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黛まどか『句集 花ごろも』(PHP)より

    1997年。 「月刊ヘップバーン」代表。 春の波恋に引き際ありにけり 初蝶の消えたるあたり草匂ふ 湖の面のひと揺れに発つ花筏 花冷のくちびるをもて黙らさる 芹摘の帰る帰ると言ひながら バレンタインデーカクテルは傘さして もう声のとどかぬ船や春日傘 土筆出ていきなり大き山に会ふ 青き踏む好きになること止めたくて また同じタイプに夢中万愚節 みほとけのやうに抱かれて花の雨 春一番あしたの私連れてくる 船長はいつも後ろ手鳥雲に 東京の顔で戻りし盆休 ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2023.01.15 Sun 23:06

宇都宮敬子『句集 琴弾鳥』(ウエップ)より

    2020年。 「鴫」「貂」同人。 第2句集。 曹達水シュワッと何か失へり 大皿の模様のやうに舌鮃 鎧ひたる騎士の風格夏館 踏んで脱ぐ水着に草の匂ひかな 隣国の文字まだ読めず冬銀河 数へ日や本は書棚を出でしまま 踏み入りて明日のやうな雪の原 船虫の散りて亀の手残りけり 充電のやうに幹抱く秋の蝉 秋蝶の空気抜くごと羽たたむ 寒芹に抜身のやうな水流る 釣舟の幅に薄氷開きけり 料峭の嘴に跳ねたる銀の魚 嘴太き鶯餅でありにけり カピバラを撫でて勤労感謝...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2023.01.14 Sat 22:18

渡部有紀子『句集 山羊の乳』(北辰社)より

    令和4。 「天為」同人。第1句集。 人日の赤子に手相らしきもの 夜店の灯にはかに玩具走りだす 秋ともし飛べない鳥の飛出す本 千本の影を整へ針祀る 聖夜劇天に吊りたる星あまた 卒業歌前のみを向き立尽くす 行く春や餡の重たき中華菓子 大利根の光も容れて袋掛 二階より既に水着の子が来る 月蝕を蜜柑二つで説明す 飛込みし鳥の重さや花万朶 ゆつくりと指揮棒を振り春惜しむ 朝焼や桶の底打つ山羊の乳 落椿丸ごと朽ちてゆく時間 蒼天の剝落として...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2023.01.08 Sun 22:55

渡辺花穂『句集 夏衣』(北辰社)より

    令和2年。 「天穹」「銀漢」同人。第1句集。 芽吹き初むこの木なんの木気になる木 電池切れの怪獣を抱く昼寝の子 破芭蕉切り取り線のあるやうな 生クリームの角が立ちたる天高し 蜥蜴出づクレオパトラの浴槽に 春の星ハープの余韻膨れ来る 寝たふりの園児もゐたる昼寝時 星涼し馬乳酒の杯高々と マヨネーズのさいごの絞り鵙高値 九体仏にまみえ白息しづめけり 薄氷を絵踏のごとく歩みけり しやぼん玉目の前に来てこはれけり 夕端居をりをりに聞く風の詩 母の...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2023.01.08 Sun 00:43

渡辺四日女『句集 若松』(狩俳句会)より

    平成3。 「狩」同人。第1句集。 喪の涙かくす日傘を斜めにし 許されて術後に吸ひし青みかん 薬臭の看護婦薔薇を嗅ぎゐたり 米うまい近江にあまた捨案山子 鉄打つを見てゐて同じ汗流す 医学書の五臓六腑を日に曝す 藁塚に声かけてゆく老農婦 聖き夜を病む身ほとりの白づくめ 一の糸五の糸和して琴始 煮えそめし蓋の傾き大根焚 蜆汁すすめて病にはふれず 子が吹いて思はぬ高音菖蒲笛 丸刈りに角刈りにして寺さつき 桟橋に混む海の火蛾陸の火蛾 頬被りして藍染...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2022.12.29 Thu 23:53

第377回坐忘会 令和4年師走句会

JUGEMテーマ:俳句    開催日:令和4年12月4日(日)  場 所:本堂 南寮会議室  参加者:8名 投句者:7名    幽谷先生入院中に付き欠席。総裁老師、玄妙さん、妙珠さんのご多忙、欠席あり。少々寂しい会となりましたが、発言活発で楽しい令和4年最後の句会となりました。  最高得点者は ”竜穏さん” でした。    今回の兼題は 「冬銀河」「白鳥」「埋火」     ------各自の高得点句を紹介します。--------   ※冬銀河居酒屋の軒猪吊ら...

座禅修行だより | 2022.12.22 Thu 10:06

大堀柊花『句集 増』(本阿弥書店)より

    2002年。 「狩」同人。第2句集。   舞初や見えざる富士へ手をかざし   鬼女出でて火の強まりし薪能   くちびるをうるほせしのみ菊の酒   湯豆腐の角ふれ合うてそこなはず   恵方へと水上バスに人あふれ   灯を入れて涅槃哭く声よみがへり   調教の鞭はつかはず花に沿ひ   木の橋のあうらにやさし蛍狩   殺しなきことのさみしき夏芝居   三伏の雲の白さのただならず   嚏して...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2022.12.19 Mon 00:30

藤田柊車『句集 望潮』(ふらんす堂)より

    2007年。 「狩」「廻廊」同人。第2句集。 花篝城を影絵のごとくおき 囀りを四方より入れてマリア堂 胡桃割る怒りの力かりて割る いさかひの相手もなくて啄木忌 ポケットベル鳴りて花野を引き返す オリオンの胸へ一挙にとんどの火 わた飴に顔のかくれて七五三 火事跡の残る柱に火伏護符 諾はず拒まず解かず懐手 汗の身にのぞく異国の懺悔室 門火焚く膝より低く火を育て 裸木となりてみなぎるものの影 山の風もろとも封じ袋掛 花冷の膝を揃へて渡し舟 灸花死...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2022.12.13 Tue 23:07

渡辺四日女『句集 一笛』(ふらんす堂)より

    2007年。 「狩」同人。第2句集。 陶房のちらかる中の壺に梅 水たんと貰ひし雫つり忍 利かぬ気のおでこに一つ天瓜粉 えりぬきのものを手向けて今日の月 明けきらぬうちに空つぽ狩の宿 火事跡のホースをまたぎ立ち話 口伝へ叩き伝へて壬生の鉦 おもひきり水着を絞る海に向き 突張つてゐるをかしさよ帰省の子 看護婦をそはそはさせて焼芋屋 松籟のぴたりと止んで蹴鞠始 探梅やあへぎ登れば海ひらけ 目配りの鋭き歩み孕み鹿 おいそれと事成らずして桐一葉 どこ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2022.12.03 Sat 22:26

右城暮石『句集 虻峠』(角川書店)より

    昭和55。 「運河」主宰。第3句集。 外燈の下に入り来て雪払ふ 雨待てり水の無き田を耕して 下界より見し白さなし雪渓は 深き雪犬踊り入り踊り出づ 天井に貯へゐたる牡丹雪 吾に向き向きを変へざる蟇 泳ぎ着き少年歩く大股に 蛇もまた人間嫌ひひた逃ぐる 柿山をのぼりて蜜柑山くだる 飛び翔てば全身黒き鴨となる 日本を船で離れて墓参り 風邪の子の部厚き絵本手放さず 鯨飼ふ太平洋の潮堰きて 坐して見る立ちて見る大涅槃図を 街路樹の瘤京都市の底冷えす ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2022.11.30 Wed 00:15

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