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JUGEMテーマ:ものがたり 極星は流れて落ち、夜は要を失う。秩序の全てが崩れ落ちてしまったわけではないけれど、空に敷き詰められていた透明なラインは曖昧に縺れ、賑やかな無意味が意気揚々と踊っている。玉座からそれを見上げる王はとても愉快な気分になって、狂喜乱舞しそうになったりもしたが、そんなことに熱中すれば腹が減りそうだったので、ただそういう気持ちを自身の体内で遊ばせるだけで、実際にはだらしなく玉座に身体を預けていた。 「この先、流星の雨が激しく降るでしょう」 視界の斜め下方...
pale asymmetry | 2020.03.22 Sun 22:07
JUGEMテーマ:ものがたり 仮面をつけた、十二の眼を持つフクロウが私を導く。洞穴の奥深くへと。光はどこからも届いていない。けれど私を取り囲む岩肌は全て仄かな白緑色に光っていた。内蔵のようだった。巨大なゾウガメの内臓のような感じがした。そのゾウガメはきっと四十六億年前から生きていて、彼の住処とするためにこの惑星が生み出されたのだろう。そのゾウガメを愛でていた超高次元の存在によって。そういう者の存在を意味する記号がこの惑星の各地にあると言うけれど、私は全て嘘だと思っている。そういう...
pale asymmetry | 2020.03.21 Sat 21:16
JUGEMテーマ:ものがたり 金色の衣装を身に纏い、金色の冠をかぶり、妹は風の隙間を転がるように踊る。 「あっしは、主様のために踊りたいのさ」 強い決意を表面に出すことなく、軽やかな口調で妹が微笑んだのは今朝のこと。 「だって主様は、水底でたったの一人で、大層退屈されているでしょう」 衣装を着せられ、化粧を施されているときも、妹はすでに主のことばかりを考えていたのだろう。 「あっしは、主様に少しでも歓んで頂きたいのさ」 そう言うと、上目遣いに僕を睨む。でも一瞬後...
pale asymmetry | 2020.03.17 Tue 22:28
JUGEMテーマ:ものがたり 主は八年に一度閏の年に川を遡る。普段は川から三里も離れた湖の底にいるのに、八年に一度突然川面に姿を現すのだ。どうやって川まで移動しているのかを知るものはいない。空を飛んだり陸を歩いたりしている姿を目にした者はいないから、恐らく湖と川は地面の下で繋がっているのだろうと言われている。何のために主は川を遡るのか。それは穢れを祓うためなのだそうだ。湖の底にずっといると、淀みが体表に纏わり付き、それが主の成長を妨げるのだという。つまり、主は今なお成長しているの...
pale asymmetry | 2020.03.16 Mon 21:44
JUGEMテーマ:ものがたり 一辺が三十センチくらいのアクリルケースの内部で、独楽は回っている。テーブルの真ん中に置かれた、立方体の空間の真ん中で、独楽は回り続けている。それは空間の正確な真ん中だったから、つまりその独楽は空間に浮かび上がって回っていたのだった。紫色の独楽だった。それは魂の色が紫色だったからだ。独楽として留まったこの魂がという意味ではなく、魂というのは大抵紫の色彩を纏っているものなのだ。高貴な紫色を。 その独楽の紫は、少しだけくすんでいた。その回転の速度も、少...
pale asymmetry | 2020.03.15 Sun 21:40
JUGEMテーマ:ものがたり 雨が降り出した。控えめな雨だったけれど、粒は大きかった。だから少し魅力的な雨に思えた。ドンヨリと曇った空には色がない。色のない空に向かって、壁はどこまでも聳えていた。雨は透明だったけれど、その魅力的な雰囲気が、陰鬱な空に色を添えているように思えた。透明な色を。透明だから色なんてないはずなのに。もちろん印象だ。妄想に近い印象。そんな印象を抱いてしまうのは、夜明けからずっと壁を登り続けているせいだろうか。気がつけば、周囲は薄暗くなり始めている。ランチを食...
pale asymmetry | 2020.03.12 Thu 21:19
JUGEMテーマ:ものがたり 倍率三十倍のルーペ眼鏡をかけて、私は手元のロケットを覗き込む。それがどこからやってきたのかを私は知らない。この惑星の外側からやってきたことは確かだけれど、それが最も近い恒星系からなのか、それとも銀河の中心からなのか、あるいは別の銀河からなのか、もしかしたら別の平行世界からなのか、何にしても私には知りようがない。ただの墓泥棒の私には。 墓泥棒と言っても、私は司法機関に追われているわけではない。国家公認の組織の下請けとして墓を暴いているのだから。それ...
pale asymmetry | 2020.03.08 Sun 21:35
JUGEMテーマ:ものがたり 片羽のない蝶は痛みを抱えていた。それは千切れた羽の傷口に宿る痛みではない。片羽を失ったことによる、底のない不安が身体の内側をガリガリと削る痛みだった。その痛みは、何故か強い眠気を蝶にもたらす。だから蝶は常に、自分が何の途中にいるのか解らなくなっていた。実は途中などではなくとっくに到達しているのかもしれなかったが、それも解らなかった。残された片羽で蝶は宙をもがき、そこに渦を巻く世界の吐息を掴み取ろうとしていたけれど、フワフワとした思考の中で痛みだけが跳...
pale asymmetry | 2020.03.07 Sat 20:34
JUGEMテーマ:ものがたり 移動遊園地の明かりが消えたら、それは祭りの終わりの合図だ。遊園地で時を忘れていた人たちも、サーカスのテントで現を忘れていた人たちも、皆街の広場に集まる。ぞろぞろと歩くその姿は死人のようにも見えるけれど、実際には蘇った者たちと表現する方が正確だろう。この祭りにおいては。長い冬を眠り続けた人たちが、その終わりの扉、春へと繋がる扉を開くためにこの祭りはあるのだから。私もまたその一人。気怠い身体を引きずるように、回転木馬にまたがった一人。氾濫する色彩に溺れな...
pale asymmetry | 2020.02.27 Thu 22:08
JUGEMテーマ:ものがたり 数日、暖かな日が続いた。東からの風が雲を吹き払い、澄んだ青空に陽光が溢れる日が。それは夜も同じで、満天の星たちがはしゃぐように瞬いた。そんな昼と夜が、雨水の翌日から続いた。雲のない冬の夜には大地の熱が際限なく昇天するそうで、連日朝の冷え込みだけは厳しかった。それでも空の向こうの世界を身近に感じるような晴天の早朝に、縁側で朝食を取ることが愉しくて、私はたっぷりと着込んで毎朝縁側に出た。 その日もいつものように縁側に出ると、庭の真ん中に奇妙なものが居...
pale asymmetry | 2020.02.24 Mon 21:08
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