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JUGEMテーマ:小説/詩 私はそこで、母に向かい「こちらこそ、よろしくお願いいたします」と言葉を返さなければならなかった。本来なら、アルゴリズムに従いそのようにするはずだったが、結局それは実行できなかった。 お母さん、ただ今! あれえ、お母さん、少し痩せた? まず松村家の玄関ドアが開いた瞬間、女性の声が大音量でそう叫んだ。 うわあ、玄関口、リフォームしたんだ。綺麗になったねえ! あ、カラーリリー。お母さんこの花好き...
葵むらさき言語凝塊展示室 | 2023.07.02 Sun 21:02
いたたまれなくとびだす夜 さわぎからのがれるのはいつだって 張本人だ 酔っているのはわかっている わるいのはだがぼくなのだ もうわかれるしかない 潮時さ やみくもにはしっているともうここからさきへはいけない なみ うみだ 汐風 夜露 そして警官 けものもほえている みをまもるものがなにもないままうずくまる かなしみはこの際 なにもしてはくれない ひざしのまえにさわがしさでさめる 夏がきている 戦争はとっくにおわっているのだ そうしてあの娘がぼくの寝顔をとろうとしている
with a kiss, passing the key | 2023.07.02 Sun 00:00
JUGEMテーマ:小説/詩 電源がオンになる。 良星家族保険の小会議室内部の画像が捉えられ、また私の正面には昨日初めて知り合いとなった田代が存在していた。 「おはよう、彩夏さん」田代はそう言って微笑んだ。 「おはようございます、田代さん」私は返事をした。 「えー、今から、あなたのご両親のお住まい……あなたに取っては実家、ということになるのかと思いますが、そこへ、私と一緒に行ってもらいます。いいですか?」田代は私に確認を取った。 「はい」私は頷...
葵むらさき言語凝塊展示室 | 2023.06.27 Tue 19:09
JUGEMテーマ:小説/詩 「ああどうも、遅くなりまして」橿原は黒いスーツに身を包み、長身の体を縮こまらせて深々と会釈した。 「いえ、お忙しい中ありがとうございます」慶子は橿原の肩にも届かぬ程の身長だが背筋を伸ばし、少しだけ上体を傾けて会釈を返す。「あの」それからバッグの中を急いでまさぐり、不祝儀袋を取り出す。「すみません、こんな形で申し訳ないんですが、お線香代で」両手にそれを持ち橿原に差し出す。 一夫とも話し合い、袋が一センチ近くにもなる程の金額を包んだものだ...
葵むらさき言語凝塊展示室 | 2023.06.18 Sun 20:52
とおざかる 昨日のこと 昨夜あったこと つまりはあのひと なぜわたしは旅人ではないのか そしてあのひともまた すでにそれは過去 だがわたしはあそこへかえらねばならない つまりは日常 あのひととはもうあえぬ そしてあわずにすむかもしれない しかし またであう その可能性はある だがわたしはかえってくる かえらねばならない いまはただそこからそのことからそしてそのひとから とおざかっている それだけなのだ
with a kiss, passing the key | 2023.06.18 Sun 00:00
JUGEMテーマ:小説/詩 目醒めたら私はロボットになっていた。 ねえ、お母さん。 お母さんはなんで、私に冷たかったの? なんで私に優しくしてくれなかったの? 私はお母さんに、甘えたかったんだ。 それとも、お母さんの方が正しくて、私が間違ってたのかな。 甘えたがった私が、いけなかったのかな。 覚醒して最初に私の回線上を走ったのは、そういう叫び声だった。 女の、叫び声。 私はそれを検知した後、その部屋の天井を捉え...
葵むらさき言語凝塊展示室 | 2023.06.14 Wed 16:36
JUGEMテーマ:小説/詩 「ただーいまぁ」 そこに立っていたのは、少し恥らうような微笑みを浮かべた、ともりゅんその人だった。 ドアを閉めるなり、強く抱き締める。 「あいちろくん」ともりゅんの声が右の鎖骨の辺りで甘えた風に呼ぶ。 返事代わりに長いキスをする。 ともりゅんの内部の熱が高まってくるのを感じる。 唇を離すと、潤んだ眸で亜一郎を見つめた後ともりゅんは不意にくすっと笑い、亜一郎のうなじに両腕を回したまま足下をもぞもぞと動かして、あっという間...
葵むらさき言語凝塊展示室 | 2023.06.04 Sun 19:54
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