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「うん。……ソル?」 フェリシアは、歩き出そうとしたソルの服の端っこをつまんだ。「どうしたんだ?」「これを、貰ってほしいの……」 フェリシアは、可愛らしいポシェットから剣の形をしたチャームのついたネックレスを取り出した。「えっ? これって……」 ソルは、そのネックレスを受け取りながら、目を丸くする。「お父さんが使っていた、アラディスだよ」 アラディスは、フェリシアの父ラウフが使っていた魔法のかけられた剣だ。 一見、ただのネックレスのようだが、呪文を唱えるとその姿を本物の剣に変える、世間にはあまり出...
イルシオン | 2013.08.12 Mon 09:28
「どっどうしたの、ソル?」 走ってきたソルは、汗を流し、息をきらせていた。「はぁ……はぁ……このバカっ」 ソルは、コツンと優しくだがフェリシアのおでこを叩く。「一人で出歩いて、心配しただろ!」「うっ……ごめんなさい」 フェリシアは、おでこを押さえながら、頭一つ分低い位置から上目遣いで謝ってくる。 それが、不覚にもかわいくてかわいくて、ソルは思わずドキっとしてしまった。「いっいつ、いじめっ子共が出てくるか分からないだろ?」 ソルは、動揺を隠そうと冷静を装う。 しかし、フェリシアはどちらかと言えば天然...
イルシオン | 2013.08.11 Sun 12:54
「えっ? フェリシアなら、丘に行ったはずよ?」 フェリシアに家についたソルは、いつも出迎えてくれるはずのフェリシアがいないのに気づき、彼女の母――ネイラ・イステミトに聞いた。 ネイラは、驚きながら「ソルちゃんと一緒じゃないの?」と、首を傾げていた。 ソルは、ネイラに一礼すると家を飛び出し、急いで丘へと向かった。 色とりどりの花束が置かれた、ラウフの墓。 その前に、しゃがんで手を合わせているフェリシアの姿があった。「お父さん、今日で私十六歳になったの」 誕生日のためか、フェリシアもソ...
イルシオン | 2013.08.10 Sat 20:12
第2話 決心と幸せ ――フェリシアの誕生日会当日。 ソルは、ドキドキしながらフェリシアの家に向かっていた。 フェリシアとソルは、誕生日が一日違いのため、いつもフェリシアの家で合同誕生日会をしていた。 ちなみに、フェリシアはこの年で十六歳を向かえ、結婚できる年になる。 差別などせず、小柄でかわいいフェリシアを、女性として見ている男たちも少なからず、この村にはいた。 そのため、ソルはこれからフェリシアに寄ってくる害虫を駆除するという、大仕事も控えていた。 だが、その前にフェリシアにプレ...
イルシオン | 2013.08.09 Fri 10:00
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 「久しぶりだな」 笑った顔はあの幼い少年のそれではない。彼は成長していた。鋭い眼光、意志の強い口元。引き締まった体にはバネのような筋肉が見事に発達していて、小柄といえど油断のならない猛禽類のような雰囲気を漂わせていた。その声は若々しく張りのある、自信に満ちて堂々とした大人の男のテノール。 「どうした。やはり打ち所が悪かったか? お前は金魚か、馬鹿皇子。人の顔を見て何を間抜けにぱくぱくしている」 ……馬鹿の意味もわかんなかったあの馬鹿が、こんな立派な減らず...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2013.08.06 Tue 15:32
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 硝子の破片がふりそそぐに似た猛烈な雨風に、体が突き刺さされる感覚。泥水にまみれてめちゃくちゃになった長い髪がじゃまして、前が見えない。手足がしびれて力が抜ける。 「成る程! ヴァスカーの調べの通りということか!」 男の低い声が賞賛を込めて、半ば浮かれた調子で響いているのが遠いところから聞こえた。アルスはしたたかに打ち付けた頭の激痛に朦朧とする意識の中、ぼんやりこう考えた。前々から思っちゃいたが、どうやらオレは賭け事に向いてるらしい。はっきり言ってこりゃ最...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2013.08.06 Tue 01:06
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 Case:2 セイン・リズラルフ 闇に紛れる生き物。いつからそんなものに墜ちたのか。黒く淀んだ我が身への天罰のように、雨は絶えず打ち付けてくる。かつて愛した人のとこしえの幸福と微笑みを、命を賭して願っていたのは他ならぬ自分のこの胸であるはずなのに、同じ心で人の絶命を欲している。己の姿がわからなくなる。 闇の中にうずくまるは、得も言われぬ背徳の快感。自分はおそらく狂っているのだろう。自らを嘲弄し続ける寂れた心の最果てに秘めた、時の大河の向こう岸から……もう逢えない...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2013.08.02 Fri 18:52
確かに、毎年フェリシアには誕生日プレゼントをあげている。 でも、ソルももう少しで18歳になろうという、立派な男子である。 女の子のプレゼント選びをしている所を親に報告され、尚且つ悪気はなかったにしろ笑われたのだ。 かなり恥ずかしいのは当たり前である。「でも、フェリシアちゃんがお嫁に来てくれると母さんうれしいわぁ」「そうだね。大人しい子だけど、マディアと一緒で家事も上手で、マディアみたいに美人さんだからねぇ」「もう、あなたったら」 頬を両手でおさえ、照れるマディア。「マディア……」 そんなマデ...
イルシオン | 2013.08.02 Fri 09:28
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 「……ゼルシト王家は古代人の直系の末裔(すえ)と聞く。失うには惜しい血統だ。陽に透ければ、まるで金に輝くような美しい髪じゃないか」「気色悪りぃこと言うんじゃねえ」 アルスは舌打ちとともに苦渋に近い表情でタージから視線をそらしたが、タージは気にする風もなく、不機嫌に鼻を鳴らし返した。 「褒めているのに、素直じゃない。ま、お前ごときが緋色の皇子の器とは思えんがね! いい年して軽薄な若づくりしよって、口は悪いわ、身だしなみもいい加減だわ……そんなのばし放題の頭で、何が...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2013.08.01 Thu 22:49
「ソル、今日はご機嫌だねぇ」 ソルの家のリビング。 家族三人で夕食を食べていると、ソルの父――クルス・ディオスが、上機嫌のソルに問いかけた。 ソルの顔はお父さん似だと言われるほど、二人の顔は似ていた。「あぁ、まあな」 ソルは大好きなミートパスタを頬ばりながら、そっけなく答えた。 そんな彼の口の周りは、トマトソースまみれで、まるで子供のようだ。「今日やっとフェリシアちゃんの誕生日プレゼントが決まったものねぇ〜」 微笑みながら、ソルの母――マディア・ディオスは頬に手を当て、うっとりとした。 濃い青い...
イルシオン | 2013.07.31 Wed 23:25
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