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JUGEMテーマ:ショート・ショート このところ、ぐーたらと過ごしていた。ご時世のせいもあるが、もともとぐーたらな生活だったりもする。久しぶりに体重計に乗っかってみたら、三キロ太っていた。これは所謂ステイホーム太りというやつだ。家にいましょうという世間の雰囲気を良いことに、朝から晩まで食っちゃ寝食っちゃ寝していた楽園の日々を激しく後悔する。体重計になど乗らなければ良かったのにと、そのことも激しく後悔する。でももう乗ってしまったし、知ってしまったし、なんとかしなければと思いスイッチ...
pale asymmetry | 2020.05.09 Sat 22:02
JUGEMテーマ:ショート・ショート すっかり輝きを失ってしまった黄金の週末、僕らは寄り添いリビングのソファーにだらしなく沈み込んでいる。軽いランチを食べて、薄っぺらい眠気に纏わり付かれながら、テレビジョンを眺めている。そのテレビジョンはネットに接続されていて、そこにはメディアが作ったプログラムではなく、多分海の向こうの誰かが作ったサイファイムービーが流れている。色鮮やかで、とてもレトロな未来が描かれたムービーだった。これを作った誰かも、退屈しているのかな。その作品は一時間ほど前...
pale asymmetry | 2020.05.02 Sat 21:04
JUGEMテーマ:ショート・ショート コクピットはどうしてこんなに暗いのだろう。キャノピーは透明ではないから、内側の光が外に漏れることなどない。だからコクピット内がアンサンブルルームくらいにまばゆくても良いと思うのだ。もちろん今の暗さでも、操作系の機器や計器事態が光っているので操縦には全く問題ない。けれど明るくても支障ないのなら、明るい方が良いのではないだろうか。次回の技術ミーティングで提案してみようか。ひんしゅくをかうだろうか。その前に誰かに訊いた方が良いかもしれない。ずっとコ...
pale asymmetry | 2020.05.01 Fri 21:58
JUGEMテーマ:ショート・ショート 長い長い石段を、僕はセリヌンテの先導で下りていく。朝霜のせいで石段は少し滑りやすいから注意しないといけなかったけれど、賢いセリヌンテが最適のスピードを僕に教えてくれる。僕は彼のスピードに従えば良いだけだ。セリヌンテは間違わない。姉様が育てた犬だから。きっと僕よりもずっと世界のことを知っているんだろうと思う。僕はただ、その茶色の犬に全てを任せてついて行けば良いだけだった。 石段の行き着く先は砂浜だ。周囲を高い断崖で囲まれた浜で、ここに繋がる...
pale asymmetry | 2020.04.30 Thu 22:27
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「遠い昔、世界の何処かに巨大な塔があったらしいの」 「うん」 「その塔は、とどまることを知らずに高く聳え続け、高くなりすぎて神様の逆鱗に触れてしまったんだって」 「それは旧約聖書的な話?」 「解らない。この前読んだマンガに出てきた話」 「ふーん」 「それでね、神様の雷か何かで塔は破壊されてしまったの。たくさんの人がその塔の建設に携わっていたのだけど、その人たちは塔の崩壊と同時に共通の言語を失ってしまったらしいわ。共通の言語を持ってい...
pale asymmetry | 2020.04.27 Mon 21:30
JUGEMテーマ:ショート・ショート 真夜中に出かけよう。ランチボックスを持って出かけよう。真夜中のお昼ご飯を詰めて出かけよう。トーチを忘れないようにしないとね。今夜は少し寒いから、たっぷり着込んで出かけよう。街はいつもよりずっと閑散としているはずだから、余計に寒さを感じるかもね。でも君となら大丈夫。公園まで歩いて行こう。河沿いの道を歩いて行こう。時々小走りなんかして。鼻歌なんかをもらしてみたり。昼間たっぷり眠ったから、君も僕も足取りは軽いはず。冒険はすこぶる快調だろう。 「サ...
pale asymmetry | 2020.04.22 Wed 21:34
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「完璧なものは目に見えない、と仮定してみるとするじゃない」 南からの小躍りする風に髪を弄ばれながら、彼女が言う。 「うん、仮定してみよう」 「すると目に見えないものの中に、完璧なものが含まれることになるわね」 「そうだね。もちろん目に見えないもの全てが完璧なものではないけれど」 「もちろんそう。ただ、二つを振り分けることは出来ないわ。目に見えないのだから」 「見ること以外に情報の入力がないのならば、そうかもしれないね」 「それは...
pale asymmetry | 2020.04.18 Sat 21:41
JUGEMテーマ:ショート・ショート 僕の声は少し高音で鼻にかかっていて、泣きそうな声だってよく言われたりする。それはキミもよく知っているよね。キミは僕のそんな声を気に入ってくれているみたいで、僕はそのことがすごく嬉しかったりするんだ。キミまでの距離はどのくらいだろう。今は簡単に調べることだ出来るんだ。キミまでの距離は3.6キロ。成人男性の歩行速度は時速約4キロ。一時間かからずキミの所まで歩いて行けるね。十分に可能な距離だ。歩くことにおいては。まあ、歩かないけどね。 窓を開けて叫...
pale asymmetry | 2020.04.12 Sun 21:19
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「少しだけ昔の話をしたいんだけど良いかな?」 「もちろん良いよ」 「確かあなたと始めて出会った夏のことだったと思うの。あの夏って、異常だったじゃない?」 「うん、確かに異常だったね」 「世界中の気候が大きくシフトした夏だったわ」 「そうだったね」 「世紀が変わるまですぐだったから、このまま世界が終わってしまうのじゃないかと思ったりしたわ」 「僕は完全にそう思っていたよ」 「そんな予言もあったしね」 「ああ、あったね。僕は信じて...
pale asymmetry | 2020.04.10 Fri 21:45
JUGEMテーマ:ショート・ショート テラスで、ハンモックが震えている。やわらかな日差しの下、風は静穏。自然がそのハンモックを震わせているわけではない。もちろん超自然が震わせているわけでもない。ハンモックの内で眠る彼が震わせているのだろう。それはつまり、彼が震えているのだろう。覗き込む。硬く目を閉じ、寝息は微かすぎて、半分死に浸っているようだ。私は彼の頬に手の甲で触れる。体温は高く、ほっとする。擽ったそうに唇を揺らがせ、彼が目を開ける。 「夢を見ていたよ」 声はまだ、眠りを...
pale asymmetry | 2020.04.01 Wed 21:56
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