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いいか。 そんなにきれいなもんじゃない。 どろっどろのきったない、触りたくもないようなもんであふれてる。 そんなものから目を背けて、その目にきれいなもんばかり映したって 結局、そのきれいさの尺度は違うテーブルの上だ。 同じようなきれいな水を三個比べる時と 明らかに変色して汚れている水、 透明度はあっても変色している水、 飲めるか微妙な水の三個を比べる時、 「きれいさ」の幅が違うだろ。 別にそれだっていいんだよ。 きれいな水の中でどれがきれいだのこれは不純物が混じってるだの 好きに品評会...
SolemnAir//3LOVERS | 2021.01.09 Sat 19:28
JUGEMテーマ:自作小説 父は珍しいものを集めることが好きだった。 伯爵という立場を存分に利用し欲しいものは全て手に入れた。 異国の装飾品、呪術儀式に使う薬、失われた文明の品々、中には不思議な力を持つ人間など 一人の人間の欲望のためにありとあらゆる形でそれらは掻き集められていった。 そこで用意されたのが“旧街”だ。 もとから郊外のため住む者は疎らだったこの土地はやがて“異民の居住区”となり 実質は“伯爵のコレクション場&rdqu...
魚と紅茶(旧・とかげの日常) | 2021.01.03 Sun 12:00
ここは戦場だ。 弱い者は消される。 強者に取り込まれるか取り入るか。 生まれた時からその階級は決まっている。 それはほぼ覆らない。 主神や女神はまさに霞を喰って生きている。 早い話が捕食を必要としない。 ただ強者に弱者が消される時、次の者がどこかに出現するという。 その絶対数は変わらないということだ。 だが、最弱の神が消されたからといって同等の神が出現するわけではない。 それぞれの神域が乱立しぶつかりあうのがこの世界ヒダマリだ。 それはどこかの異世界のように星を持つわけでも他に生き物...
SolemnAir//3LOVERS | 2020.12.31 Thu 21:35
「これでさようならね」 その女は、その男のことが好きだった。 その男もまた、その女のことが好きだった。 立場も身分も相応で、ちょうどいい釣り合い。 ただひとつ、 その家同士の仲が非常によくないことを除けば。 人間も魔獣も竜も、平均寿命を三百年とするこの世界で そのうち青年期は実に二百五十年にわたる。 そのためか結婚というものは青年期を過ぎてから 相続のためだけにするものであって、 共に歩みたい者とは長い時間を婚約という形で契約する。 婚約もあくまでも正式な契約形態であるからには 破棄を...
SolemnAir//3LOVERS | 2020.12.31 Thu 19:20
化物皇子。 ばけものおうじ。 その異名が本名ではないかと思えるほど 広く知れ渡ったそのものの本当の名前はエイザ=ハーン。 柔和な顔立ち、くすんだ黄金色の髪に深い青の目。 その声は高すぎず落ち着きのあるしっとりとしたもので 知能が非常に高く、その記憶力と博識っぷりは世界に轟く。 ハーン大帝国の正妻の第一子であり、 側妻の子である兄二人とは異なり 正統な帝位継承権を持つ将来有望な第三皇子。 完全無欠の皇子さま。 しかし、誰も彼のように成りたいとは微塵にも思わない。 それどころか ”化物皇子...
SolemnAir//3LOVERS | 2020.12.31 Thu 19:19
◆◆◆ 幼い弟はいつも泣き叫んでいた。 いたい、いたい、と。 彼に平穏はなかった。 いつもあらん限りの声でそれを伝えていた。 ◆ 哀れだ、と思った。 可哀想に、と。 小さな弱者がそこに這いつくばることは 妙に高揚感を呼び その昂りが次は罪悪感を呼んだ。 哀れな小さな生き物をもっと哀れにしたい衝動と その必死な小さな生き物を優しく包み込みたい感情が 僕をかき混ぜてぐちゃぐちゃにしていた。 ◆ 弟はその絶叫の中に世界をみていた。 それは広く、僕より遥かに拡がり、 弟がみる世界は途方もなく大き...
SolemnAir//3LOVERS | 2020.12.31 Thu 19:17
この国で一番偉い我が侭な王様が 自分の双子の姉を差し出せと言った時、 カンは実際のところ内心穏やかではなかった。 姉は自分の持たないものを手にしている。 ただ次女が継ぐ習わしというだけで。 順序が違えば自分のものだったはずだ。 次期族長という場所も、 幼馴染と将来が確約されていることも。 城に献上されるということは あの大きなお城で、極上の物を与えられて 美味しいものをおなかいっぱいに食べるのだ。 併せて呼ばれている幼馴染と一緒に。 穏やかではないどころではない。 そこにある布団も衣...
SolemnAir//3LOVERS | 2020.12.31 Thu 19:10
「やあ」 皇室専用の部屋の入り口で穏やかな低い声で男は笑った。 淡い緑の美しい柔らかい髪は腰まで編み込まれ、柔和な懐っこい笑顔。 髪と同じ色の緑が宝石のようにきれいだった。 片足は歩けないわけではないが引きずっているのがわかる。 そしてその同じ側の片腕もどこか不自然だった。 どこか話しかけられた側によく似た顔立ちで、ただまとう色彩が違った。 「いらっしゃいませ」 黒い長い髪を腰まで真っ直ぐ伸ばした相手は律義に返した。 顔だけではなくその声もよく似ている。 黒い目が宝石を見る。 ラスカー家...
SolemnAir//3LOVERS | 2020.12.31 Thu 16:53
ラスカーの笛を知っているか。 その笛の音はあらゆる願いを叶えてくれる。 しかし、それは正当な継承者にしか音が出せない。 そしてその音を悪用してはならない。 ◆◆◆ 「おじいさま!おじいさま!!」 それは男孫の悲痛な叫びだった。 緑の編み込まれた長い髪が空を舞う。 ラスカー=ライアはその場に崩れ落ちた。 青年期というには少し早い。 幼さをもう少しで脱却するかというところの孫は 駆けつけて祖父の身体を起こそうとした。 だがもうそれは祖父を終わっていた。 「父上。そんなにまでこれが大切ですか」...
SolemnAir//3LOVERS | 2020.12.31 Thu 14:42
その牢獄に入るべきは自分だったのだ 拒絶された己の代わりに 彼女が入らざるを得なかったのだ 父親がいうことも理解はできる 彼女がいうことも理解はできる だが 到底納得はできず なぜ自分の問題が自分ひとりで解決をみないのだろう なぜ傷をひろめあうやり方でしか 解決の糸口が見えないのだろう 自分が生まれてこなければとは思わない それは優しい母親の気持ちに水をさす 自分が苦しめばいいと思ったところで それは彼女が強く否定する ならば父親が悪だろうか それもおそらくは答えにならない この...
SolemnAir//3LOVERS | 2020.12.31 Thu 14:19
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