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JUGEMテーマ:ショート・ショート 左腕のデジタルが、午前3時30分を表示していた。それを見て、僕はさりげなく店内を見回した。バーガーショップの2Fには僕を含めて6人の客がいたけれど、左腕にデジタル数字を有しているのは僕だけだった。きっと皆、時刻はスマートフォンのELディスプレイで知るのだろう。たった一人の例外は隣に座る彼女で、右腕にデジタル数字を有している。本当にいつでも、どんな条件でカテゴライズしても、彼女という人は少しだけ歪んでいたりする。美しい歪みだと思えるけれど。 「私たち...
pale asymmetry | 2019.03.28 Thu 20:15
JUGEMテーマ:ショート・ショート 時空が走ってる。きらめいてよろめいた。 何度でも、何度でも繰り返す。繰り返す。 走って、回って、つまづいて、ころげた。 ああ、君はア・ポステリオリに美しい。そして、ア・ポステリオリに醜悪だ! この惨めな気持ちをどう表現すればいいのだろう! 赤い犬が吠えている。それはきっと愚かな夢想のあとで我に帰るあの感覚と同じだ。 プラトン的なイデア。それは無意識の壁となり、我々に立ち塞がる。乗り越える術はあるのか? 時空はいまも走っている。回っ...
ねじまき鳥よ、おれの幸運を願え | 2019.03.21 Thu 18:04
JUGEMテーマ:ショート・ショート 目覚めると、巨人の国にいた。部屋のベッドで午睡していたはずなのに、いつの間にか壮麗な宮殿の豪華な椅子に腰掛けていた。私の身体では、あちこちに余りがある大きな椅子に。周りには巨人が数人立っている。甲冑のようなものを身につけている。皆私に背を向けていたので顔つきは解らなかったけど、身長は3メートル以上はあるように見えた。手には彼らの身長より長い槍のようなものを持っている。そして目に見える全のもの、建物の様子やそこにある調度品も全て、3メートルの...
pale asymmetry | 2019.03.09 Sat 20:58
JUGEMテーマ:ショート・ショート 遅いランチを食べていると、貴方からのパケットがポケットに届く。今この世界に、パケットの遣り取りが出来ない場所がどのくらいあるのだろうか。ないような気がする。よく考えてみても、まったくないような気がする。深く考えてみると、この世界の外側とも遣り取りが出来るような気さえする。私は毒されているだろうか。掌にのるこのデバイスに。 『おはよう。今、ジョウハニスバーグ。五つ星ホテルの寝心地は最高だったよ』 ジョウハニスバーグは朝なのだろう。貴方が違...
pale asymmetry | 2019.03.01 Fri 21:33
JUGEMテーマ:ショート・ショート 書店を出たら雨だった。今朝の天気予報で雨の一日になるといっていたから、特に驚きはない。一瞬店内に戻ろうかとも考えたけれど、ここで雨を観察するのもいいかと思い直し、書店を起点に裾を広げる風景を眺める。本当は、濡れて帰るつもりだった。だから傘を持ってこなかった。本を買うつもりがなかったから。でも買ってしまった。ハードカバーの結構な値段の本を。何故だろう。さっきまで気持ちよく晴れていたせいだろうか。世界が僕を欺こうとしているのかも、と思ってしまった...
pale asymmetry | 2019.02.15 Fri 20:34
JUGEMテーマ:ショート・ショート 突然雨が降り出した。いや、突然という表現は間違っているかも。今朝の天気予報では、今日は一日雨だと言っていたのだ。けれど午前中、風景の何処にも雨の要素はなく、この後に雨が訪れそうな気配も感じられなかった。それでも私は出かけるときに傘を手にした。自分の感覚よりも天気予報を信用して。そういう自分のことを私は好きだったし、そういう自分のことを私は嫌いでもあった。 雨の中を私は歩く。そろりそろりと。雨は人差し指を立てて息を潜めるよう私に促している。...
pale asymmetry | 2019.02.14 Thu 20:44
JUGEMテーマ:ショート・ショート コインランドリーの入口で傘を畳もうとしたときトウコさんを見つけた。そして一瞬躊躇してしまった。傘を畳むことを、コインランドリーに入ることを、呼吸を鼓動を。トウコさんが苦手というわけではない。職場以外で同僚と出会うことが、誰であれ苦手なのだ。トウコさんはベンチに座ってラップトップを見つめている。彼女の足下で、小さなロボットがノロノロと歩いている。ドラム缶に手足がついたような、二足歩行型のトイロボットだった。 「おはよう」 トウコさんが顔を...
pale asymmetry | 2019.02.08 Fri 20:07
JUGEMテーマ:ショート・ショート 海水浴なんてどうだろう、真冬だからこそ。と彼が言うので私たちはモスクワの海に出かけることにした。ビーチチェアを二つ並べて、私たちはだらしなく横たわる。サングラスをかけて、甘ったるいカクテルを脇の小さなテーブルに用意してみたり。さすがに水着にはならない。真冬だし、空気だってないし。いやちょっとはあるのかな。その辺りはよく知らない。重力もかなり弱かったはず。ウサギみたいに軽やかに跳べるくらいに。 その辺りのことは何とかしよう、僕が鬼...
pale asymmetry | 2019.01.09 Wed 21:36
JUGEMテーマ:ショート・ショート メモには、『貴婦人のボンネットのような花』と記されていた。 何度読み返しても、何故こんなメモを残したのか全く思い出せない。そこには合わせて日付も記録されていて、約二ヶ月前の日付だった。記憶を手繰ってみる。二ヶ月前に何か普段とは違う出来事に出会っただろうか。そんなことはなかったはずだ。出不精の私は、日常では決まった範囲のなかをうろうろする生活を送っている。職場、コンビニ、書店、たまにショッピングモール。全て家から三十分以内のエリアにある。旅...
pale asymmetry | 2019.01.01 Tue 20:48
JUGEMテーマ:ショート・ショート 少年が撮ったのは、ナナホシテントウだった。彼のスニーカーの、お気に入りの緑のスニーカーの、白い靴紐の上に止まっていたナナホシテントウだった。真昼の角張った陽光を受けてナナホシテントウはてかり、世界がそこに吸い込まれそうだと少年は感じた。 少年はその画像をSNSに投稿した。『世界の循環点』とタイトルをつけて。それは見えない空中の路地にばら撒かれ、世界中に散乱され、たくさんの人たちに蹴飛ばされ踏みつけられた。 それを拾い上げた少女もいる。 ...
pale asymmetry | 2018.12.31 Mon 20:49
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