてくるところだった。 その顔は俯いて、青白く見え...
真昼の月 | 2019.05.10 Fri 08:08
全1000件中 601 - 610 件表示 (61/100 ページ)