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JUGEMテーマ:オリジナルファンタジー もたれていた鉄枠から離れると、途端、エヴィンは少しふらついた。 額を、おさえる。 熱がさがらない。 「くそっ!」 鉄枠を、思い切り殴りつけた。 抜け出したことがばれたら、リエに甲高い声で散々説教されるだろうし、アルスは怒鳴り散らすだろうな。さすがに、熱がある時はおたまで叩いてはこないかな……。エヴィンは苦笑した。 そして、蘇ろうとしている故郷の夜景に背を向けた。 今自分に出来ること。今自分がしたいこと。しなくてはならないこと。わかっている。わかっ...
三日月の聖書〜Crescent Bible 波濤の戦士達 | 2011.12.12 Mon 13:32
JUGEMテーマ:オリジナルファンタジー 4 覚醒 いつも見つめていたのは、本当に遠い場所だった気がする。 それがどこなのか、解れば悩みはしない。 けれどその場所は、決してたどり着けないほどに遠い。 それだけは、よくわかっていた。 生きることから逃げ出したかったのか、それすら未だに、よくわからない。 生きていたくないわけではない。 今までの人生が、満ち足りていなかったわけではない。 しかし過去を思えば、炎と鮮血の記憶ばかりがべったりと脳裏にこべりつき、時たま蘇る記憶...
三日月の聖書〜Crescent Bible 波濤の戦士達 | 2011.12.12 Mon 13:23
精霊の守り人シリーズ 最新作『炎路を行く者 -守り人作品集- 』 がいよいよ2012年1月発売になるそうです。「炎路を行く者」は、「蒼路の旅人」「ヨゴ皇国」の登場人物・ヒュウゴを主人公にした物語で、上橋菜穂子先生がずいぶん前から構想を発表されていたけれど、なかなか執筆されずに、ファンの間では「幻の外伝」になっていました。それが今回ようやく発刊となりました。 今回の主人公、アラユタン・ヒュウゴは、女用心棒バルサや新ヨゴ皇国・チャグム皇子と敵対するタルシュ国の密偵ですが、もともとはチャグムの国・新ヨゴと...
日々の書付 | 2011.12.12 Mon 01:19
JUGEMテーマ:オリジナルファンタジー 「お待ちしておりました。少佐」「うむ。ユリシーズ少尉。例のモノは?」「こちらです」 敬礼をしてから、シェーダは、鎧戸を閉ざして歩んできたアグリウス少佐を奥へと招いた。少佐の背後に、誰もいないことを確認してから。 アグリウス少佐が、太い腕で、ぐいとシェーダの指した床を持ち上げた。取っ手などがついているわけではない。閉じてしまえば、全くなんの変哲もない床だ。 「気づかないのも無理はありません。……というよりも、気づかれなくてよかったと、言った方がよいでしょう...
三日月の聖書〜Crescent Bible 波濤の戦士達 | 2011.12.11 Sun 18:53
JUGEMテーマ:オリジナルファンタジー ※※※ 「本隊より入電! 閣下は明朝お着きになるそうです」「わかった。皆は作業を続けろ! 私は少々場を空ける」「はっ!」 ウィルシード国軍少佐官、セイント・ウォリアーズ所属、ヴィクトール・アグリウス。「黒獅子」の二つ名で呼ばれる彼は、国軍聖大使ティラの忠実な腹心の一人だった。 筋骨隆々としたその体躯は見事だが、内面は朴訥とした実直な男だ。体に不調をきたしたエヴィンことリスバーン准佐の、イクセレアの住民に対するそのカリスマ性が無くとも、その誠...
三日月の聖書〜Crescent Bible 波濤の戦士達 | 2011.12.10 Sat 21:43
JUGEMテーマ:オリジナルファンタジー 「エヴィン、ちゃんと食え。さっきからくだらないことばっかり考えてんじゃねえぞ。誤魔化したって、わかってんだぞ。……今日は早く寝ろよ、少佐に感謝しろ」「……ばれてるか?もしかして」 熱が、あがってきたような気はしていたのだが。 「ばれてるもなにもな……昼間からあんな真っ暗ツラして、お前らしくねえだろ!余裕なさすぎだ。どんなにオレがハラハラしてっと思ってんだよ!とっととそのサイアクっぽいメンタル、睡眠とって整えろ!」 しかし、アルスの言うことの意味が、エヴィンに...
三日月の聖書〜Crescent Bible 波濤の戦士達 | 2011.12.09 Fri 11:36
JUGEMテーマ:オリジナルファンタジー 「君……何がしたかったの?」「……決めてたんだ」「え?」 レイは起きあがろうともせずに、ぼそぼそと言った。 「あいつが……蒼穹の騎士になったって……英雄になったって、聞いて……あんなちっこいのが、……あんなに弱々しかったあいつが……だから」 「悔しかったの? 勝負すれば、勝てるとでも思った?」「違う……」 レイは、やはり床に倒れたまま、きつく拳を握った。 「……嬉しかったんだ」 「泣いてるの……?」 シェーダの問いに、レイは答えず、床に顔を伏せて...
三日月の聖書〜Crescent Bible 波濤の戦士達 | 2011.12.08 Thu 13:08
JUGEMテーマ:オリジナルファンタジー 3 過去 エヴィンはその晩、アルスとシェーダやリエと共に、幼少の時期を過ごした生家で、レイやスィエルと一緒に休むことになった。 同じ先遣隊を率いる上官であるアグリウス少佐のはからい、というか「命令」だった。 しばし任務を忘れ、懐かしい面々と語り明かす時間が、エヴィンには必要ではないのか、などと。 イクセレア復興計画担当の国軍先遣隊員は、夜通し、続々と到着する支援物資の供給に明け暮れる。こちらはリスバーン公爵の個人部隊だが、レイ以外の警備隊も同じ...
三日月の聖書〜Crescent Bible 波濤の戦士達 | 2011.12.05 Mon 20:07
JUGEMテーマ:オリジナルファンタジー ウィルシード王国首都、ファングリースト。 見事な円形を描くこの街の中心には、パレスと呼ばれる白い街が広がっている。多くの王侯貴族が暮らす場所、そして政治や、軍事、法の中心地である。王国をまとめる全てのものがここにあると言っていい。 イクセレアからは離れた、国土南部にあるファングリーストだが、国自体の緯度が高い為、冬の寒さはやはり厳しい。辺り一面、真白い雪景色に照り返す月明かりが、瞳を刺す。 国軍聖大使ティラ=ルディードアは、窓辺にもたれ、じ...
三日月の聖書〜Crescent Bible 波濤の戦士達 | 2011.12.04 Sun 18:35
JUGEMテーマ:オリジナルファンタジー リスバーン家の邸宅は、南部から街の外れに行き、西、緩やかな傾斜の丘の上にある。 屋敷の庭園は広く、しかし手入れはされていなかった。わびしく、うち捨てられた雑草だらけの庭が、かつては花に彩られていたことを思い出し、エヴィンは過去は過去の中にしかないのだと、そんな感傷を抱いた。 枯れた薔薇が巻き付くアーチをくぐって、三人は邸宅の入り口に向かった。 唐突に、遠くに見えた大きな扉が開かれた。エントランスの長い階段を下り、駆け寄ってくる影が二つ。 「...
三日月の聖書〜Crescent Bible 波濤の戦士達 | 2011.12.03 Sat 20:50
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