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仮名つかひ 歴史的仮名つかひと現代仮名つかひの相違はハ行動詞の活用だけに眼を奪はれがちだが、それはほんの一部である。表音を名目にして、目立たない多くのところで無条件な一律化が行はれた。それによつてなにが失われたかといへば、語源が断ち切られてしまつた。たとへば鼻血は漢字からみてもわかるやうに、「はなち」「はなぢ」であるが、これが「はなじ」になつてしまつた。これでは「じ」は「庤」と間違へかねない。 ゴミとして捨てるのならまだしも、心の襞や思考の詳細な細部を表現し...
蛮茶庵 | 2011.10.03 Mon 13:52
表音とは 戦争に敗れた後の日本ではことばに関する極端論が横行してゐた。戦争に敗れた原因を、習得するのに長時間かかるといふ日本語にするものもゐた。また志賀直哉のやうに、いつそ日本のことばをフランス語にしたらといふものまで現れた。かういふところからもわかるやうに、当時は日本語に対する否定的雰囲氣が圧倒的であつた。それに背後には、先に見たとおり、占領軍の言語政策が控へてゐた。表音をめざす人々にとつてはそれはお墨付きそのものだつた。 紆余曲折はあるが、いま使つてゐる日本語...
蛮茶庵 | 2011.10.02 Sun 18:04
なぜ? 日本とアメリカが戦争をしてゐたとき、アメリカにとつて不可解だつたのは、戦況から判断してもわかるやうに、絶対的に不利な戦争を日本人はなぜ続けるのかだつた。アメリカが憶測したのは、日本人は文盲で、字が読めない。だから戦況がわからない。戦況が理解できないから、戦争を続けるのだと。 さういふ疑問があつて、占領直後、アメリカ軍は日本人の識字率調査を実施したのである。しかし予想に反して、日本人の識字率は非常に高かつた。それがまたアメリカにとつて理解できない新たな謎にな...
蛮茶庵 | 2011.10.01 Sat 13:38
トラウマで 第二次世界大戦といふのか、太平洋戦争といふのか、どういへばよいのかわからないが、アメリカ軍の空襲で、東京は皇居を残し、焼け野原になつた。さういふ写真が社会科の教科書に載つていたから、だれでも一度は見てゐるはずである。食べものもなければ着るものもない。もちろん住む家もない。そのやうな喰ふに喰はれない敗戦直後といふときに、國語改革が行はれたのである。さういふところから國語改革を火事場泥棒の所業とみなす人もゐる。 さらにさかのぼると、國語改革の背後には、ペリ...
蛮茶庵 | 2011.09.30 Fri 13:46
なにも知らないのが実状 海外に行つたおり、自分の國のことを質問されたりする。自國のことだから、なんでも知つてゐると思つて、自信たつぷりにかまへてゐると、急に窮地に陥つて、冷や汗かいて、シドロモドロしてしまふ場合が往々にしてある。後で考へると、知つてゐると自分で思つてゐるだけで、実はなにも知らないことを思ひ知らされる。 一番恥ずかしいのは、ことば、つまり日本語について訊かれて応へられないときである。毎日話し、困つたことなどない。熟知してゐると信じて疑はない母語、意識...
蛮茶庵 | 2011.09.28 Wed 20:52
先ごろ「個人はみな絶滅危惧種という存在」を出版された彫刻家の舟越桂さんの言葉です(19日の『週刊ブックレビュー』)。舟越さんは何か思いつくとメモを書き残すそうです。だからその新刊にも、そんなメモから生まれた言葉がたくさん詰まっているのでしょう。でも言葉って本当にそう。いいキャッチが浮かんで喜んだのも束の間、すぐに消えてしまうので要注意です。それが思いだせないときの失望感は、ちょっと悔しいです。 JUGEMテーマ:日本語
いいコトバ | 2011.09.26 Mon 00:06
伝達不能 ことばは時としてむつかしい。相手にもよるが、説明してもことばが届かない場合がある。なぜことばが届かなくなるのか。オッペンハイマー(1904 - 1967)とトルーマン(1884 - 1972)の例の会話が典型的ではないだらうか。 原子爆弾を落とした広島と長崎の惨状を知つたオッペンハイマーはトルーマン大統領に向かつて「大統領、私の手は血にまみれてゐます」と言ひました。 トルーマン大統領はポケットからきれいに折り畳んだ白いハンカチを取り出して「これで拭きたまへ」と言ひました。 ...
蛮茶庵 | 2011.09.22 Thu 20:50
Aphorisme 0132 常用漢字表にないから「邁進」を「まい進」と表記して法を遵守します。 常用漢字だけれど社の方針で使はないことに決めてゐます。 だからそれを遵守して「氾濫」は「氾らん」とします。 さうなると台風で河川が「氾濫」しても新聞の見出しは「氾らん」ですね。 おなじく常用漢字だけれど社内の取り決めを「遵守」して「じゅん守」とします。 つまりオラが法といふことですね。 JUGEMテーマ:日本語
蛮茶庵 | 2011.09.21 Wed 18:09
あとがき 基本的に本を読んでも「あとがき」は読まないことにしてゐる。「あとがき」を読むことで、著者の意図するところが、いま以上に、わかるかもしれないが、さうしてわかつた積りになるのもどうかと思つてゐる。 読者は、著者の意図とは関係なく、本のどこに宝物を発見するかわからない。「あとがき」を読み、それを大切にする餘り、宝物発見の可能性をなくしてしまふかもしれない。だから「あとがき」は読まないことにしてゐる。 仮名づかひ 先日再読するのに本を書架から取り...
蛮茶庵 | 2011.09.20 Tue 13:31
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