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JUGEMテーマ:ショート・ショート 母の実家に出掛けた。そこには母の兄とその家族、つまりは叔父一家が暮らしているのだけれど、今朝から家族で海外旅行中だ。祖父一人を残して。留守番と祖父の面倒を母が頼まれたのだけど、彼女は今夜用事があるらしい。それで一夜だけ、私が祖父と過ごすことになった。夏休み中の大学生である私は誰よりも暇だったし、魅力的な額の報酬にもつられて引き受けたのだった。 玄関先にバイクを止めて家に入ろうとすると、庭に面した縁側に祖父が腰掛けているのが見えた...
pale asymmetry | 2019.08.28 Wed 22:16
JUGEMテーマ:ショート・ショート かわいい魔物が外にいるから、冒険に出かけよう。と君が誘うから、私たちは手を繋いで町に出る。蟠る空気が心地いい。朝と呼ぶには気が早すぎて、夜と呼ぶには過ぎ去りすぎて、東の空にはオリオンが上る時刻。サソリはどこだろう。もう逃げ切ったのか。あどけない冬が、秋色の真夏に声を殺して笑っている。 宙返りの途中で停止して魅了する猫の月。風は静穏、世界は平穏。私たちの冒険は起伏なく過ぎて行く。まあ、冒険という名の散歩だから当然だね。とても小さな冒険が、ハ...
pale asymmetry | 2019.08.27 Tue 21:17
JUGEMテーマ:ショート・ショート 玄関で靴を履こうとすると、靴紐の上にアシナガバチが止まっていた。危ない危ない。そっと、靴を揺らさないように持ち上げ、慎重に玄関扉を開けて、外で靴を揺する。アシナガバチはすぐさま飛び立ち、玄関扉から我が家に戻ろうとするので、慌てて扉を閉めた。それでもしばらくの間、アシナガバチは何度も玄関扉にアタックして我が家に侵入したいという意思を示していたけど、やがて諦めるように飛び去っていった。やれやれ、私はやっと靴を履いて仕事に出かけた。 翌日、靴を...
pale asymmetry | 2019.08.25 Sun 21:26
JUGEMテーマ:ショート・ショート クラゲのような雲が遠くに見えて、その下では激しい雨が降っているのが解った。 「あの雨、こっちに来るかな?」 ハイジがぽつりと言う。独り言みたいに言う。でも独り言じゃない。僕らは独り言なんて言わない。スマホがあるから、一人になることなんてないから。 「来るんじゃない。風がこっちに吹いてるから」 ハヤタが答える。他人事みたいに。他人事なのだろう。雨になんて興味ないだろうから。でも答えるんだ。これはコミュニケーションじゃなくて、カンバセ...
pale asymmetry | 2019.08.01 Thu 20:29
JUGEMテーマ:ショート・ショート 〈注意〉 18歳未満の方は大人の方と相談の上お読みください この物語はすべてフィクションです 日常に潜む幽かな影。 ちょっとした恐怖と大いなる幻想。 魅惑のスリラー・ストーリーに。ようこそ。 『白い指』 白い指を見詰める。美しいそれは。ゆっくりとした動作で日常を描く。 例えばとあるバーの片隅。 その白い指は、淡いブルーのカクテルグラスを傾けている。そしてときおり枝付きのレーズンを。 &nbs...
The Blog of Azuma | 2019.08.01 Thu 09:03
JUGEMテーマ:ショート・ショート 大樹の根元に、紫水晶の原石が包み込まれている。大樹の幹が紫水晶を抱き締めるように包み込んでいる。おそらく先に紫水晶の原石があり、あとからそれを抱くように大樹が成長したのだろう。どうしてそうなってしまったのだろう。大樹は愛おしそうに水晶を抱き、水晶は抱かれて心地よさそうに見えた。 「この大樹は、何という木なのかしら?」 彼女が大樹の枝葉を見上げる。枝葉は雲のように僕たちに厚く被さり、南国の鋭利な日差しを蹴散らしてくれている。 「菩提樹じ...
pale asymmetry | 2019.07.24 Wed 21:13
JUGEMテーマ:ショート・ショート 僕はでかいテレビジョンを背負っていて、彼女はそれを見つめている。 「不快だわ、すごく」 呟いて彼女は舌打ちする。 「何が?」 僕にはテレビジョンが見えないから、彼女が何に舌打ちしたのか解らない。彼女の不快の原因を、本当は知りたいと思っているわけではないけれど、尋ねなければさらに彼女は不快になるはずで、尋ねないわけにはいかなかった。 「AとBが、Cという問題で争っているわ。Cは社会的に忌むべき問題で、だからAもBもマスメディアに攻められ...
pale asymmetry | 2019.07.20 Sat 20:46
JUGEMテーマ:ショート・ショート レイトショーのムービーを見た後、川沿いの遊歩道を歩いて帰る。ひっそりと這う川沿いの、くねくねとした可愛い遊歩道を。夜は程よく湿っていて、十六夜の月が艶めかしく薄雲にしなだれている。"I love you"な夜空に思えた。 「そのナイフは世界に向けないで」 遊歩道の途中で女の子が歌っている。小さな身体で大きなアコギをガシャガシャとかき鳴らしながら。 「そのナイフは誰にも向けないで どうしても何かを切り裂きたいなら あなたの心臓に突き立てて...
pale asymmetry | 2019.07.19 Fri 20:41
すがすがしい、朝。 梅雨の季節の合間に見る、晴れ間。 少しの雲がゆっくりと空を流れている。 子供達はもう夏の装いで、外で元気に遊んでいる。 待ち合わせの時間。 ふと、1人の少年は今日の遊び相手の事を思った。 少年――聖架は、少し気が早やっている。 梅雨独特の蒸し暑さも相まって、少し顔も汗ばみ始めた。 相手はいつも学校で顔を見ている相手だ。 その子の笑顔を思うだけで、自然と胸が高鳴った。...
チームSECHS! | 2019.07.14 Sun 14:27
JUGEMテーマ:ショート・ショート 改札の向こう側で、君は小さく手を振ったね。君は笑っていたっけ。それは寂しそうな笑顔にも見えたし、愉しそうな笑顔にも見えたし、桃源郷を噛みしめているような笑顔にも見えたよ。そういう夢を見たんだ。いや、そういう記憶を浮かび上がらせる夢を見たんだ。君に何かあったかも、なんて一瞬思ったけれど、きっと気のせいだね。そんなことが伝わってくるほどに、君と僕の繋がりはもう今は確かなものではないはずだから。 この改札の記憶が時々蘇るのは、これがきっと不可思...
pale asymmetry | 2019.07.09 Tue 22:06
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