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JUGEMテーマ:日本文学 「青べか物語」『砂と柘榴(ざくろ)』 vol,20/21 山本周五郎・新潮文庫刊 ★全文紹介 救いの主は五郎さんの姉であった。 父親から手紙を受け取った姉が、一人の娘を連れて北海道からはるばるやって来たのである。 娘は小柄な体ではあるが、健康そうで、縹緻(ひょうち=容色がきめ細かな様子。)もゆい子より一段とたちまさっていた。 実科女学校中退、年もゆい子より二つ若かった。 五郎さ彼女と結婚した...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.10.23 Sun 16:30
JUGEMテーマ:日本文学 ★全文紹介 浦粕第一の旦那衆である高品さんから、わたしはそれまでの事情を聞いていた。 というのが、ゆい子のあとを早く貰うために、五郎さんの父親が高品さんの本家を訪ねて、詳しい仔細を語ったからである。 予想通り、「買収した」という評判はすぐさま町中に伝わり、父親はますます嫁探しに熱中した。 こういう重複した誹謗に取り巻かれて、五郎さんがどんな日々を送ったかという事は分からない。 けれどもこの世では、...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.10.22 Sat 20:42
JUGEMテーマ:日本文学 ★全文紹介 vol,18/21 浦粕へ帰ってから、友人たちは却って否定的な気分になった。 「二時間でよ、おめえ」 と一人が云った、 「それも初めてだっていうだに、三度も幟がおっ立ったなんて考げえられっか」 「買収しただな」 と他の一人が云った、 「女に金轡(かなぐつわ)を噛ましただ」 筆者である私が、この会話を現実に聞いたのである。 場所は蒸気河岸の浦粕亭で、私は三十...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.10.21 Fri 21:23
★川喜田八潮 公式ホームページはこちら 二 金子光晴 1 大正五年(一九一六)、数え歳二十二の時に書かれた金子光晴の初期詩篇に、「反対」とか「おこたりの歌」という、この詩人の面目躍如たる作品がある。 《僕は、少年の頃/学校に反対だった。/僕は、いままた/働くことに反対だ。//僕は第一、健康とか/正義とかが大嫌いなのだ。/健康で、正しいほど/人間を無情にするものはない。//むろん、やまと魂は反対だ。/義理人情もへどがでる。/いつ...
星辰 Sei-shin | 2022.10.21 Fri 17:25
JUGEMテーマ:日本文学 ★全文紹介 vol,17/21 「砂ぐれえが何だ、砂が恐ろしくって海へ行けっか」 と父親は云った、 「喪が明けても砂を撒いたのは、おめえが蹴っぱらってへえって来るのを待て待っていたということだ、そのぐれえの察しはつくべえじゃねえかええ」 五郎さんは黙った。 事情を聞いた父親は、すぐに嫁を捜し始めた。 早くあとを貰って、篠崎を見返してやらなければ、五郎さんばかりでなく「みその」の看板にもかかわる、と思った...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.10.20 Thu 21:49
JUGEMテーマ:日本文学 ★全文紹介 vol,16/21 五郎さんはなかなか気が付かなかった。 父親の方が先にその噂を聞き、怒って五郎さんを問い詰めた。 五郎さんは余りの事に口が利けなかった。 こんなひどいペテンは「あるだろうか、彼は怒りのために涙をこぼし、恥ずかしさのために吃(ども)りながら「砂のバリケード」のことを父に話した。 「おめえにも肝煎(きもい)るだな」 と温厚な父親は云った、 「そんな砂ぐれえ、一丈も積...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.10.19 Wed 22:32
JUGEMテーマ:日本文学 ★全文紹介 vol,15/21 この種のゴシップは、どこの土地でも広まりやすい者だが、ことに浦粕ではもっとも歓迎される特報で、たちまちち少年少女のあいだにまで伝わってしまった。 このこまっしゃくれた少年少女たちは、五郎さんの店の前を通る時、声をそろえて喚いた。 「みそのでは幟(のぼり)もおっ立たない」 この町筋の商店は、店の脇にみな幟(のぼり)を立てているが、「みその」は店名を染めたがたん(軒に陽除けのようにおろす幕...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.10.18 Tue 21:32
JUGEMテーマ:日本文学 ★全文紹介 vol,14/21 五郎さんは答えに困った。 「これってことはなかっただ、あの人もまたこれから嫁にゆくだろうしな、ほんとうにこれっていうほどのことはなかっただよ」 友人たちは代わる代わる訊いたし、いろいろと近所の評をさぐってみたが、それほど骨を折る暇もなく、第一級の情報を掴むことが出来た。 それは、篠崎へ貝を売りに行く女が聞いて来たもので、 ゆい子は五郎さんが男で無かったから帰った、...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.10.17 Mon 17:19
JUGEMテーマ:日本文学 ★全文紹介 vol,13/21 「そんなあべこべな話は請け合えねえだな。」 と五郎さんの父親は云った。 「家風に合わないとはこっちの云うことだべが、嫁の方から家風に合わない何ぞと云われては筋が立たねえべ、そんな話は真っ平御免蒙(こうむ)るだよ」 仲人はもっともだと合点して帰り、それから数回、両家の間を往復した後、五郎さんの方で「家風に合わないから離縁した」 という名目を立て、正式に離婚が決まると、ゆい子の...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.10.16 Sun 19:58
JUGEMテーマ:日本文学 ★全文紹介 vol,12/21 主人はいかにもコックらしく、白い上っ張りに前掛、頭にも白い茸形のコック帽をかぶっているし、二人に若い女給もきちんとエプロンを羽織っているという風で、客が酔って騒いだりすると、主人のコックが出て来て摘まみだすと言われ、そのためかどうか、若い衆と云われる人たちは殆どよりつかなかった。 五郎さんはその「四丁目」へ飲みに行き、それからは毎晩、店を閉めるとすぐ飲みに行った。 こういう状態が長く続くものでは...
「3分読むだけ文学通」新URL http://bungakutuu.net/ | 2022.10.15 Sat 21:56
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