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JUGEMテーマ:ショート・ショート 突然雨が降り出した。いや、突然という表現は間違っているかも。今朝の天気予報では、今日は一日雨だと言っていたのだ。けれど午前中、風景の何処にも雨の要素はなく、この後に雨が訪れそうな気配も感じられなかった。それでも私は出かけるときに傘を手にした。自分の感覚よりも天気予報を信用して。そういう自分のことを私は好きだったし、そういう自分のことを私は嫌いでもあった。 雨の中を私は歩く。そろりそろりと。雨は人差し指を立てて息を潜めるよう私に促している。...
pale asymmetry | 2019.02.14 Thu 20:44
JUGEMテーマ:ショート・ショート コインランドリーの入口で傘を畳もうとしたときトウコさんを見つけた。そして一瞬躊躇してしまった。傘を畳むことを、コインランドリーに入ることを、呼吸を鼓動を。トウコさんが苦手というわけではない。職場以外で同僚と出会うことが、誰であれ苦手なのだ。トウコさんはベンチに座ってラップトップを見つめている。彼女の足下で、小さなロボットがノロノロと歩いている。ドラム缶に手足がついたような、二足歩行型のトイロボットだった。 「おはよう」 トウコさんが顔を...
pale asymmetry | 2019.02.08 Fri 20:07
JUGEMテーマ:ショート・ショート 海水浴なんてどうだろう、真冬だからこそ。と彼が言うので私たちはモスクワの海に出かけることにした。ビーチチェアを二つ並べて、私たちはだらしなく横たわる。サングラスをかけて、甘ったるいカクテルを脇の小さなテーブルに用意してみたり。さすがに水着にはならない。真冬だし、空気だってないし。いやちょっとはあるのかな。その辺りはよく知らない。重力もかなり弱かったはず。ウサギみたいに軽やかに跳べるくらいに。 その辺りのことは何とかしよう、僕が鬼...
pale asymmetry | 2019.01.09 Wed 21:36
JUGEMテーマ:ショート・ショート メモには、『貴婦人のボンネットのような花』と記されていた。 何度読み返しても、何故こんなメモを残したのか全く思い出せない。そこには合わせて日付も記録されていて、約二ヶ月前の日付だった。記憶を手繰ってみる。二ヶ月前に何か普段とは違う出来事に出会っただろうか。そんなことはなかったはずだ。出不精の私は、日常では決まった範囲のなかをうろうろする生活を送っている。職場、コンビニ、書店、たまにショッピングモール。全て家から三十分以内のエリアにある。旅...
pale asymmetry | 2019.01.01 Tue 20:48
JUGEMテーマ:ショート・ショート 少年が撮ったのは、ナナホシテントウだった。彼のスニーカーの、お気に入りの緑のスニーカーの、白い靴紐の上に止まっていたナナホシテントウだった。真昼の角張った陽光を受けてナナホシテントウはてかり、世界がそこに吸い込まれそうだと少年は感じた。 少年はその画像をSNSに投稿した。『世界の循環点』とタイトルをつけて。それは見えない空中の路地にばら撒かれ、世界中に散乱され、たくさんの人たちに蹴飛ばされ踏みつけられた。 それを拾い上げた少女もいる。 ...
pale asymmetry | 2018.12.31 Mon 20:49
JUGEMテーマ:ショート・ショート まずは、器を選ぶことから始まる。器は三つあった。三つともごつごつとした感じの形をしていた。黒地に淡く輝くような青緑の模様、何かが流れ去るような模様の入った器を僕は選んだ。銀河のようで格好良いと思えたから。 「それを選ぶと思ったわ」 ミツハさんは穏やかに笑った。 「どうして分かったの?」 「あなたは、こういう拡がりの深いものが好みだから」 見透かされているような、そうでもないような、何とも微妙な応えが返ってきた。ミツハさんはきりっ...
pale asymmetry | 2018.12.29 Sat 20:55
JUGEMテーマ:ショート・ショート 浴衣ってね、見た目ほど涼しくはないんだ。 着付けするのにコツも要るし、キレイに着るの、結構大変なんだよ。 でも、初めてのわりには上手く着られてるでしょう? 帯だってね、今時よくあるワンタッチのやつじゃなくて、自分で結んでみたかったから、調べて、練習したの。 思ってたよりナナメになっちゃったけど……これでも頑張ったんだから、笑ったりしないでよね。 花火、もう始まっちゃったね。 確かに、ちょっと遠いけど、ここからでも...
言ノ葉スクラップ・ブッキング〜シーン&シチュ妄想してみた。〜 | 2018.12.22 Sat 22:06
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「宇宙人ってどんなだと思います?」 珍しく仕事がはかどり、終業時刻三十分前に今日処理すべき案件が全てが終わっていた。ササちゃんもそうだったらしく、PCのモニタを見つめて、仕事しているふりをしながら訊いてきた。 「いる前提なんだ」 「いますよ。そこは譲れません。姿形はかなり譲歩できますけど」 「なんの交渉? 私的にはメカニックな容姿がいいな。何となく」 「同感です。それに私たちが出会える宇宙人ってそういうのの可能性が高いじゃないです...
pale asymmetry | 2018.12.19 Wed 22:03
レッチェと涼は、拠点近くのビーチへと釣り道具を持ってやってきた。 「真っ暗ー!」 涼は、暗くて先も見通せない暗い海を見渡した。 ビーチの右側には、小さな桟橋があり、2人はそこから釣りをするつもりだ。 「涼ちゃん、はい」 レッチェは、涼に今日はルアー釣りをしようと、ルアーを差し出した。 「これでよし」 涼は、ライン(釣り糸)にルアーを取り付けた。 「先にするね?」 「おう」 涼は桟橋からルアーを投げ込んだ。 レッチェはというと、何やら黒い袋の中からキラキラ光るものを取り出した。 「あ...
チームSECHS! | 2018.11.19 Mon 08:15
JUGEMテーマ:ショート・ショート 「貴婦人と一角獣って知ってます?」 PCモニタを見つめ過ぎてこめかみが痛み出した午後三時、ササちゃんが隣の席から声を掛けてきた。目を向けると、大きく伸びをして激しく瞬きを繰り返している。 「貴婦人と一角獣って、フランスのタペストリーのあれ?」 「タペストリーって何です?」 「え? 壁に掛ける織物だと思うけど」 「ふーん、タペストリーとかフランスとかはよく解らないですね。私、貴婦人と一角獣はガンダムで見たので」 「あ、そう」 ササ...
pale asymmetry | 2018.11.12 Mon 21:02
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