JUGEMテーマ:ショート・ショート スーパーの入り口近くに、七夕用の竹が置いてあった。低い所にはたどたどしい文字で書かれたお願い事。笹の葉で隠すように、女の子らしい文字の短冊。やけに高いところに一枚。こそっと見たそれは、のっぽのうちの旦那のものだった。お望み通り、スペシャルカレーにしましょう。 ぱかりとふたが開いて、中のクリームがあふれ出てしまった。あの人、靴を磨いたりはするのにこういうツメが甘い。そんなことに気付いたのは、やっと新しい苗字で呼ばれることに慣れてからだった。覆水盆に返らず...
M00n-machinery | 2012.09.02 Sun 14:07
JUGEMテーマ:ショート・ショート 昔、あれを海に浮かんでいる船の光だと思い込んでいたの。だけど、全然違ったのよ。高速道路の明かりだったの。隣の世界に繋がった空間なんてここにはないのにね。姉は毎晩必ずこの寝言を言う。長いこと臥せっているので、海はおろか家から出たことすらないのに。 ポイントカードがたくさんある。整理しようと思い立ったが、店がなくなったり、引っ越してから行かなくなったものばかりだった。さっさと捨てて、残りを確認する。それらは全て自分の名義でなく、住所が再来週の引越し先になっ...
M00n-machinery | 2012.08.26 Sun 23:57
JUGEMテーマ:ショート・ショート カレンダーをめくり、日付を凝視する。友達もいないし趣味もないからずっと家のなかにいた。動かないからそんなに腹も減らないし、風呂もカラスの行水。今日は何曜日だっけ? 連休って終わったんだっけ? あれ、そもそもオレ働いてたっけ? これは休みボケに入るのか? 遠い遠いスポットライトから伸びる、細い影が私とあの人をたまたま繋げている。手が届くくらい近寄ることも、話しかけることもできる。けれど見えない境目が確かにそこにある。届かない、でもあの人はわたしの好きな人...
M00n-machinery | 2012.08.19 Sun 22:39
JUGEMテーマ:ショート・ショートひとり、本を読む。優しい時間。マスターの微笑みにウィンクをして、本の世界の扉を開ける。鼻先にたゆたう珈琲の香りを感じながら、ゆっくり、ゆっくりと、時が過ぎていく。----夕暮れ時、”カフェ”というより”喫茶店”という言葉が似合いそうなこのお店には、あたしとマスターしかいなかった。本日の珈琲を頼むと、「本日の珈琲はマンデリンといってね、コクがあって、芳醇な香りと奥行きのある苦みが特徴なんですよ」と低い声で説明を加え、コトリとカップを置いてくれた。珈琲豆を挽いて湯を沸かし、...
PEACH! | 2012.08.15 Wed 02:10
JUGEMテーマ:ショート・ショート 昨日、引っ越したばかりの先輩のうちへ遊びに行った。鍵かけといてーと奥から声がして、僕はいわれた通りに閉めた。さあ、上がらせてもらおうと靴を脱ぎかけた瞬間、真後ろからガチャガチャ!と音がした。ノックの音じゃない。執拗にチェーンを揺らすのは誰だ? 最近良く晩飯一緒に食うから、彼女の部屋にいることが多いんだよ。で、気付いたんだけど。オルゴールみたいな感じの曲が時々聞こえるんだよね。だけどさ、ほら、オレの彼女音大行ってるっていったじゃん、前。あいつのマンション...
M00n-machinery | 2012.08.12 Sun 19:53
JUGEMテーマ:ショート・ショート 好きなスイーツは、マカロン。行ってみたい場所は、ルーブル美術館。好きな作家は、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ。好きな色は、赤と白と青。だけども、彼女は決まってこう答える。「あたし、別にパリジェンヌじゃないから」 手袋が片方落ちていた。そのまま歩いていると、もう片方も落ちていた。さらに行くと、帽子、コート、カーディガン、スカートと落ちていた。面白くなって追い続けると、最後には靴。その先は崖。靴はきちんと揃えて置かれていた。 そういえばもう休みな...
M00n-machinery | 2012.08.05 Sun 21:49
JUGEMテーマ:ショート・ショート マンホールの蓋がずらされているのに気が付いた。もちろん避けて歩く。それは度々見かけた。気を付けてはいたが、とうとうある日引っかかった。どうやら頭をぶつけたみたいで、よく見えない。ようやく目の前のカクカクした文字にピントが合った。「コンティニュー?」 アドレス帳で君を0番に登録しているのは、1番よりも好きだからで、登録番号にすら愛を込めているからなんだけど。片思いだから、多分これが一生伝わるこ とはないだろうなということは分かっている。そもそも均等な両想...
M00n-machinery | 2012.07.29 Sun 23:04
JUGEMテーマ:ショート・ショート 無加工の顔で、あわてて待ち合わせ場所に向かう。なんでアラーム止めてケータイ握り締めて寝てんのよ、私。今日は絶対遅刻したらまずいのに!でもそこは大人だからどうにかメイクもしたのよ。あ、この写真よ。弟の結納の時、ジャケット裏返し値札つきで微笑んでいるのが私 時がとまればいいのに……。そんなロマンチックなことを最後に思ったのは、いつだったかしら。ホントねぇー。今じゃ隣にいれば、息がとまればいいのにとしか思えやしないわ。リビングから母のいつもより明るい笑い声が聞こ...
M00n-machinery | 2012.07.23 Mon 02:32
おすすめのリンク、おすすめの番組。最近のSNSは何でもこうだ。もちろんストライクゾーンに入りまくり。ついチェックしてしまう。ん、新しい機能?「あなたにおすすめの縁切」そこに最近会わない友人の名前が並んでいた。カチカチッとクリックをする。SNSは本当に便利だ。 携帯を弄りながら歩いても、人の気配は何となく分かるので、よけているつもりだった。向かいから足音がして僕が左へよける。しかし、よくある互いに同じ方向へということになってしまった。ぶつかったと思ったが、誰もいない。足音はきちんとすれ違い、遠ざ...
M00n-machinery | 2012.07.15 Sun 22:36
毎月9のつく日(月3回)更新しているtwnovelのまとめです。 忘れ物をした彼女を追いかけると、彼女は目を会わさずに言った。「別れて欲しいの」「他に好きな人が出来たってこと?」「いいえ、好きな人がいないから、別れたいの」僕は彼女の忘れ物を元の指に返すことが出来なかった。 早速応募すると、思ったよりも時間はかかったが狭き門を通れた。だが、看板に偽りアリ。初めは瞼を上下させるだけの簡単なお仕事なんて書いてあったのに。「泣き声の大きな、元気な男の子ですよ。おめでとうございます」泣くことが仕事、か...
M00n-machinery | 2012.07.08 Sun 23:37
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