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中村与謝男『句集 楽浪』(富士見書房)より

    平成17。 「幡」星辰集作家。 第一句集。 田水張り青天を田に漲らす 黒葡萄包む「山梨日日」に 義姉にときめきしことあり栗の花 体操の息揃ひたる広島忌 双六の終の二人となつてゐし 豆粒のごとく現れ耕せり 沙羅の花見つめてをれば散り難き 帰省子に立ちはだかれる大江山 朝涼のひらめきごとを走り書き 流燈を水に放ちて残れる手 白桃のやはらかく刃を受け入れし 黒きビニールそれだけの鳥威し 立冬の丹後にガラス質の雨 少年の鋭角の肘泳ぐなり 観桜の...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.07.14 Sun 23:43

畠中順一『句集 うはずみ桜』(自家版)より

    平成11年。 そばだてし耳に初音の応へけり 高層のビルが見下ろす青嵐 燈火親し充棟の書を侍らせて 着膨れしわれをポストの笑ひけり 大粒や四万十川の夏の雨 窯出づる備長炭の棒紅蓮 佐保姫も驚く数の犬ふぐり 鳥語聞き渓声を聞き坐禅草 銀杏落葉踏みて紅顔蘇る 掌をのせて少女驚く夏薊 蜩の声拾ひ聞く蝉時雨 民宿の灯に邯鄲のセレナーデ 烏瓜いのち一夜の花真白 靖国に詣る詣らぬ終戦日 老人の海を見てゐる開戦日 城主顔して見下ろせり麦の秋 蝿を追...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.07.03 Wed 22:36

尾亀清四郎『句集 八荒』(銀杏発行所)より

    平成10。 「銀杏」主宰。第6句集。 最後はヨーロッパを旅した句で占められ、私が行ったのと近い年で同じ場所に行ってもいるが、やはり海外詠は難しいと思う。同時期の知っている場所でありながらさほど心に訴えない。いわんや知らない人ならなおさらだろう。 糶終へし糶子波止去るサングラス 甚平や傘寿の手足恙なき くちびるの薄きを当てて瓢の笛 小きざみの時に高音を瓢の笛 神環り神馬無聊の脚か踏む 梅園の一歩に得たり一花の紅(こう) 初花をわが誕日の机上とす 祭ぎ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.06.24 Mon 22:02

安田俊子『句集 冬薔薇』(ふらんす堂)より

    1990年。 「嵯峨野」同人。 軽やかに轆轤まはりて春立ちぬ 開扉して菩薩の御目花に向く をろがめばわれも善女や御身拭 過疎となる三戸に落花惜しみなく 花筏ついと離れてゆくもあり 掌に落花こころに古き恋ありぬ 花に立ち学徒たりし日思ひをり ゆれ残るふらここに夕迫りくる 旅鞄土産の新茶匂ひけり 屈葬のごと膝いだき暑に耐ふる 漁り火と競ふ宮津の夜店の灯 退院のことには触れずメロン切る ばらの香の極まりしとき崩れけり 去来墓小さきをたづね蚊にさされ ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.06.19 Wed 22:21

井沢正江『句集 晩蝉』(牧羊社)

    昭和52。 「雪解」同人。 浸す手に水の刃立つる泉かな 秘仏見る障子は白刃立つるごと 火の怒りあからさまなり古暖炉 すくひつつ白魚のみな指にそふ 落花まだ一片づつの間ありけり 一片にまなじり引かれ花ふぶく 片膝の起たんとほとけ堂若葉 わが歳の人の訃昼寝起たしむる 曳く杖のすでに分身秋の暮 黄落に立ち光背をわれも負ふ 日向ぼこ起ちてにはかに四囲くらき 一行のひまどる仏書読初に 春宵のをんなの煙草食(を)すごとく 道暮るる一人静も去りしごと ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.06.15 Sat 22:24

荻野信子『句集 推古の音色』(本阿弥書店)より

    1990年。 「雨月」同人。 太綱を地にお木曳の休みがち 善も悪も弥陀は一如と初法話 大吉にも一戒はあり初みくじ 春寒や降ろさるるなき磔刑像 こけし一つ買ふ惜春の旅の果 礫にも寄りくる迅さ柳鮠 炉塞いで畳まさをの小半畳 非力の手合はす他なき原爆忌 廊渡り来る看護婦の聖歌隊 老ごころ知るは老のみ冬ふかし 衣更へて志さむか句の軽み 毀損仏並ぶ宝蔵梅雨ふかし 梅雨冷の肘抱き齢さびしめる 涸るるまで滝の四季詠みなほ未完 大文字の客往年の下宿生 絞り...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.06.10 Mon 23:16

尾亀清四郎『句集 飛天』(東京美術)より

    平成6。 「銀杏」主宰。第5句集。 追馬の勝ちし合図の鉦たたく 渓流に瓜冷ゆるころ客来る頃 春月に放つ矢をもて神楽果つ 大梁に湯気岐れたつ薬喰 堂寒し大和坐りのみ仏と 汲みて売る寒鯉槽の底ひより みづうみに出てそれつきり春の雷 新彊に蜃気楼見て旅も果 次の間に積みて嵩なき藺座布団 月の宮神馬も小舎に目覚めをり 初斧の竹一本を伐りしのみ 常濡れの道来て滝に正面す 落しある水の音なく夕月に 竜田姫追ひてこの道滝に尽く 誰の手ものがれて自在雪...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.06.06 Thu 22:49

佐藤瑠璃『句集 尾白鷲』(東京美術)より

    昭和51。 秋櫻子門下。 公魚の湖はなれてはすぐ凍てぬ 傘触れて牡丹のひとつくづれけり 牧夫来て牛つどひそむ九輪草 絵硝子を影ひかり過ぐ夏の蝶 すぐ母に風邪さとらるる初電話 蘆花鏡花母の遺せし書を曝す 梟に白夜の森の暗からず うごくもの大雪渓の羊のみ 鯵刺の銜へし白魚ひかりけり 船追ひて蟹摑みゆく尾白鷲 竹伐れば高天原にひびきけり 流氷の相搏つ音や夜の港 流氷の起伏まばゆき日の出かな 魚籠ぬけし蛸ゐて海女の跪坐ながき 牧牛に宗谷の霧...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.06.02 Sun 21:54

大竹きみ江『句集 往くさ帰るさ』(牧羊社)より

    昭和60。 「雪解」同人。第3句集。 くさめして月にふたたび顔あげず 一塊の野火燃ゆ沼の面にも 花疲れ老の手をひくそのことに 涅槃図の隈なる蝶は吾がつれ来し 種芋を伏せて母の地うたがはず み仏を辞して日傘の道ふたたび 冷やかに観光は妃の寝所へも 闘牛に血湧かず汗の仏徒われ 初秋風十指ひろげてかよはしむ 御僧に別辞を萩に一瞥を 闇汁のとなりは仏間ゆるされよ 天よりの引く力いま凧のぼる ギプス出て五体わがもの青き踏む わくら葉や均らしてあれど爆地...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.05.27 Mon 22:21

由山滋子『句集 雪繽紛』(東京美術)

    昭和60。 「かつらぎ」同人。第一句集。 夭夭の一語を識りし夜長かな 鷽替の神事に巡査もまれけり 風花の地に触るるともなく消ぬる 一束の菫をもつて存問す 群青の深雪月夜といひつべし 我が声におうと出られし裸僧 一面にしろがね光り干鰯 登りけり風土記の丘の高ければ 男山われに対する端居かな 白き鬚もつるる花は烏瓜 露の径叡山百句志し 描きしごと黒猫をりぬ芥子の花 花伝書に対して灯火親しめり 燦々と日のとどまれる牡丹かな 炉の婆は素十先生語...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2019.05.20 Mon 22:06

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