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ざわざわとした感覚が、脳内に充満している。 質の悪い望遠鏡を覗いているかのように、視界は回りが黒く欠け、ぼやけて安定しない。 気を抜いたら、何も見えなくなってしまうだろう。集中が途切れないよう、頭全体が熱くなるくらい脳みそをフル稼働させて、意識を張り詰めた。 「ルーモ」 ふと隣から、聞きなれた声が、自分の名を呼んだ。それが本当に隣から聞こえたのか、それとも現場で発せられた情報が、接続を通じ、脳に直接送られてきたのかは、判然としない。 「おい、大丈夫か?」 目の前に映し出されたのは、...
白亜同盟 BLOG版 | 2012.11.30 Fri 23:29
「……結局、当時政府のトップに多く存在していたスロールが、五十年前、この星を間違った戦争に導いた。少なくとも、その原因の一端は確実にそこにあった。当時は誰も、そういうスロールに対して、何も言えなかったからな。だから身分の差や区別は無くそうって話になった。自然な流れだ」 「身分の差、というのがまず、間違っている。スロールとレグナートは違う。確かに身体的にはレグナートより劣るかもしれないが、それ以外に関しては、レグナートがスロールに勝る点がどれだけある? そもそも、当時の政府にはレグナートもいたは...
白亜同盟 BLOG版 | 2012.11.26 Mon 00:09
気付けば太陽は、完全に夜の闇に落ち、辺りは暗い青に染まっていた。 動物の気配もなく、ただしっとりとした静寂が、崖壁の狭間に満ちている。 ケヴィットの炊いた小型ストーブの火が広場の中央でちりちりと燃え、その火を挟むように距離を置いて地面に座るケヴィットとフィニィを、夜と光の境に照らし出していた。 「――生まれは?」 ふいに発せられたケヴィットの問いに、フィニィは訝しげに眉を顰める。 「お前さんの、出身地」 そう補足すると、いよいよその眉間に、深く皺が刻まれる。 「そんなこと、訊いてどう...
白亜同盟 BLOG版 | 2012.11.26 Mon 00:07
ミクローシュ・フィニィ。 その名を知らない者は、この星にはもう存在しないだろう。 この星では、三年前にスロールの集団が決起し、自分たちの人種の復権を求め、主にレグナートが主権を握る政府に対しての、反抗運動を開始した。 彼らは一般のレグナート市民も巻き込んだ大規模なテロ、通称グレンツェンド・ナハトを引き起こし、以降スロール対レグナートという図式で、内戦状態が続いている。 スロール集団は、自らをエティール解放軍と称し、その数は数千に及ぶものであった。 だが、はるか昔より戦いの使命を持...
白亜同盟 BLOG版 | 2012.11.26 Mon 00:05
リヴレフの配達は、空を飛んで行われることがままある。ハングライド・モビールと呼ばれる、巨大な双翼を背負うような形の飛行用機体を用いて、だ。ケヴィットも実際、さっきまではそれを使ってこの上空を飛んでいた。 飛行中、その下(現在地から見れば上だが)の地上では、戦闘が起きていた。 数百体の遠隔操縦型(モード・ギニョル)のオランピアと、近接操縦型(モード・アルム)オランピアを操る一人の操縦士(コッペリウス)の戦いだった。 数だけを見れば、前者の圧倒的優位を想像するだろうが、実際にはその逆で、...
白亜同盟 BLOG版 | 2012.11.25 Sun 23:38
ぼんやりと空を見上げて、彼は小さくため息をついた。 灰色に染まった世界の中央が縦に避け、そこから水色をした中身が覗いているような、そんな景色が広がっていた。 実際には、両脇にそびえる崖壁の狭間から、亀裂のように空が見えているだけなのだが。 太陽の逆光によって影になった白い崖は、彼と同じくらいの身長の人間が二十人肩車をしたところで、頂上に手は届かないだろう。それくらい、高い。 日の光は崖下の地までは届かず、崖の影によって、辺りは冷え冷えとした空気が漂っていた。 「さてと」 ただこの...
白亜同盟 BLOG版 | 2012.11.21 Wed 17:29
夢を見ているようだった。 瞑想、昏迷。意識は曖昧で、それでいて鋭敏に研ぎ澄まされている。音、匂い、空気――彼を取り巻くあらゆるものが体を包み込んでいるように感じ、まるで温い海水の中にいるようだ、と思った。 両手両足首に枷のように巻きついた、黒く艶やかな機体の熱を感じながら、彼はほとんど習慣的に、右耳の下に手をやる。きちんと『接続』が為されているかを 確認するためだ。脳に到達するように、そこに手術でもって設けられた小さな接続用穴(アウトレット)には、右下腕に巻いた制御盤から伸びるコードのプ...
白亜同盟 BLOG版 | 2012.11.19 Mon 21:47
――オランピアって言うものはつまり、空の人形なのさ。 そう言うことを、ことも無げに言ってしまえるのが、ミクローシュ・フィニィという男だった。 まるでそれが息をするよりも簡単なことだとでも言うように、得意げな顔で、神経質に揃えられたその人種特有の白銀髪をしゃらりと揺らし、オランピアをいとも簡単に、自由自在に操って見せた。 ミクローシュ・フィニィという男は、いわゆる特権階級の家柄の出で、生まれた時からエリート街道に乗っかっていたような男だった。 そして、その特権とやらを、彼は最大限行使していた。...
白亜同盟 BLOG版 | 2012.11.17 Sat 15:25
JUGEMテーマ:オリジナルファンタジー Fifth day その日、快眠ができず複雑な思いを抱いたまま彼は起き上がる。昨日のことをひきずっていた。それほどにショックを受けたのは、彼と30(サン)だけ。教室には皆がいるであろう楽しそうな会話や足音が聞こえていた。それが妙におかしな感覚を呼び起こす。なぜ、ここまできて“平和“というものが存在するのか。 彼がいるのは荷物置き場のような小部屋だった。ここで彼はいつも寝起きしている。彼はとりあえず皆のもとに行こうと思い、支度を整える。「シェルター、起きてますか...
朽ち逝きる、最期の棲み処 | 2012.10.23 Tue 21:30
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