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日本に生まれた我々が、
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「青べか物語」『砂と柘榴(ざくろ)』 vol,16/21 山本周五郎・新潮文庫刊

JUGEMテーマ:日本文学   ★全文紹介   vol,16/21   五郎さんはなかなか気が付かなかった。   父親の方が先にその噂を聞き、怒って五郎さんを問い詰めた。 五郎さんは余りの事に口が利けなかった。   こんなひどいペテンは「あるだろうか、彼は怒りのために涙をこぼし、恥ずかしさのために吃(ども)りながら「砂のバリケード」のことを父に話した。   「おめえにも肝煎(きもい)るだな」 と温厚な父親は云った、   「そんな砂ぐれえ、一丈も積...

「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/   | 2022.10.19 Wed 22:32

「青べか物語」『砂と柘榴(ざくろ)』 vol,15/21 山本周五郎・新潮文庫刊

JUGEMテーマ:日本文学   ★全文紹介   vol,15/21   この種のゴシップは、どこの土地でも広まりやすい者だが、ことに浦粕ではもっとも歓迎される特報で、たちまちち少年少女のあいだにまで伝わってしまった。   このこまっしゃくれた少年少女たちは、五郎さんの店の前を通る時、声をそろえて喚いた。 「みそのでは幟(のぼり)もおっ立たない」   この町筋の商店は、店の脇にみな幟(のぼり)を立てているが、「みその」は店名を染めたがたん(軒に陽除けのようにおろす幕...

「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/   | 2022.10.18 Tue 21:32

「青べか物語」『砂と柘榴(ざくろ)』 vol,14/21 山本周五郎・新潮文庫刊

JUGEMテーマ:日本文学   ★全文紹介   vol,14/21     五郎さんは答えに困った。   「これってことはなかっただ、あの人もまたこれから嫁にゆくだろうしな、ほんとうにこれっていうほどのことはなかっただよ」   友人たちは代わる代わる訊いたし、いろいろと近所の評をさぐってみたが、それほど骨を折る暇もなく、第一級の情報を掴むことが出来た。   それは、篠崎へ貝を売りに行く女が聞いて来たもので、 ゆい子は五郎さんが男で無かったから帰った、...

「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/   | 2022.10.17 Mon 17:19

「青べか物語」『砂と柘榴(ざくろ)』 vol,13/21 山本周五郎・新潮文庫刊

JUGEMテーマ:日本文学   ★全文紹介   vol,13/21     「そんなあべこべな話は請け合えねえだな。」 と五郎さんの父親は云った。   「家風に合わないとはこっちの云うことだべが、嫁の方から家風に合わない何ぞと云われては筋が立たねえべ、そんな話は真っ平御免蒙(こうむ)るだよ」   仲人はもっともだと合点して帰り、それから数回、両家の間を往復した後、五郎さんの方で「家風に合わないから離縁した」 という名目を立て、正式に離婚が決まると、ゆい子の...

「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/   | 2022.10.16 Sun 19:58

「青べか物語」『砂と柘榴(ざくろ)』 vol,12/21 山本周五郎・新潮文庫刊

JUGEMテーマ:日本文学 ★全文紹介   vol,12/21   主人はいかにもコックらしく、白い上っ張りに前掛、頭にも白い茸形のコック帽をかぶっているし、二人に若い女給もきちんとエプロンを羽織っているという風で、客が酔って騒いだりすると、主人のコックが出て来て摘まみだすと言われ、そのためかどうか、若い衆と云われる人たちは殆どよりつかなかった。   五郎さんはその「四丁目」へ飲みに行き、それからは毎晩、店を閉めるとすぐ飲みに行った。   こういう状態が長く続くものでは...

「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/   | 2022.10.15 Sat 21:56

「青べか物語」『砂と柘榴(ざくろ)』 vol,11/21 山本周五郎・新潮文庫刊

JUGEMテーマ:日本文学   ★全文紹介   vol,11/21     『もう昨日で喪が明けたよ。』 そう云おうと思った。   口まで出かかったのであるが、五郎さんはそれを飲みこんでしまった。 急に【男の意地】といったような、かたくなな気分がこみあげて来、   『勝手にしやがれ、』 と肚(はら)の中で怒鳴った。   『そっちがそうするならこっちもこっちだ、知るもんか』 と彼は肚の中で続けて怒鳴った。   七十七日目の夜も同じ、次の夜...

「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/   | 2022.10.14 Fri 22:16

「青べか物語」『砂と柘榴(ざくろ)』 vol,10/21 山本周五郎・新潮文庫刊

JUGEMテーマ:日本文学   ★全文紹介   vol,10/21     ゆい子は毎晩夜具の周りに砂の垣を作った。   だんだん口数が少なくなり、顔色もさえず、いつもひどく疲れ果てたように、動作がぐったりと重たげに見え、また夜も熟睡が出来ないようであった。   時分でも喪が重荷になって来たんだな。   五郎さんはそう推察し、心の中で、カレンダーがあと三枚になった事を確かめた。   そうしてその三枚目も剥がされて、つまり七十六日目の夜になった時...

「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/   | 2022.10.11 Tue 23:50

「青べか物語」『砂と柘榴(ざくろ)』 vol,9/21 山本周五郎・新潮文庫刊

JUGEMテーマ:日本文学   ★全文紹介   vol,9/21       ゆい子は家事になれない様子で、飯の炊き方もうまくないし、拭き掃除や洗濯なども、時間ばかりかかってとんと片付かなかった。   五郎さんの妹は十二歳になるので、もう男よりもそんなことに眼がつくらしく、父や兄に向って、頻りに兄嫁の批判をした。   「うちの事が出来ないんなら、お店へ出ればいいじゃないの」 と妹は云った。   「どうしてお店へ出さないの、兄ちゃん」   ...

「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/   | 2022.10.10 Mon 18:58

鷗外旧邸 根津神社へお引越し

JUGEMテーマ:日本文学  閉館した水月ホテル鷗外荘が、鷗外ゆかりの根津神社に移転、の記事が『東京新聞』に載った。  「鷗外荘」は何度も訪れ、知友との会食の場にもなった。閉館のニュースでその消失が惜しまれたが、保存、移転が決まったことはまことに喜ばしい。  

見る 読む 歩く | 2022.10.10 Mon 10:43

「青べか物語」『砂と柘榴(ざくろ)』 vol,8/21 山本周五郎・新潮文庫刊

JUGEMテーマ:日本文学   ★全文紹介   vol,8/21   五郎さんはいくらかむっとして、何がいいのかと反問した。   すると住職は、指を折って日を数え、あと二十日ばかりで君のお母さんの喪はあける、二十日ばかり待つだけだから、 「まあいいじゃないか」 と答えた。   「ああそうですか」 五郎さんは納得した。   「すると喪は七十五日なんですね」   「いろいろあるがね、亡くなった人の魂は七十五日その家の軒先を離れない、ということがあ...

「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/   | 2022.10.09 Sun 16:58

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