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「神よ、魔導の姫とは?」「異世界の女神の魂を持つ者こそ、魔導の姫じゃ」「女神様自身に、自分を討てと?」「……そうせねば、負の感情を倒すための、わしと女神の力を支えきれぬ」「……わかりました」「でもぉ、何で異世界に送っちゃうのぉ?」「それはのぉ、女神と負の感情が引かれ合い、復活が早まらないためじゃ」「では、我々はどうしたら良いのですか?」「お主らは、5つの魔道具を守りながら、時がくるのを待つのじゃ……。そして、魔物は人々への罰として残すことにする。すまんのう、アルキオン、モナソル。……後は頼む」「はい...
イルシオン | 2013.07.08 Mon 08:49
しかし……平和が続くにつれ、人間たちはその平和が「普通」になり、女神様への感謝を忘れていったのです。 女神様へ感謝の祈りをする者も減り、祭りも次第になくなっていきました。 そのせいか、感謝や尊敬の力がなくなっていった女神様の体は、次第に黒く染まっていきました。 最初は体が染まるだけだった……でも、次第に性格までもが変わってしまいました。 平和を望み、優しい性格だった女神様の心は、次第に人間たちへの怒りや悲しみ、憎しみに満たされ、破壊の衝動の駆り立てられていったのです。&n...
イルシオン | 2013.07.07 Sun 08:40
そこで、神様は負の感情を受ける器として、一人の女神を作りました。 神は、その女神サラクスに人間たちの負の感情を吸わせることにしたのです。 そして、負の感情を受け続け、女神サラクス自身が負の感情に支配されるのを予感した神様は、女神サラクスを祭るようにと人間達に伝えました。 神様は負の感情を、人間達の感謝と尊敬の思いで中和しようと考えたのです。 負の感情がなくなり、争いがなくなった人間たちは、女神様のおかげだと祭りなどで崇め、自分たちの傍に女神像を置き、常に感謝をするよ...
イルシオン | 2013.07.06 Sat 08:50
「モナソル、久しぶりだな」「その声は、アルちゃん!?」 魔女はうれしそうに、はしゃぎながらアルキオンを取った。「ソルモナ、感動の再開はまた今度だ。姫様が力を全て手に入れ、アレの影響を受けて暴走しかけた」「なんですって!?」「もう時間がない。アレの復活も近いはずだ……」「そんなぁ……じゃあ、あの子は」「ちょっと待てっ! なんの話だ?」 ソルモナと呼ばれた魔女と、アルキオンが自分達で話を進めていたのを、俺は止めた。「ルークちゃん達にも、そろそろ真実を伝えた法が良いんじゃないのぉ?」「そうだな……」「真...
イルシオン | 2013.07.05 Fri 09:07
咳き込みながら、さっきより一層殺気だったセルクティス達が、俺達を囲んだ。「止めろ!」「魔女を殺せ」「外から来た人間を殺せ」 そう言って近寄ってくるセルクティス達の耳には、もう俺の声すら届いていなかった。 このままでは、俺達はただではすまない!「ヴェオン・ツァッティモ」 俺が逃げ場を失い、途方にくれていると、どこからともなくアルキオンの声がし、俺達は光に包まれた! はづきを抱きしめたまま、あまりの光の眩しさに、俺はしばらく目を瞑っていた。 光が...
イルシオン | 2013.07.04 Thu 07:50
人肌とは思えないほどに、彼女の体は冷たくなっていた。「はづ……き、どうし……たんだ?」 俺は驚きながらも、はづきの目の前に回りこんだ。 はづきの瞳は虚ろで、さっき感じが違う雰囲気の正体が何か分かった気がした。 ……彼女は、何かに操られている。 そんな感じがした俺は、必死に彼女を呼び覚まそうとした。「はづき! 目を……覚ませ!」 俺は、魔法の発動を止めようと、魔力が流れているであろう腕を下げさそうとした。 だが、彼女の力とは思えないほどの力が、吹っ飛ばされてしまった。「ユルサ...
イルシオン | 2013.07.03 Wed 07:07
自分の後ろからその声が聞こえるが、何故か思うように体が動かず、そちらに向くことができない。「ヤメロ……オロカナイキモノタチヨ」 その声と持ち主の気配は、俺に近づいてきて、俺を通り越した。 ……はづきっ!? その後ろ姿は、紛れもなくはづきだった。「は……づき。なにを……」 俺は声を振り絞ったが、彼女には聞こえていないのか、ずっと前を向いていた。 だが、その彼女の雰囲気は、いつものはづきとは何か違う感じがした……いや、はづきの姿をした何かだった。「何だ、その女は!」「外の人間たちを連れてきた、...
イルシオン | 2013.07.02 Tue 08:04
第17話 真実と女神 俺が目が覚めたのは、焦げ臭いと叫び声が聞こえてきたからだった。 ずっと寝ていたのか、なかなか働かない頭を頑張って働かせながら、周りを見渡した。 激しく燃えさかる民家らしき建物。 そして、俺達を背にして怒鳴る、羽の生えたセルクティスと思われる男。 そして、その男の向こうには、殺気を放つセルクティスと思われる大人達が見えた。 羽の生えた男のセルクティスは、羽が少し焦げていて、家事に巻き込まれたの...
イルシオン | 2013.07.01 Mon 06:12
待望の、本当に待望の十二国記シリーズの新刊「丕緒の鳥」が発売になりました。すでに発表された「丕緒の鳥」「落照の獄」の二編のほか、書下ろしの短編が2編収録されています。 読み終わって感じたこと ・ホワイトハート版の痛快さを期待して読むと、えらい目に会う ・ファンタジーを超えた人間の物語 ・泣きました゜・(*ノД`*)・゜・・ 今までは十二国の王とその周辺の話だったのに対して、新潮文庫版の十二国記は、それぞれの時代、国で市井に生きる人々の話が中心です。 そこには「風の万里 黎明の空」のような痛快さ...
日々の書付 | 2013.06.30 Sun 00:24
怒り、憎しみ、悲しみの感情が一気に流れ込み、私は気分が悪った。 そして、それと対をなすように、私の心に破壊と殺りくの衝動が湧き上がる。 いやだ……。 私は、そんなこと思ってない! やりたくない! 必死に、破壊衝動を抑えようとしても、黒いもやもやが、私をどんどん侵食していく……。 いやだ……いやだ。 いや、助けて……ルークさん。 私の叫びも空しく、黒い闇へと私は飲み込まれていった――。 【 迷いの森の騎士さま 第16話 黒い闇 終わ...
イルシオン | 2013.06.23 Sun 08:54
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