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橋本多佳子『句集 命終』(角川書店)より

    昭和40年。 第5句集であり遺句集。 老いの顎うなづきうなづき紙を漉く 紙漉のぬれ胸乳張る刻が来て 露晒し日晒しの石桔梗咲く 「脚下照顧」かなぶんぶんが裏がへり 落日に群衆が透く川施餓鬼 蒟蒻掘る尻がのぞきて吉野谷 柿盗りを全樹の柿がうちかこみ 柘榴の裂けすでに継げざるまで深く 冬瀧の天ぽつかりと青を見す 爐より立ちひとりの刻をさつと捨つ 湖北に寝てなほ北空の鴨のこゑ うつむくは堪へる姿ぞ髪洗ふ 鉄格子天神祭押しよせる しやぼん玉吹いてみ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2020.09.02 Wed 23:55

尾池和夫『句集 瓢鮎図』(角川書店)より

    2017年。 「氷室」副主宰。第2句集。 比良八荒比良の見えざる荒れじまひ 暑つおすな生きとゐやしたん逢ひとおす あと一つ星飛べといひ星飛べり 君そこに花に埋もれるやうに立て 湖を渡り切つたる夕立かな この鰤は氷見とひときは声を張る 玉つくる間を負けてをり雪合戦 出番待つ畳にべたと獅子頭 蒲公英のあたりに停まり消防車 ゲルニカを前に汗拭くこと忘れ 馬術部の馬も新入り樟若葉 カクテルの氷ひとかけ高鳴らす 甜瓜ひとつのための回り道 地震情報ポケッ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2020.08.19 Wed 20:55

有本銀河『句集 秋の虹』(青磁社)より

    2014年。 「白露」「椎の実」所属。第1遺句集。 冬麗の空に入らむと観覧車 青梅雨や画廊のひとの眸すみ たかんなの糶や仁王の脇を借る 寒禽の声はねかへす石舞台 白砂に日の斑の散華鑑真忌 賑はひの巷にピエロ阪神忌 空梅雨の天に憮然と風見鶏 鳥雲に角張る文字の友好碑 弓なりの渚が見えて鳥渡る てらてらと撫で牛ありて梅真白 浮上して亀が首出す秋の風 釣瓶落としに本丸の総崩れ 香久山のいろの濃淡耕せり 絵筆もちたし木蓮の二月堂 さやさやと雨の前触...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2020.08.09 Sun 22:30

橋本美代子『句集 プラハの月』(角川書店)より

    2008年。 「七曜」主宰。橋本多佳子4女。第5句集。 永平寺雪解の溝に雪を捨つ 馬の顔ルオーの基督めく朧 そこここに落石そこに岩すみれ 花仰ぎつつ目的は別にあり 山藤をくぐり方位の狂ひたり しやぼんだま避けてはくれぬ松の幹 一日中さくら満開安息日 物言はず落花愛するもの同士 鳥曇読みさし借りつ放しの書 春眠の目覚めにダリの時計鳴る 一切のものを映さず滝落下 人間の罪説く牧師日焼けして 般若面掛けて人待つ夏座敷 兜虫完璧にして骸なる 水切つて水...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2020.08.01 Sat 23:47

野田節子『句集 糸車』(霜林発行所)より

    昭和55。 「霜林」同人。第1句集。 舟小屋に舟無き浦曲暮遅し 湖見えて旅のはじまる花菜風 春ふかし初めて貰ふ子の名刺 湖魚売の呼ばれて返す東風の橋 春寒し拭へどくもる銀の匙 ゆく春の椅子ふかく見るミレーの絵 波見つつ春愁わかつ姉妹旅 岐れ径までの語らひ夏つばめ 碁石くづす音やメロンの冷えごろに 山頂や摑みてかたき夏の雪 山葵咲く水冷たくて村の口 夕顔のひとつ開きて母送る 向ひ家に声のとどきて島涼し 夕焼の残る室町稽古笛 詩になら...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2020.07.25 Sat 23:04

鷹羽狩行『句集 十六夜』(角川学芸出版)より

    平成22。 「狩」主宰。第16句集。 音なきを山の音とや大旦 初富士の刃の反りを裾野まで 一枚の明るさを置く薄氷 下萌の月明りにもわかるほど 白梅の咲くに弾みのつきはじむ 春めくやわだちのなかの深轍 刃をたつるごとき声あり百千鳥 一と一出会ひて一に螢の火 虹立ちてたちまち色の束となる 豊満な蕾かかげて蓮田かな 老鶯の声の摑める近さとも 光堂色なき風の中に訪ふ 風の出て花野いちめん浮き上がる 爽やかや馬首を叩けば尾が応へ 風神を真つ先...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2020.07.14 Tue 23:08

明石志都江『句集 白日傘』(玉梓発行所)より

    令和2年。 「玉梓」同人。第1句集。 眠さうな太陽の塔うららけし 目借時膝の書物のすべり落つ 若作りして覗き込む初鏡 チューリップ私やつぱり赤が好き 夕暮れの風をさがしてゐる風鈴 夫の顔時々眺め梨を剥く 小流れの落葉が落葉堰き止めて 花先の風船葛もう風船 初夏の風いきなり帽子さらひけり よく鳴るや夫の遺品の鉄風鈴 万葉の里の柘榴のかくも裂け   JUGEMテーマ:俳句

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2020.07.11 Sat 21:11

鷹羽狩行『句集 十五峯』(ふらんす堂)より

    2007年。 「狩」主宰。第15句集。 年迎ふ山河それぞれ位置に就き 添へ書きはみな声もちて年賀状 一枚の凧一枚の海の上 老病死愛恋選句始かな 太陽へ雪間それぞれ声をあぐ 啓蟄や庭よりあがり稿を継ぐ 川上に鉄橋の弧や蓬摘 蝶と言ふ声に姿のはやあらず 日の暮るる前の明るさ燕子花 沸騰の湯気折り曲げて青嵐 靄あげて雨をよろこぶ夏木立 鮒ずしや食はず嫌ひの季語いくつ 牛・馬を洗ひしむかし夕焼川 山茶花の箔こぼれつぐ月夜かな 走り根が幹にかしづく神無...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2020.07.09 Thu 23:37

第326回坐忘会 葉月句会

JUGEMテーマ:俳句   第326回坐忘会が、平成30年8月19日に開催されました。 場所は人間禅道場南寮会議室。 齋藤幽谷先生には今回もまた、猛暑の中、横浜からお越し頂きました。 参加者9名、投句者5名の102句から参加者が選んだ各自の高得点句を紹介します。(順不同) 新涼や海月(クラゲ)は海の色もたず          幽谷先生   古里の絶へて幾年盆踊り              温雄 夏燕風より低く地を這へり             玄妙 義姉(あね)一人残る古里盆踊り...

坐忘会だより | 2020.05.21 Thu 18:51

朧月うしろ手に木戸閉めにけり 玄妙|四季折々(1)

JUGEMテーマ:俳句   『禅』誌の第?部「俳林」の中に「合掌俳壇」という欄があり、月例句会(坐忘会)での作品が発表されています。これは句会ご指導の齋藤幽谷先生の選によるものです。ここからいくつかを、このブログでご紹介しましょう。(「合掌俳壇」末尾の「選後小評」より再掲)     朧月うしろ手に木戸閉めにけり   林 玄妙   木戸を出てふと空を見れば朧月ではないか。 冬の間はっきりと見えていた月が朧に見える季節となった。 戸を開ける時には気がつかなかった月に、...

坐忘会だより | 2020.05.21 Thu 15:30

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