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「俺は無事だ。ヒロ、お前のおかげだ」 「……俺の?」 ヒロは、何を言われているのか分からないようだった。そんなヒロを宥めるように、桐生の腕がヒロの背中をそっと上下に撫でた。 「お前があの時撃たなければ、俺は時村に撃たれていた。あんな距離だ。さすがに時村だって外さねぇだろうさ。助かった。俺が今無事でいられるのは、お前のおかげだ」 「……俺の……」 ヒロが視線を上げて、桐生を見る。その表情を、確かめるように 桐生は、ヒロの頬をそっと掬い上げた。...
真昼の月 | 2018.12.07 Fri 08:02
◇◇◇ ◇◇◇ 「またあんたは、こんな所に戻ってきて……!」 目を開けると、そこにいたのは桐生でも風子でもなく、前回もお世話になった重田医師だった。苦虫を噛み潰したような、すごい顔をしている。 「え……と、俺……?」 「銃で脇腹抉られて戻ってきたんですよ!せっかくあんな大怪我から無事に退院させてあげたのに!」 「脇腹……」 でもあれは、かすり傷だったんじゃ、と呟くヒロに、重田はクワッと目を剥いた。 「でかい怪我をすると、アドレナリン...
真昼の月 | 2018.12.06 Thu 08:04
時村の手が血を吹き上げている。 その手からこぼれ落ちた銃が地面に落ちる直前に、それは不自然に直角を描いて弾き飛ばされた。 「兄貴!兄貴、ケガは!?」 ヒロは後先も考えずに、桐生の元に駆け寄った。手には煙を上げるS&Wを握ったままで。そこに風子がいることも、自分の腹から血が流れていることも、ヒロの頭にはなかった。 「兄貴!無事ですか!?」 「いや、俺は」 「ケガは!?ケガはどこにもありませんか!?」 「大丈夫だって……おい!?」 大丈夫だと聞くなり、ヒロは桐生の胸...
真昼の月 | 2018.12.05 Wed 08:02
「あんたのコルトのマガジンには6発しか弾は込められない。チェンバーの1発と併せても、7発だ」 「うるせぇ!」 ヒロの言葉に時村の顔色が赤黒く染まる。 「ヒロちゃん、どういうこと?あのピストル、もう弾は入ってないってこと?」 「ああ。マガジンの中は空だ。弾切れだよ。あの人、銃の扱いは不慣れだから、俺の前で新しいマガジンを装填し直すような真似はできないだろ」 だが、自分たちの後ろに手下を配しているように、時村は自分の後ろにもまだ兵隊を仕込んでいるだろう。銃にしても、他にもまだどこかに隠...
真昼の月 | 2018.12.04 Tue 08:05
視線の先で、銃口が自分に向かっていた。 「……時村さん、チャカをぶっ放すには、上の許可がいるって、最初に言われませんでしたか?こんなことして……破門されますよ?」 「はっ!お前ら二人の口を封じりゃ無かったことになんだろ!」 ヒロは時村の目をまっすぐに見つめた。時村も、ヒロをまっすぐに見つめ返す。 その時村の顔が、不意に歪んだ。 「……ヒロ、お前が悪いんだぜ。お前は俺の下にいりゃ良かったんだよ!」 時村の叫び声を聞いても、ヒロの顔色は変わら...
真昼の月 | 2018.12.03 Mon 08:07
◇◇◇ ◇◇◇ 窓の下に草が生えていたのは幸いだった。コンクリートやアスファルトとは違って、足にかかる負担はずっと少ない。 ヒロは着地の時に膝をついたが、すぐに立ち上がって、風子を助け起こした。 「大丈夫か?」 「大丈夫。それより、早く逃げないと」 「ああ」 子供の頃、鬼ごっこでも隠れん坊でも、一番得意だったのは風子だった。ヒロや駈についていきたくて、男の遊びも率先してやってきた風子は、そこらの女と同じに考えて良い相手ではない。 料理屋の中からドタバタと騒がしい音がする。店の人...
真昼の月 | 2018.12.02 Sun 08:03
登場人物プロフィールはこちら 主人公東郷の邸宅 その日、私は、ブラオミュンヘン会長のシュタイナーの執務室にいた。 W杯優勝4回のドイツの輝かしいサッカーの歴史の中で、初めての日本人監督を誕生させたのが彼だ。 初めての日本人監督、それが私だ。 シュタイナー氏は、私にとっては、代わるものがないほどの大変な恩人である。 「辞任の話をしに来たのか。」シュタイナー会長は...
大人のためのBL物語 | 2018.12.02 Sun 07:22
「生意気なんだよ!溝口の時に、さっさとしっぽ巻いて逃げると思ったのに!それがなんだよ!本家のガキ味方につけて……!」 「溝口……どうしてそれを……!?」 あの時。溝口に襲われたヒロを助けたのはオヤジだ。その場にいた金町と桐生には事情は通っているし、毎日見舞いに来てくれていた衛も大体の事は知っているようだが、本家の幹部ですら、このことを知らない者もいる。それほどきっちりと、箝口令が敷かれているのに。 目を見開いたヒロの顔を見て、時村が嘲るように笑った...
真昼の月 | 2018.12.01 Sat 08:02
ヒロが時村を真正面から見つめた。今迄の、どこか時村に遠慮したような顔ではない。それは、栄次や衛の護衛をこなす、武闘派の顔だ。 「どこからって、お前、ずっとタカシと一緒にバイクや車の持ち主当たってたんだろ?でもよ、盗難車だろ?その持ち主当たっても、仕方ないんじゃねぇの?」 「いえ。襲撃に使われた車輌のうち、7台について今調べていますが、その中の所有者5人は同じバーの常連です。金に困っていて、仕事を探していた。俺は5人のうち4人の顔に見覚えがあります。1人はフルフェイスを被ってたので顔ははっ...
真昼の月 | 2018.11.30 Fri 08:05
◇◇◇ ◇◇◇ 風子に話をつけ、その日のうちに時村に風子を会わせることにした。 「だったら良い店予約しなくちゃ!」と張り切った時村が用意した店は、広い庭を持った料理屋のの2階の座敷だった。 酒の席だからと、タカシは事務所に置いてきた。この広い部屋に、時村とヒロと風子、3人で席に着いている。 風子は緊張した面持ちで、時村にきちんと頭を下げた。 「奥園風子です。時村さんはヒロちゃん……いえ、桜沢の兄貴さんってお聞きしています。不束者ですが、桜沢共々、今後と...
真昼の月 | 2018.11.29 Thu 08:01
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