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淡路島では8月の1、2、3日に『島まつり』があった。 海峡の向こうは徳島なので踊りは やはり『阿波踊り』である。 「本町(ほんちょう)」という商店街の丁目や会社ごとに そろいの浴衣を着た”連” が夕方から踊り歩く。 3日の夜には海の上に花火が上がる。 これは かいちゃんの絵日記の定番の題材であった。 花火が暗い夜空に上がるからといって 画用紙を黒く塗ってしまってはいけないことを かいちゃんは ”お正月の絵” の失敗で学習してい...
あべゆかり の 回想法ノート | 2017.05.10 Wed 21:49
天衣無縫の”やえちゃん” は母の一番下の妹だが 幼い頃に母親が亡くなったために 兄弟姉妹に育てられたようなものらしい。 歌うことが好きで観光バスのガイドさんになり、 お給料をためらうことなくお洒落や遊びに使い、 映画や喫茶店に連れて行ってくれたりした。 やえちゃんには変なクセがあって、 食べ物を必ず 最後に少しだけ残す。 お茶碗の底には必ずご飯が残っているし トーストもふたくち分くらいお皿に置いてある。 かき氷はぜいたくに...
あべゆかり の 回想法ノート | 2017.05.06 Sat 17:47
叔父の寿司屋のある通りの角に ”食堂” があった。 うどんと丼物の小さな店だが2方向にガラス戸があり 明るくて広い感じがする。 夏になると『かき氷』の器械が店先に据えられた。 かき氷器は青い鉄のかたまりで 片側に大きな丸いハンドルが縦に付いている。 パーマネントをかけたおばさんが箱の中から 大きくて四角い透明な氷を取り出して 器械の中ほどの丸いテーブルのようなところに どんと置く。 とげとげのフタのようなものを下ろして氷を...
あべゆかり の 回想法ノート | 2017.05.05 Fri 21:51
叔父の寿司屋は繁華街のはずれにあって、 店のすぐ裏の長屋のひとつを住居にしていた。 寺町という お寺がたくさん集まった地域で、 ぱらぱらとある商店のひとつに「貸本屋さん」があった。 ”やえちゃん”という若い叔母が 最初にこの貸本屋さんに連れて行ってくれて、 数冊のまんがの本を借りてくれた。 やえちゃんは”まんが好き”で 「のろいの〇〇」とかいうのが特に好きであった。 貸本屋さんの本はあまりきれいではなく 表紙...
あべゆかり の 回想法ノート | 2017.05.03 Wed 17:19
母のすぐ下の弟は淡路島でお寿司屋さんをやっていた。 店の名前は『ひさご』と言い、 のれんに 瓢箪(ひょうたん)の絵が描いてあった。 店はカウンターと小上がりがあって 叔父がひとりで切り盛りしていた。 奥の部屋では叔母が寿司飯を作っていた。 直径1メートルもあるような飯切(はんぎり)に 白いつやつやのご飯がいっぱい入っていて 合わせた酢をしゃもじで振りかけ、ご飯を切るように混ぜる。 裏の戸を開けたとたんに酢の匂いがあふれ出し、 店の...
あべゆかり の 回想法ノート | 2017.04.30 Sun 21:06
祖父母の家ではお手伝いなど全くしなかったから お風呂がどうやって沸かされていたのか分からない。 たぶん祖父が井戸水を汲んで 祖母が薪を燃やしてくれていたのだろう。 子供とはいえ怠け者の かいちゃんであった。 風呂桶は木で出来ていて丸くて深い円筒形だった。 納屋の横にあって2方が板で囲ってあるだけだから 人が訪ねて来ると 入っているのが丸見えである。 洗い場というほどのものは無くて 板が二枚並べてあるだけだったように思う。 あまり...
あべゆかり の 回想法ノート | 2017.04.27 Thu 22:00
祖父母は海沿いの古い百姓家を借りて住んでいた。 玄関は無くて引き戸を開けるとすぐ土間で、 土間から50センチほどの高さに 板張りの台所と畳敷きの部屋があった。 部屋と部屋の境は障子を立てられるようになっていたが 夏は風通しが良いように全部 取っ払っていたので、 柱の位置だけが部屋の区切りを示していた。 お便所のことを祖父は『厠』と言っていたが、 お風呂と共に当然のように家の外にあって、 「トイレ」でもなく「便所」でもなく まさに『厠』という...
あべゆかり の 回想法ノート | 2017.04.25 Tue 22:55
祖父の家は天井が無くて 寝ころぶと屋根の丸太や梁が見えた。 ちょっとくらいの雨なら入ってこない構造の天窓は ヒモを引くと閉まるようになっていたが、 かいちゃんが行くのは夏なのでいつも開いていた。 障子のはまった窓にも網戸などなかったので、 ほとんど一日中、蚊取り線香を焚いていて、 夜には大きな蚊帳を吊った。 祖父母とかいちゃんと いとこ二人と、 5人が入っても狭苦しくない大きな蚊帳だった。 蚊帳は日向(ひなた)のような埃っぽい匂...
あべゆかり の 回想法ノート | 2017.04.24 Mon 20:49
浜には貝がらや木切れに混じって 海藻もいろいろ打ち上げられていた。 かいちゃんが浮き輪でちゃぷちゃぷ漂っていると 祖母が浜辺で赤茶色の海藻を拾っていた。 赤茶色と言ってもべろべろしたのやら くしゃくしゃしたのやら 微妙に違っていて、 祖母が集めているのは細かく ちりちりした 『テングサ』という海藻であった。 探して持って行くと たいてい 「これは違う」「これも違う」と言われるので かいちゃんは 波打ち際でちゃぷちゃぷするほうに戻った。 &...
あべゆかり の 回想法ノート | 2017.04.23 Sun 22:42
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