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ショート・ショート
このテーマに投稿された記事：2032件 | このテーマのURL:https://jugem.jp/theme/c231/681/
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掌編。超短編。など、名前は様々。
一瞬を切り取って、読んでくれる人に届けたい。 
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作者のブログへ：「silbe」さんのブログ
その他のテーマ：「silbe」さんが作成したテーマ一覧(1件)
Pointer
JUGEMテーマ：ショート・ショート 「629円です」 財布にコインがなかったので、千円札を出す。 「千円からお預かりします。ポインターは使われますか？」 店員さんに笑顔で訊かれた。 「ポインター？」 「ええ、ポインター」 「ポイントのことですか？」 「いえ、ポインターです」 細かな釣り銭を発生させないために、端数分にポイントを使ったことはあるけれど、ポインターを使ったことなどない。というか、ポインターなどというシステムを知らない。 「どうされます？」 店...
pale asymmetry | 2020.11.09 Mon 21:01
Drifting ship
JUGEMテーマ：ショート・ショート 「ねえ、戻ってきて」 彼女の声が聞こえる。その声は湿っていて、深い井戸の底から聞こえてくるように感じた。けれど彼女の熱を感じる。彼女は傍らに横たわっていることを思い出す。僕は目を開ける。 「狭間の世界へようこそ」 暗い部屋。彼女の顔もよく見えない。けれどその声は、笑っている。 「狭間の世界？」 「時計を見て」 彼女の声に従い、頭の背後にある時計に目を向ける。エメラルドグリーンの淡い光、その光が形作るデジタル数字は24：02と表示さ...
pale asymmetry | 2020.11.07 Sat 21:31
星の数
JUGEMテーマ：ショート・ショート 「星の数って、どれくらいかしら？」 彼女が呟く。それは独り言のようにも思えたし、僕への問いかけのようにも思えた。あるいは夜空の星たちに直接尋ねているようにも思えた。もし星たちに尋ねているとしたら、人語では通じないのではないだろうか。百歩譲ってもエスペラントくらいでないと。とか思っていたら、彼女が夜空から僕に視線を移した。 「ねえ？」 どうやら僕に尋ねていたらしい。僕たちは秋の夜長を堪能するためにベランダで星を眺めていた。リクライニング...
pale asymmetry | 2020.10.28 Wed 21:13
月の横顔を見るための日
JUGEMテーマ：ショート・ショート 「見て」 彼女が腕を伸ばし、斜め上を指差す。夕刻と言うにはまだ少し早い東の空に、半月が浮かんでいた。青白い半月が。 「こういうのいいね」 彼女が気持ちよさそうに笑う。北風が彼女の前髪をこっそりと踊らせている。 「こういうの？」 僕の問いに、彼女は半月に目を向けたまま答える。 「意味がある感じになったでしょう？」 「月を見るという意味？」 「そう」 「まあ、そうだね」 今日は二人とも休日だった。朝からひたすらにだらだら...
pale asymmetry | 2020.10.24 Sat 20:58
ハグとキスで私たちは世界を創る
JUGEMテーマ：ショート・ショート 午前五時三十分にアラームが鳴る。暗い部屋の空気にアラームが織り込まれる。もう朝は寒い。私の手は毛布から出ない。あなたの手も毛布から出ない。きっと、あなたも寒いのだろう。アラームだけが踊っている。乏しい部屋の光子から光子へと飛び跳ねて、その粒子をステップにして、跳ね飛びながら波を広げ、ああやっぱり光は粒子と波の性質を持っているんだな、と私に気づかせる。また夢の水面から沈んでいこうとする私に。 「ハグとキスとどっちが好き？」 あなたが耳元で...
pale asymmetry | 2020.10.20 Tue 22:20
Naked singularity
JUGEMテーマ：ショート・ショート 「裸の特異点って知ってる？」 彼女が歌うような抑揚で言う。北風が心地好い午後。僕たちは海辺の公園でベンチに腰掛けている。モラリストではない僕たちは、肩を寄せあって腰掛けている。乾いた風と陽光のバランスは絶妙で、僕は少しだけ眠気を抱えていた。 「裸の特異点って、ブラックホールの？」 「そういう言い方で反応するのならば、一般相対性理論の？ って言って欲しいところだけれどまあいいわ。そう、今あなたがイメージしているその裸の特異点よ」...
pale asymmetry | 2020.10.14 Wed 21:48
Cheetah and gyro effect
JUGEMテーマ：ショート・ショート 「チータージャイロって知ってる？」 彼女が唐突に話し出す。夕食の後、温かいカフェオレを飲みながら。 「チーターとジャイロってこと？ それともチータージャイロという一つの言葉？」 僕は問い返す。並んでカフェオレを飲みながら。正確には僕はまだ飲んではいない。猫舌だから、カップに息を吹きかけていただけだ。 「うーん、解らない。どちらの可能性もあり。メモだから」 「メモ？」 「スマホのメモにそう書かれているんだけど、なぜそんなメモをした...
pale asymmetry | 2020.10.09 Fri 21:19
お辞儀をする少女
JUGEMテーマ：ショート・ショート 少女は深々とお辞儀をする。赤い自動販売機に向かって。とても愛らしく微笑んで、とても気品のある動作で。顔を上げ、少女は真っ直ぐに自動販売機を見つめる。もちろん微笑みは浮かべたままだ。その身体では、私と踊ることは出来ないのかしら？ と尋ねるように僅かに首を傾げる。自動販売機は返事をしないが、少女は苛立ったりしない。 少女は優雅な所作で、自動販売機を抱きしめる。自動販売機は少女よりもずっと大きかったから、抱きしめていると言うよりは張り付いている...
pale asymmetry | 2020.10.03 Sat 21:50
砂糖菓子を失う季節
JUGEMテーマ：ショート・ショート 「フルーツの色ってあるじゃない？」 彼女からの突然の電話。僕は職場の中庭で、ハムエッグサンドイッチを食べながら空を見上げたりしていたときだった。 「フルーツの色？ リンゴの色やさくらんぼの色ってこと？」 「そうじゃなくて、総体としてのフルーツの色の話。フルーツの色はどんな色？ って訊かれてイメージする色はどんな色なのか、という質問です」 「なるほど、質問の意味は解りました」 「で、解答は？」 僕は少しだけ考えてみる。フ...
pale asymmetry | 2020.09.30 Wed 21:50
踝にイミテーション
JUGEMテーマ：ショート・ショート 少女の踝には、アンクレットが巻かれている。 波打ち際に少女は腰を下ろし、踝で水と戯れている。衣服が濡れることにはお構いなし。両手はもう砂まみれだ。それは細かく砕かれた珊瑚の欠片たちで、だからその両手は装飾されていると考えることも出来るかもしれない。日は十分に傾いていたけれど、それはまだまだ鋭すぎる。少女は眩しさに目を細めて、それでもその眼差しは挑発的だ。私に対してではない。太陽に対してでもない。自分自身と、前世の自分と、来世の自分に対して...
pale asymmetry | 2020.09.26 Sat 21:37
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