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JUGEMテーマ:ショート・ショート 「カプセルなんだよね」 「カプセル?」 「そう、カプセル・トイのカプセルみたいにちょっとずんぐりしたカプセル。それに短い脚と長い腕がくっついてるんだ」 「ふーん」 「カプセルは鮮やかな黄色で、手と足だけが白なんだ。足はそうでもないけど、手はとても大きい。その比率がね」 「カプセルとのってこと?」 「そう、カプセルの感じと比べて。それが群れを成して行進するんだ」 「ああ、群れなんだ。行進なんてできるの? 脳内なんだよね?」 「まあ...
pale asymmetry | 2019.10.29 Tue 21:45
JUGEMテーマ:ショート・ショート 防潮堤の上に、少女はだらりんと腰掛け前髪を切っている。小さな鏡を覗き込み、精密時計を組み立てるように。その時計の精密さは太古から受け継がれてきた英知によるもので、それが何層にも重なって進化したもので、けれど少女はそんなことを知らなくて、そして知らなくて当然だ。嘘だから。 少し髪を切り、少女は空を見上げる。また少し髪を切り、空を見つめる。空の青を、前髪の形の手本にするように。形のないものを、形に写し取っているかのように。その青を、少女は甘い...
pale asymmetry | 2019.10.21 Mon 21:02
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「花とはね、流れる者なんだよ」 私をじっと見つめ、キャンバスをじっと見つめ、それを繰り返しながら先生がぽつりと言った。独り言のように。あるいは空気や温度と話すように。あるいは神みたいな不確かな何かと話すように。私は十字架にビニールテープで縛り付けられていて、何もしゃべらないようにと先生に言われていたので、その言葉の意味を問うことも賛同することも否定することもしなかった。共感することさえ。衣服を身に着けていなかったので、私はただ寒さだけを感じ...
pale asymmetry | 2019.10.10 Thu 21:45
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「それでも、私たちは行かなければいけないのね」 「そう。気が遠くなるほど、長い道のりだけどね」 「地図もなしに?」 「地図はあるんだ。けれど、それを読み取ることが出来ない」 「未知の言語で書かれているの?」 「言語も、記号も、その他の何もかもも、全てが未知だ。だから僕たちには、その地図はとても綺麗な紋様にしか見えない」 「それはそれで愉しいわね」 「もちろん愉しいね。役には立たないけれど」 「そうかしら。綺麗な紋様は私たちの気持...
pale asymmetry | 2019.10.09 Wed 22:33
JUGEMテーマ:ショート・ショート 北東からの風がとても気持ち良かったので、僕と彼女は荷物を抱えて近くの公園に出かけた。海を見下ろせる丘にある公園は、一際心地よい乾いた涼風が駆け抜けていた。僕たちは夏にビーチで使ったリクライニングチェアを並べて、間にビールの詰まったクーラーボックスを置いてみたりして、風とのバランスが絶妙な陽光を浴びながら、午後の時間をぐうたらと漂うことにしたのだった。といってもチェアに寝そべると、僕らはすぐに本を開いていた。 「ねえ」 どれくらいの時間が...
pale asymmetry | 2019.10.07 Mon 20:39
JUGEMテーマ:ショート・ショート 指輪がない指輪がないと彼女が騒ぐ。ここは高層ビルの屋上で、真ん中に大きなソファーが置かれていて、それは従順に飼いならされたサイのようで、でもそのサイは実は驚異的な戦闘能力を秘めていて、でもそれを自身が信じる神様に捧げるために封印していたりする。そんなソファーに僕は横たわっていて、宇宙にかなり近づいている気分を味わいながら、本当はその気分をゆらゆらと拡散させながら、つまりは意識の半分ともう少しくらい微睡んでいたのだった。 屋上にはそのサイの...
pale asymmetry | 2019.10.04 Fri 21:03
JUGEMテーマ:ショート・ショート 左の奥歯が痛み出したので、近所の歯科医院に行った。たぶん虫歯なのだろうと思って。診察台に横たわり、歯科医師に口中を診てもらう。内臓を見せているようで、少し恥ずかしい。内臓は、着飾ることもメイクすることも出来ないから。あるいは、脳回路を閲覧されているような気さえしてしまう。思考の全てを制御できるわけではないから、私のくだらない妄想を読み取られているように思えて、微妙な気持ちになる。そんなわけはないのにそう思ってしまうと、気恥ずかしさと同時に少し...
pale asymmetry | 2019.09.30 Mon 22:02
JUGEMテーマ:ショート・ショート 窓辺のソファーで眠っていた私の頬に誰かが爪を立てる。台風一過の風に吹かれながら心地良く眠っていたのに、その爪がそれを妨害する。誰の爪かは解っていたので、私は目を閉じたままその身体を抱き寄せる。彼は一度だけ私に艶艶の毛を擦りつけ、すぐに私の腕を擦り抜けて床に飛び降りた。音もなく、空気を揺らすこともなく。たぶん彼は床に姿勢良く座り、私を見つめているはずだ。そのどんな事象も裏側まで見抜く眼差しで。仕方なく私は目を開けて、上体を起こす。小さな溜息を一...
pale asymmetry | 2019.09.09 Mon 20:09
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「私、どうやら竜になってしまったようです」 いつの間にかエアコンが切られていて、部屋の全ての窓が全開になっていて、湿った暑い風が通り抜けていて、彼女が裸で僕の隣に横たわっている。僕らはベッドの上にいて、午後の日差しは鋭く狡猾で、部屋はハレーションに侵略されている。 「日本画のモノクロームな感じじゃなくて、西洋的なというかギャラクシーな感じのドラゴンです」 宇宙空間を飛翔する竜をイメージしてみる。どうもアンバランスな感じがしたけれど、彼...
pale asymmetry | 2019.09.01 Sun 21:27
『プリンセス・ティレイサ』1はこちら。 『プリンセス・ティレイサ』2はこちら。 『プリンセス・ティレイサ』3はこちら。 『プリンセス・ティレイサ』4はこちら。 『プリンセス・ティレイサ』5はこちら。 『プリンセス・ティレイサ』6はこちら。 プリンセス・ティレイサのイラストはこちら。 &...
チームSECHS! | 2019.09.01 Sun 12:31
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