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掌編。超短編。など、名前は様々。
一瞬を切り取って、読んでくれる人に届けたい。
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Long story

JUGEMテーマ:ショート・ショート    海沿いの国道を走行していた。強い陽光が防風林の切れ目切れ目に見える海を激しく煌めかせている。未知の妖精の群が盛大に踊っているようだった。光は余りにも強すぎて、空は銀色にしか見えない。風景の端々はハレーションしていて、世界の境界は危うくなっているように思えた。油断していると、いつの間にか異邦に迷い込んでしまいそうな気もした。「シーコンディションは西も東もクリア。本日の最高気温は91°F」とラジオのDJが曲の合間に告げる。このインフォメーションはこ...

pale asymmetry | 2019.05.19 Sun 19:44

貴方がTならば、私はU

JUGEMテーマ:ショート・ショート   「貴方がチミンなら、私はウラシルなの」  休日の早朝、ベランダに二つハンモックを並べた。ベランダはハンモックを上手く吊せるような構造にはなっていないので、ハンモックスタンドを使って。南からのゆるい風がベランダを抜けていく。その風は温く湿っていたけれど、早朝の空気は全体としてややひんやりとしていた。だからハンモックに包み込まれるのは、気持ちよかった。僕らはハンモックを揺すって、互いの身体を小突き合ったりしていた。 「貴方がチミンなら、私はウラ...

pale asymmetry | 2019.05.18 Sat 21:43

Loneliness and lies

JUGEMテーマ:ショート・ショート   「こうして、何度も嘘をついて生きた少年は、誰にも信じてもらえずに狼に食べられてしまいました」 「それで、死んじゃったの?」 「いや、少年は彼を食べた狼と一つになりました」 「じゃあその一つは、少年なの? 狼なの?」 「それはどちらでもあります。少年でもあり、狼でもあります」 「見た目はどんな感じ?」 「姿はほとんど狼です。でも、瞳だけは少年のものでした。コバルトブルーの瞳でした」 「コバルトブルーってどんな色?」 「空と宇宙がく...

pale asymmetry | 2019.05.04 Sat 20:50

beyond…

JUGEMテーマ:ショート・ショート    怯える獣の背を、私は撫で続けた。激しい雨が壁を叩く。爆撃が吹き飛ばした破片が降り注いでいるようだ。時折、稲光が瞬き次の瞬間に地面から震えが突き上がる。真夜中の稲光は、恐ろしかったが美しかった。美しかったからこそ、恐ろしかった。獣からの強い熱を掌に感じながらも、私は掠われそうな気分だった。この夜をこんな風にしてしまった誰かに。  獣は、雨の音や雷光雷音に怯えているわけではない。彼は自分から放たれた怒気が、この夜を蹂躙していることを解ってい...

pale asymmetry | 2019.05.01 Wed 21:46

あじさいに擬態する微睡み

JUGEMテーマ:ショート・ショート    紫というよりはピンクに近い色をした紫陽花だった。一面に広がる紫陽花畑の全ての花が、そのピンク一色だった。偏りの一切ない土壌が、ここで裾を広げているのだろう。その地面には、紫陽花の装飾花を単調に染め上げたいと願う何者かの意思が染み込んでいるように思えたりした。どことなく、ディストピアを空想させるような意思が。  紫陽花畑の真ん中で、紫陽花に埋もれるように女の子が一人横たわっていた。ノースリーブのワンピースを着ていて、顕わな白い両腕は胸の上に回...

pale asymmetry | 2019.04.26 Fri 22:07

SECHS1★短篇小説〜女同士1。

  SEHCSハウスのリビングで、珍しく女の子4人が集まっている。   「んー、のんびりできる休日っていいわよね〜」   栗色のウェーブした髪を広げたレディアはリビングの一番大きなソファに寝転んで、 黒猫のクロを撫でている。   「ふふ、みなさんいつもお忙しそうですものね」 ラベンダー色の髪をふわっとゆらし、アリアは微笑んだ。   「そうだよね。ホント忙しすぎて全然相手してくれないもの」 黒髪ショートの女の子、あずみはすんと鼻を鳴らした。...

チームSECHS! | 2019.04.15 Mon 11:27

Swiss roll with strawberry

JUGEMテーマ:ショート・ショート    街は嵐だったから、ドライブは少しアドベンチャーな気分だった。海沿いの道路で、海からの風が斜めに雨を打ち付けるから、私の小さな四駆はサブマリンのようだった。海に張り出して建つ極彩色のカフェが深海の稀少なサンゴのように思えた。  空は黒と灰色の斑で審判の日のような感じだったけれど、私はその色が好きだった。そこから落ちてくる雨も好きだった。それらは、巨大すぎて捕らえられない存在の眼差しを具現化したもののように思えたから。 「どうして皆、名前を欲...

pale asymmetry | 2019.04.14 Sun 20:38

アラクネ★短篇小説1〜月夜。

      あの子はどこかのお姫様? それとも伯爵令嬢? それは誰もしりません。   真夜中の舞踏会。 少し、お辞儀した彼女は、 桃色のおさげを揺らし、くるくると舞う。 彼女に見惚れた王子様達は、次々に彼女の元へ。 「名前は?何て言うんだい?」   小さな口を少し開き、羽のような軽やかな声が漏れる。 「アラクネ・サンダーヴィッヒ」 王子様達は、アラクネと次々に口にします。 アラクネは、そんな王子様達を見てにこりと微笑み...

チームSECHS! | 2019.04.09 Tue 06:50

Knock down and be knocked down

JUGEMテーマ:ショート・ショート    左腕のデジタルが、午前3時30分を表示していた。それを見て、僕はさりげなく店内を見回した。バーガーショップの2Fには僕を含めて6人の客がいたけれど、左腕にデジタル数字を有しているのは僕だけだった。きっと皆、時刻はスマートフォンのELディスプレイで知るのだろう。たった一人の例外は隣に座る彼女で、右腕にデジタル数字を有している。本当にいつでも、どんな条件でカテゴライズしても、彼女という人は少しだけ歪んでいたりする。美しい歪みだと思えるけれど。 「私たち...

pale asymmetry | 2019.03.28 Thu 20:15

空想:木曜日の午後

JUGEMテーマ:ショート・ショート   時空が走ってる。きらめいてよろめいた。 何度でも、何度でも繰り返す。繰り返す。 走って、回って、つまづいて、ころげた。 ああ、君はア・ポステリオリに美しい。そして、ア・ポステリオリに醜悪だ! この惨めな気持ちをどう表現すればいいのだろう! 赤い犬が吠えている。それはきっと愚かな夢想のあとで我に帰るあの感覚と同じだ。 プラトン的なイデア。それは無意識の壁となり、我々に立ち塞がる。乗り越える術はあるのか? 時空はいまも走っている。回っ...

ねじまき鳥よ、おれの幸運を願え | 2019.03.21 Thu 18:04

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