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JUGEMテーマ:自作小説 「あたしと付き合ってくださいっ!」 「断る」 すらりとした長身が前を歩いていた。先輩だ! 気づくと同時にダッシュをかけていた。 先輩は気配に敏い。声をかけるより先に振り返った。深いチョコレート色の瞳にあたしが映った次の瞬間、いつものように大声で交際を申し込む。直ちに返ってきた返答は拒絶。がっくりとあたしは肩を落とした。でもまわりは、わっと盛り上がった。負けたー、だの、まだまだかー、というにぎやかな声が交差する。 あたしの告白はすっかり名物と...
My First JUGEM | 2019.08.22 Thu 10:15
JUGEMテーマ:自作小説 ひさしぶりなんだ。 時間がようやく空いたから、長く訪れなかった場所に足を向けると、≪彼≫は挨拶もそこそこに語り始めた。こちらの困惑など、まったく気にもしない。 一方的にべらべらと話している≪彼≫を眺めて、懐かしい反応だなあと感じた僕は、さらに記憶を探った。ええと、≪彼≫がいま、夢中になっているものは何だったっけ? でも≪彼≫に示された壁一面を見て思い出した。 ああ、そうだった。かつて≪彼≫を苛めた存在の、――の収集。 それがいま、≪彼≫が夢中...
My First JUGEM | 2019.08.22 Thu 10:14
JUGEMテーマ:自作小説 すん、と鼻をすすった。なんだかすっきりした気持ちがある。こんなに泣いたの、どのくらいだろう、と考えながら、ピー、と云う電子音を聞いた。あ、炊けたんだ。セットしておいた炊飯器を開けば、ほわほわ、と蒸気とお米の匂いが立ちのぼる。ん、いい匂い。ちょっと強ばった頬を動かして微笑んだあと、ぱたぱたと動いた。水をお椀に汲んで、塩と梅干を小皿に取り分けて、炊き上がったばかりのごはんを濡れた手のひらにのせる。 あ、ちち、とごはんをはずませながら、こわごわ、おむ...
My First JUGEM | 2019.08.22 Thu 10:12
JUGEMテーマ:自作小説 ことこと、と鍋がやさしい音で揺れている。 ふわりと漂うスパイシーな香りに、私は満足に微笑んだ。今日はあちらの世界の具材を使った煮込み料理を作っている。≪彼≫はこちらの世界の料理も好んでいるけれど、やはりいちばんはあちらの世界の具材だ。舌が馴染んでいるのだろう。美麗な面持ちを子供のように輝かせて、ぱくぱくと食べる。黙っていれば貴公子であるのに、どうしてあそこまで食欲旺盛なのか。もっとも私はそんな彼が嫌いではない。ううん、むしろ、 (――――だめ) 思...
My First JUGEM | 2019.08.22 Thu 10:11
JUGEMテーマ:自作小説 こういうとき、あの子は絶対に人前に出たがらない。 確証している彼は、だれもついてこないようにと云い聞かせて、家を出た。森の奥に向かう道を歩いて、さて何年ぶりの探索だろう、と記憶を探る。 そう、もう四〜五年になるのか。 幼いあの子はその育ちのためか、人に弱みをさらすことをいやがった。養い育てている彼にすら、不調を隠そうとする。どうやって隠すかと云えば、簡単だ、だれも来ない場所に隠れてしまうのだ。森の奥深くならだれも来ないと考えたらしい。初めに知...
My First JUGEM | 2019.08.22 Thu 10:09
JUGEMテーマ:自作小説 彼の一日の終わりは、他の人間の一日の始まりだ。 白み始めた空を認めて、ようやく望遠鏡から離れる。まわりに散らばっているのは、天体を観測している間、書き留めていた紙片だ。拾い集めようとかがめば、一晩中同じ姿勢でいたから、固まっていた身体がごきりと鳴る。苦笑した彼は、とんとんと身体をほぐした。改めて紙片を眺める。専門職である彼だから、読み取ることができる数字の羅列。こまかな星々の動きをわかりやすい文章にして報告書にまとめる。それが彼の仕事だ。 閑...
My First JUGEM | 2019.08.22 Thu 10:06
JUGEMテーマ:自作小説 押入れから出てきたのは、懐かし、小学生の時に買ってもらった虫眼鏡だ。 これでいろいろなものを眺めていたのよねえ、と感傷にとらわれながら覗き込んでみる。 やめておけばよかった。 布団の上に這っているありの存在になんて気づきたくなかったよ、ちょっとどこから侵入したのよもー! 殺虫剤を買ってこなくちゃ。おやつにたかられたら最悪だわ!! 無邪気にアリを追いかけた自分はもうどこにもいない。 013:レンズ▼ (短文 成長した女...
My First JUGEM | 2019.08.22 Thu 10:05
JUGEMテーマ:自作小説 (――――あ、) 馴染みの本屋から歩き出した時、知り合いを見かけた。よく話をする、わりと仲の良い同期。 彼のことを話した友人からは「好きなんでしょ」と突っ込みを受けた。そうなのかなあ、とぼんやり考えた端から、自分で否定した。 だって、彼にはもう付き合っている人がいる。 そんなたぐいの話をしたことはないけれど、雰囲気や他の人との話から、なんとなくわかるものだ。 (ほらね) 誰かに語りかけるように、心の中で呟いてみる。ほらね、彼には可愛い彼女がい...
My First JUGEM | 2019.08.22 Thu 10:03
JUGEMテーマ:自作小説 ふわりとした重みを左腕に受けて、僕は思いきり硬直した。 隣に座っていた人も、なにがもたれかかってきたのかもわかっている。だからこそそれまで話していた口を止めてまじまじとその人を見つめた。 (せ、せんぱい……っ?) 落ちつけ僕、ここはどこだ。大学近くの居酒屋だ。なにをしているところだ、クラブの打ち上げ会だ。今日はイベントがうまくいって先輩たちはもちろん僕たちだってご機嫌で、さらにご飯がうまくてなかなか酒が進まないなあと考えていたと...
My First JUGEM | 2019.08.22 Thu 10:02
JUGEMテーマ:自作小説 どさどさっ。 夫がやけに大きな紙袋を持って帰宅したから、待ち構えていた妻はもちろん追求した。 最近、どうした次第か、帰りが遅いのだ。今日こそ問い詰めよう、そう思った矢先の出来事だから、少々気が抜けた。どさどさと現れた荷物は主にCDや書籍だった、――胎教の。 だがしかし、理由がわからない。いずれは必要になって欲しいが、少なくとも今は必要ない。同時に、こんなに数多く必要ない。眉をひそめてもじもじしている夫を正座させた。説教の態勢だ。 「ちょっと。...
My First JUGEM | 2019.08.22 Thu 10:00
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