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山本一歩『句集 神楽面』(文學の森)より

    平成23。 「谺」主宰。第4句集。 蚊の声の辺りを二つ三つ叩く 扇風機止つてをりし羽根が透け さりげなく揺れて蓑虫日和かな 焼藷の屋台と歩調合うてをり 降る雪の中なる雪を掻きにけり ラムネ抜いて何か忘れてしまひけり 天の川仰ぎ見るときみな若し マネキンの首をそのまま鳥威 剥かれある林檎に年の改まる 孤立してゐる手袋の中の指 燗熱うせよ先生の命日ぞ 蝌蚪に脚出て鯨にはもうなれぬ 蟻を見てをれば大きな靴通る 浴衣着て手足の頼りなかりけり 眠...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2020.10.21 Wed 21:08

大杉洋子『句集 蜃気楼』(あわ書房)より

    2008年。 「青海波」同人。第1句集。 大漁旗祭太鼓の破れぬか 水平に年移り行く去年今年 うぐひすの音の度ごとに杖を置く これからは小市民なり卒業す 秒針の音の広がる小正月 屋久杉の木目細かき大西日 御宸筆たちまち汗の引きにけり よく笑ふ分校の子等鳳仙花 シスターの背筋真ぐ十二月 雨蛙豊葦原を席巻す 青嶺踏みきし山門の大わらぢ 黒潮へ海亀の子の百二百 彼岸花咲くころ帰る母の家 千年の森千年の苔清水 坑道に頭打ちつつ岩清水 海中の城(ぐす...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2020.10.19 Mon 21:44

田島和生『句集 天つ白山』(角川学芸出版)より

    2015年。 「雉」主宰。第3句集。 雪撥ぬる笹や先生癒え給へ 山羊繋ぎ一番草を取りゐたる 読始湯川博士の天才論 寄り添つて地に影ひとつ寒雀 バイオリン大ひまはりへ弾く子かな あふ向きに死にゆく蝉へ蝉時雨 新藁の匂ふ夜明を逝かれしか あたたかな息が近づく雪女 一ところ雪の窪みて雀の死 初蝶の白に徹してまぎれざる みどり子の目が開き泰山木の花 ある僧の水割呷る晩夏かな 冬深む古書舗の奥へ蟹歩き くるぶしを蟻強く咬む爆心地 白日傘平和公園出て開...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2020.10.15 Thu 23:21

第353回坐忘会 令和2年神無月句会

JUGEMテーマ:俳句   第353回 坐 忘 会    開催日:令和2年10月11日(日)  場 所:本部道場南寮  参加者:9名  投句者:6名 投句数:106句    夏が秋を跳び越えて冬になったような日でした。それでも、窓、戸を解放し、コロナ対策を施して白熱した会になりました。    幽谷先生から皆さんに、棟方志功の版画のプレゼントがあり、義幸さんからは自ら上梓の芭蕉論「門敲かばや」の贈呈を受けました。    今回の最高得点者が、ダントツで則子...

座禅修行だより | 2020.10.13 Tue 15:52

鷲谷七菜子『句集 晨鐘』(本阿弥書店)より

    2004年。 「南風」主宰。第7句集。 寒月のいつのぼりゐし高さかな 声出さぬひと日の果の大嚏 満面に青葉の照りをゆるしけり 青梅雨の大き一枚ガラスかな 机ひろく拭きそれよりの涼夜かな 落椿いまだこの世と見ひらける 葬ひの一部始終を蟇 聞き洩らす一言秋の風過ぎぬ 大き虹あらはれて年行かむとす 底なしの谷へ落花の狂ひかな 西行の齢越えたり春の雁 東風にあげたる後継ぎの男眉 鯉の背のうねり大きく立夏かな ややおいて初蝉なりき耳すます 白雲のかな...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2020.10.12 Mon 23:07

羽田岳水『句集 和光』(角川書店)より

    平成8。 「燕巣」主宰。第2句集。 鍛冶町に鍛冶の亡びし鳳仙花 空返事して妻とをり弥生尽 リラ咲くや石壁厚き洋酒蔵 人好しの顔も親似や花南瓜 ひやかして過ぎし夜店へまた返す 剃刀の替刃さがすや桂郎忌 鴨の位置かはりし午後の比良荒るる 夜の雁や病む子へ急ぐ当直医 村の子の知る近道や蓼の花 出稼の荷を抱き眠る暖房車 野良猫の爪研いでをる立夏かな 初螢弥陀拝みたる手に掬ふ 車椅子の子がしかと持つ菖蒲太刀 産近き牛に灯を吊る青葉木菟 秋霖や集魚...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2020.10.09 Fri 22:39

羽田岳水『句集 胡笳』(安楽城出版)より

    平成12年。 「燕巣」主宰。第3句集。 紅葉冷え鐘冷え神変大菩薩 一尊に供へて婆の亥の子餅 右顧嫌ひ左眄さらなし蟇 入峰足袋替へて未明の霧へ発つ 搾乳の牛のめつむる豆の花 少年の口笛が行く月夜茸 大姉名の子を凩に呼ぶ遍路 蛇捕が点かぬ煙草をひねり捨つ 落雷死告ぐ朝刊の端めくれ 妣の夜着足しはらからの喪の雑魚寝 商館のネオン消えたる安息日 長梅雨や女みだれし終電車 灰均す火箸の環鳴る夜の雪 夏痩せの声を嗄らしてキムチ売   JUGEMテー...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2020.10.06 Tue 23:41

佐久間慧子『句集 夜の歌』(文學の森)より

    平成24。 「葡萄棚」主宰。第4句集。 老ふたりつかずはなれず春耕す 泰山木真理一つと咲きにけり 花高し蓮の水の暗ければ あばら屋と見れば闘鶏飼はれけり 白桃やルノアルの彩ところどころ 梟のどちら向いても真顔かな 夏蝶にハチャトリアンの楽の欲し 手をついて太古の眠り山椒魚 古書肆よりとどく目録今朝の秋 紐つきれそこらに拾ひ菊括る 家猫の恋の相手のなきままに 右いせみち左はせみち風は秋 呼びこみをしては手焙へともどる 昼網と筆太に書き小鯵売...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2020.10.03 Sat 23:06

投稿句 題『七夕』

長らく間が空きました。   コロナ下で吟行が難しい時勢でしたので、各々で七夕を季題に句を作ってもらいました。   ◆ピエール   晴れるとも荒ぶる風が冊破る 梅雨空で今宵も逢えぬ天の川 短冊に願うは凡て平らな日   評:残念ながら近年の七夕はなかなか晴天にはならず、今年も不穏な天気でした。 「凡て平らな日」、平凡な日こそが願いであるというのは、今、日本中すべての人のものでしょう。 その短冊に吹き付ける強い風は時勢の厳しさを暗示してもいますが、笹のしなや...

小金井句会記 | 2020.10.02 Fri 10:47

新田千鶴子『句集 小鳥来る』(本阿弥書店)より

    2012年。 「青嶺」同人。第1句集。 小春日や二階から道教へられ 盆踊上手な人を見て踊る あたたかや片方たたむ驢馬の耳 胸かたき少女の裸像小鳥来る 柿右衛門眺めし柿に夕日かな 冬ぬくしぬくしと鳶の大きな輪 三日はや左右に開く工場門 椿落ちてなにやらものを言ひさうな 赤とんぼなにを思うてまた戻る 満州国歌習ひし記憶桐一葉 榠樝の実笑ひたくなる空の青 白菜を割ればひかりのとぶやうな 落葉降る神も仏もひとつ山 図書館へ本を返しに今朝の秋 &...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2020.09.28 Mon 21:39

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