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JUGEMテーマ:ファンタジー小説 「久しぶりだな」 笑った顔はあの幼い少年のそれではない。彼は成長していた。鋭い眼光、意志の強い口元。引き締まった体にはバネのような筋肉が見事に発達していて、小柄といえど油断のならない猛禽類のような雰囲気を漂わせていた。その声は若々しく張りのある、自信に満ちて堂々とした大人の男のテノール。 「どうした。やはり打ち所が悪かったか? お前は金魚か、馬鹿皇子。人の顔を見て何を間抜けにぱくぱくしている」 ……馬鹿の意味もわかんなかったあの馬鹿が、こんな立派な減らず...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2013.08.06 Tue 15:32
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 硝子の破片がふりそそぐに似た猛烈な雨風に、体が突き刺さされる感覚。泥水にまみれてめちゃくちゃになった長い髪がじゃまして、前が見えない。手足がしびれて力が抜ける。 「成る程! ヴァスカーの調べの通りということか!」 男の低い声が賞賛を込めて、半ば浮かれた調子で響いているのが遠いところから聞こえた。アルスはしたたかに打ち付けた頭の激痛に朦朧とする意識の中、ぼんやりこう考えた。前々から思っちゃいたが、どうやらオレは賭け事に向いてるらしい。はっきり言ってこりゃ最...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2013.08.06 Tue 01:06
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 Case:2 セイン・リズラルフ 闇に紛れる生き物。いつからそんなものに墜ちたのか。黒く淀んだ我が身への天罰のように、雨は絶えず打ち付けてくる。かつて愛した人のとこしえの幸福と微笑みを、命を賭して願っていたのは他ならぬ自分のこの胸であるはずなのに、同じ心で人の絶命を欲している。己の姿がわからなくなる。 闇の中にうずくまるは、得も言われぬ背徳の快感。自分はおそらく狂っているのだろう。自らを嘲弄し続ける寂れた心の最果てに秘めた、時の大河の向こう岸から……もう逢えない...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2013.08.02 Fri 18:52
確かに、毎年フェリシアには誕生日プレゼントをあげている。 でも、ソルももう少しで18歳になろうという、立派な男子である。 女の子のプレゼント選びをしている所を親に報告され、尚且つ悪気はなかったにしろ笑われたのだ。 かなり恥ずかしいのは当たり前である。「でも、フェリシアちゃんがお嫁に来てくれると母さんうれしいわぁ」「そうだね。大人しい子だけど、マディアと一緒で家事も上手で、マディアみたいに美人さんだからねぇ」「もう、あなたったら」 頬を両手でおさえ、照れるマディア。「マディア……」 そんなマデ...
イルシオン | 2013.08.02 Fri 09:28
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 「……ゼルシト王家は古代人の直系の末裔(すえ)と聞く。失うには惜しい血統だ。陽に透ければ、まるで金に輝くような美しい髪じゃないか」「気色悪りぃこと言うんじゃねえ」 アルスは舌打ちとともに苦渋に近い表情でタージから視線をそらしたが、タージは気にする風もなく、不機嫌に鼻を鳴らし返した。 「褒めているのに、素直じゃない。ま、お前ごときが緋色の皇子の器とは思えんがね! いい年して軽薄な若づくりしよって、口は悪いわ、身だしなみもいい加減だわ……そんなのばし放題の頭で、何が...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2013.08.01 Thu 22:49
「ソル、今日はご機嫌だねぇ」 ソルの家のリビング。 家族三人で夕食を食べていると、ソルの父――クルス・ディオスが、上機嫌のソルに問いかけた。 ソルの顔はお父さん似だと言われるほど、二人の顔は似ていた。「あぁ、まあな」 ソルは大好きなミートパスタを頬ばりながら、そっけなく答えた。 そんな彼の口の周りは、トマトソースまみれで、まるで子供のようだ。「今日やっとフェリシアちゃんの誕生日プレゼントが決まったものねぇ〜」 微笑みながら、ソルの母――マディア・ディオスは頬に手を当て、うっとりとした。 濃い青い...
イルシオン | 2013.07.31 Wed 23:25
「どっどうしたんだい、ソルちゃん?」「あっ! いやその……女の子が喜ぶモノって何かな……」「おやおやっ! 好きな子でもできたのかい!?」 ソルが頬を染めながら、ボソボソと言うと、おばさんはオーバーなリアクションで返してきた!「ちょっ! おばちゃん声がでかい!!」 ソルは慌てて、おばさんに「しー」っと指を立てる。「ほっほっほっ」 雑貨屋のおばさんは「おばちゃん嬉しいよ」と言いながら、微笑ましい顔でソルを見ていた。「だから、違うっての! フェリシアの誕生日が近いから……その……」 最後の方、もごもごとい...
イルシオン | 2013.07.31 Wed 09:03
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 「よ、料理長。お疲れサン。ほら、一杯」「サンキュ」 木の椀に注がれた暖かいビールを受け取り、皆で乾杯する。談笑しながら、アルスは自分の仲間の手製の料理に舌鼓をうった。仕事上がりの食事は、胃袋に染みるようだ。 「また読み書きと計算教えてくれよ、アルス」「あと世界情勢に歴史、地理なんかもいい。こないだ聞いた経営学は役に立つ」「……もーちょい、疲れてねえ時な。勉強熱心なこった」 アルスは身を乗り出してくる男客達に、苦笑いで返す。 「おべんきょーってヤツぁ、結構お...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2013.07.30 Tue 21:55
フェリシアの家族は平穏を求め、小さくもなく大きすぎることもないイルホ村へとやってきたのだった。 ――風が爽やかに吹き抜ける。 イルホ村の北にある森を抜け、花々が咲き乱れる丘に、ソル達はいた。 そこの一角には、イルホ村の住人の墓場がある。 フェリシアは、丘に咲く花を摘み、「ラウフ・イステミト」と書かれた墓の前に供え、しゃがむと手を合わせる。(ラウフさん良い人だったなぁ) ソルがまだ小さい頃、ラウフにはよく遊んでもらっていた。 ラウフによく「俺は病気でなかなかフェリシアの面倒を見れない。これ...
イルシオン | 2013.07.30 Tue 08:24
JUGEMテーマ:ファンタジー小説 ACT0 Legend Of The Down under the Red Moon.〜case :1 プロローグ 紅い月の夜空に星が降る、冷え込んだ春先。そこはぐらぐらと煮え立つスープから立ち上るかぐわしい蒸気でむせかえり、暑いほどだった。 汗をかきながらも忙しなく働いているのは、真っ白な揃いを着こんだ年齢様々な男達。 厨房だ。 「白身魚の香草焼きを、車海老のオーロラソースサラダ付きで三つです!」「子牛のレイデリア風、香辛料控えめで!」「追加です! 子羊のテリーヌとジャガ芋の冷製スープ、二人前ずつ!」「食...
三日月の聖書〜景澤 晶の創作思考 | 2013.07.29 Mon 22:42
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