[pear_error: message="Success" code=0 mode=return level=notice prefix="" info=""]

JUGEMテーマ:ものがたり 鋭利な陽光が空気を切り裂いて、野原を照らしていた。野原を埋め尽くすあの花は彼岸花だろうか。野原の真ん中を通り抜ける細道を、列を成して進んでいく人たちがいる。皆黒い服装だった。あれは振り袖だ。でも真っ黒だから喪服なのだろうか。頭は皆朱色だ。朱色の角隠しを被っている。ずいぶんと大きな角隠しを目深に被っているので、その人たちの相貌はよく見えない。覗き見える唇、角隠しと同じ艶やかな朱色の唇から、その人たちは女の人なのだろうと思えた。若く、でももうおぼこではな...
pale asymmetry | 2020.08.13 Thu 21:35
JUGEMテーマ:ものがたり 竜巻は、海上を南から北へと移動していた。その移動はとてもスローに見えたけれど、多分実際はそうではないだろう。比較する対象がないためにそう見えているだけだろう。例えば私が並走しようとしても、すぐに置いてきぼりにされるはずだ。そう推測させるアグレッシブさをその竜巻は放っていた。私に対しても、誰に対しても。 竜巻に巻き込まれ、少女たちが宙を舞う。もちろんそんなはずはない。私が少女たちだと思った物体は、全て花だった。色とりどりの花が、花弁を撒き散らしなが...
pale asymmetry | 2020.08.09 Sun 21:47
JUGEMテーマ:ものがたり 純鉄製のサイが、十三両の客車を引いて夜空を走っていた。線路は見えない。もちろんトンネルも。星々はそれぞれが知性を競うように瞬いていた。その判定を下すのは誰だろう。僕ではない。僕はただ、その星々に少しでも近しいと思える知性を有していることを願っているだけだ。それを証明するためには語らなければいけないだろうけど、誰に向けて語ればいいのか解らず、ただ先頭の客車の窓から顔を出して夜を感じていた。 何か、そういうことがあったような気がする。知性を証明するた...
pale asymmetry | 2020.08.06 Thu 21:27
JUGEMテーマ:ものがたり それは世界樹だったかもしれない。あるいは宇宙樹だったかもしれない。この二つの大樹を同じものだと、私は思ってはいない。どちらの方がよりスケールが大きいのか、より知性に溢れているのか、より煉獄に根を伸ばしているのか、それは知らない。そういうことの比較によって二つを分けているわけでは、私はないのだ。ではどうやって二つの大樹のそれぞれを定義しているのかと問われれば、それはもう困ってしまいます、と答えるしかない。言語は今はまだ、過去の躍動の説明しか出来ない。け...
pale asymmetry | 2020.08.03 Mon 20:22
JUGEMテーマ:ものがたり 巨大な狼だった。巨大すぎたから、本当は狼ではないのかもしれない。けれどその姿は、私には狼にしか見えなかった。脚の長さだけで三メートルくらいはあっただろう。かなり遠くから、その姿を確認することが出来た。ゆるやかに波打つ砂の地面を、強すぎる陽光に激しく揺らぐ空気を擦り抜けるように、その狼はゆっくりと軽やかに歩いている。最初、砂漠を歩きすぎて幻を見ているのではないだろうかと思った。暑さのせいで、私の頭のネジが何本か緩み知らぬ間に落ちているのではないかと思っ...
pale asymmetry | 2020.08.01 Sat 21:52
JUGEMテーマ:ものがたり ステーションに足を踏み入れると、寒かった。思わず自身を抱きしめてしまうほど寒かった。簡素な細長い空間は何にも満たされてはいない。あえて言うならば、そこは純粋な空虚で満たされていたかもしれない。そうであったとしても、それは僕の空虚ではない。このステーションの空虚でもないだろう。たぶんまだ存在しない来世の僕の抱える空虚なのかもしれない。それくらい洗練された空虚だと感じたのだ。 その空間には二枚の扉、それを成立させるための四枚の壁、さらにそれを成立させ...
pale asymmetry | 2020.07.31 Fri 21:41
JUGEMテーマ:ものがたり 僕はそのミニブタにピートという名前をつけた。僕の知らない異境への扉を見つけてくれそうな気がしたから。そんな眼差しをしていたのだ。そんな眼差しで僕を見つめていたのだ。ある意味それは間違ってはいなかったのだということを後に僕は知ることになるのだけれど、ただピートが見つけた扉を僕がくぐり抜けることは出来なかった。 出会ったとき、ピートは六キログラムの子豚だった。白と黒のブチ模様で、好奇心旺盛で、食欲も旺盛で、だらかよく食べてよく遊ぶ子だった。ハーネスを...
pale asymmetry | 2020.07.30 Thu 21:40
JUGEMテーマ:ものがたり 河が涸れた。雨が少なかったというわけでもないのに。ある朝、いつの間にか涸れていることに早起きの誰かが気づいたのだ。夏の朝、日の出と共に鋭利な陽光が降り注ぐ河底が、一直線に煌めいていたことに。その河底には、真ん中にクリスタルが打ち込まれていた。普段は水の流れがそれを隠していたけれど、水がすっかりなくなってそれが現れたのだ。道だった。それは道だった。シャシが疾走するときの道を示す標だった。 河が涸れたのは、シャシが疾走するからだ。この街の誰もが、その...
pale asymmetry | 2020.07.25 Sat 21:38
JUGEMテーマ:ものがたり 「黒い怪獣を見に行こう」 トウヤに誘われたので、学校帰りについて行った。二時間ほど電車に乗って知らない駅で降りたけど、私が日常で歩き回っている風景とそんなに変わらない風景が広がっていた。きっと私はありふれた街で、ありふれた日常を過ごしているのだろう。ありふれた高校生で、消えても世界には何の支障もないのだろう。とそんなことを考えさせられる風景だった。それをそのままトウヤに言った。 「ああ、まあ誰でもそうじゃない」 トウヤは軽く返し、なぜかはにか...
pale asymmetry | 2020.07.21 Tue 21:18
JUGEMテーマ:ものがたり 日が中天に達する頃、兵衛は日課の素振りをする。小さな庭の真ん中で、千回ほど。この季節には汗が噴き出るので、上半身をはだけ、一心に刀を振る。千回振ると手ぬぐいで汗を拭い、呼吸を整えてから庭に面した縁側に横たわる。そのまましばらく昼寝をする。それも兵衛の日課だった。つまるところ、彼には職がなかったのだ。だから暇だったのだ。どこかで揉め事があれば仲裁したり、誰かの喧嘩の助太刀をしたり、商人の集金の用心棒をしたりして、日銭を稼いでいた。 微睡みの中で兵衛...
pale asymmetry | 2020.07.14 Tue 22:22
全1000件中 481 - 490 件表示 (49/100 ページ)