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ヒロは未だにお前の兄貴を想い続け、そのせいで妹のお前と結婚までしようとしてるんだぞ。 そう喉元から出かかった台詞は、寸での所で飲み込んだ。まさか本人に向かって、そんな当てつけを言うわけにはいかない。 桐生が歯を食いしばるように口を閉じ、ギリギリと眉をしかめると、風子はその様子に息を飲み、それから「あっ」と目を見開いた。 「ひょっとして、あなたは駈ちゃんとヒロちゃんのことを知ってるんですか?」 「……ああ」 「ヒロちゃんが、駈ちゃんを好きだったことも……?」 ...
真昼の月 | 2018.12.15 Sat 08:02
「はい。もう、癖で」 「癖?」 癖でこんな物を持ち歩いている?なんだ、この女……。どんな女だ……? 奇妙な顔をする桐生に気づいて、風子は「あ」と声を上げると、慌てたように説明した。 「ヒロちゃんや駈ちゃん、ジュニアカート時代には結構怪我が多かったんです。私は二人と一緒にいたくて……、二人と一緒にいる為に、私にできることはないかって考えて、色んな救命講習に通って勉強しました」 本当は医者や看護師になりたかったんだけど、それは親が許してくれなかった...
真昼の月 | 2018.12.14 Fri 08:02
そうだ。兄貴は違う。 兄貴が俺を抱くのは、誰かの替わりだろう?俺が最初、駈の替わりにしたように、きっと兄貴だって、誰かの替わりに俺を抱いていただけだろう? だって、兄貴は俺を抱く時に、決して俺の名前を呼ばない。決して俺に自分の名前を呼ばせない。それが答えだ。 期待しちゃいけない。俺は男で、兄貴の弟なんだから。 ふと、目の下に桐生の指を感じた。その指がそっと目の縁を辿っていく。桐生はヒロの目から離した親指を自分の唇に持っていって、掬い取った何かをペロリと舐めた。 優しい顔。 ...
真昼の月 | 2018.12.13 Thu 08:10
「最初にそう言ったな。死に場所を与えてくれるんだろう、って。俺は……俺はな、本当は、あのときお前をちょっと脅かしたら、さっさとシッポを巻いて逃げ出すだろうと思ってたんだよ。ヤクザなんてまっぴらごめんだって、逃げ出すだろうってな。……だが、お前は死に場所を欲しがっていた。だから俺はお前を手元に置いたんだ。本当は、お前はこんな世界に来るような奴じゃなかったんだろうが、俺はお前をこのまま死なせちゃいけねぇと思ったんだよ」 「兄貴……」 そうだ。俺は、死に場...
真昼の月 | 2018.12.12 Wed 08:05
登場人物プロフィールはこちら 主人公東郷の邸宅 私はカフェで結の両親と別れ、結のアパルトマンを訪ねた。 「東郷監督!」 出て来たのは楠本氏だ。 「結のご両親の了解を得て参りました。代わっていただけますか。明日まで私が結を見ています。」 ”明日まで”と言った時、楠本氏のこめかみが一瞬ひきつったように見えた。 「道ノ瀬の主治医は、安静にして”刺激しない”ように言っています。東郷監督、あなたに守れますか?」と楠本氏は私...
大人のためのBL物語 | 2018.12.11 Tue 16:20
「時村は、器じゃねぇんだよ。あんな奴に組を任せて、人がついてくると思うか?」 だからこそ、佐世保は時村の目の前でヒロを可愛がったのだ。上に可愛がられる人間というのがどういう物か、ヒロを見て学んで欲しかったのだろう。 腕っ節や銃の扱いは、端(はな)から時村に期待などしていなかっただろう。だが、例えば自分の店の周りの奴らとの付き合い方くらいは、マネできるんじゃないのか。 よその店に足を運び、自分の店の人間に何かあったらよろしく頼むと頭を下げる。自分の組の関係者じゃなくても、相談がある...
真昼の月 | 2018.12.11 Tue 08:05
「ヤクザには学歴は必要ないが、バカじゃ上までのし上がることはできない。うちの奴らも自分の武器がなんなのか、それを見極めて、そこを磨いて勝負してきたんだよ。うちの幹部の4人を見てみろ。金町なんざ全く学(がく)はないが、その分腕っ節でのし上がってきた。奴はテメェだけじゃなく、組の下のモンにまでたっぷりと稽古をつけて、武闘派集団を作り上げた。そうやって真田組に金町有りと、実力を見せつけてるんだよ。濱野にはシノギの嗅覚があって、真田の台所を支えている自負がある。牧村は相当なパイプを外に作ってやがるか...
真昼の月 | 2018.12.10 Mon 08:02
皆様、コメントありがとうございます。 お返事はコメントをいただいた順に書いております。 先に書いていただいた方のリコメが下になっておりますので、もし自分へのレスがないな、と思われたら、下の方をググッとスクロールしていただけると嬉しいです。 イヌ吉拝 01:07:れい様 コメントありがとうございます!! 前に100の質問やったの、ずいぶん前だから知らないですよね💦💦 面白いですよね、これ!私、二次創作サイトをやってたときからこの質問を使...
真昼の月 | 2018.12.10 Mon 07:55
「佐世保が目をかけて育てている以上、時村のことは佐世保に任せてきた。……そのせいで、あいつの行動を『またいつもの悪い癖が出てる』くらいにしか考えていなかった。あいつに大それた事ができるはずがないと思い込んでいたのは、俺の落ち度だ。そいつは謝る。すまなかった」 桐生が頭を下げるので、ヒロは慌てて「やめて下さい!」と頭を上げさせた。 「俺や佐世保は時村の傍にいすぎて気づくのが遅くなったが、金町は外から見てたから、あいつの異常に気がついたんだろうな……。クソッ。俺がも...
真昼の月 | 2018.12.09 Sun 08:01
「ったく。ヒロ、こっちも喰うか?」 「いえ、大丈夫です」 二人はそれから黙々と食事をした。だが、ヒロの箸はすぐに止まってしまう。 「ヒロ?しっかり喰って、早く治せ。俺も腹に鉛玉ぶち込まれたことあるが、たっぷり喰ったらすぐ治ったぞ」 「それ、兄貴がバケモノだってだけですよ」 「うるせぇ」 二人は小さく笑って、それからヒロは三分粥の椀に目を落とした。 「あの……時村さんは……ここに……?」 「いや、あいつは佐世保が馴染みの医者んとこに連れてった」...
真昼の月 | 2018.12.08 Sat 08:05
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