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川上弘美『句集 機嫌のいい犬』(集英社)より

    2010年。第1句集。 はつきりしない人ね茄子投げるわよ C難度宙返りせる春のたましひ 初夢に小さき人を踏んでしまふ 少しだけ飛ぶにはとりやゐのこづち 目覚むれば人の家なりチューリップ おたまじやくし諸手に掬ふこぼれ落つ 音高く庖丁つかふ立夏かな 恋文をみせあふ少女百日紅 布かけて文鳥の籠冬深む 少年の手淫にねむる小雪かな ポケットに去年の半券冬の雲 膝たてて膝の匂ひや冬深む きみみかんむいてくれしよすぢまでも 草踏んで会ひにゆくなり日の盛り ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2022.02.20 Sun 12:30

藤埜まさ志『句集 木霊』(角川書店)より

    2018年。 「森の座」同人。「群星」代表。第3句集。 嫁ぐかの柩の母の花衣 籐椅子に坐すや亡夫の押し返す そこここに爆ずるゴーヤや敗戦日 枯れきつて骨うつくしき欅かな 麓まで垂るるその列初詣 冬耕も詩嚢も天地返しかな 兵卒の大きな墓標冬菫 冬日撥ね枯山水の波頭 吾を照らすナースやバレンタインの夜 種牛の波打つ背や下萌ゆる 料峭や老攫ひゆく介護バス 御虎子(おまる)へのうんち初めて桃の花 高階の玻璃満帆に大南風 大小の無き万国旗青嵐 まるで...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2022.02.17 Thu 22:49

白鳥竣『句集 陽炎』(卯新山文庫)より

    昭和52。 「寒雷」「陸」同人。第1句集。 子の頭撫づ雛の髪よりやはらかし 乳房躍らせ盥に春の水を張る 風しづむたび雛罌粟は蝶を飛ばす ラムネ飲む壜の底より白鳥座 いぶかしみ金魚近寄る無精髭 天の川ひとは音たて尿りなす こほろぎや足でさぐれど下駄揃はず 降誕祭頭上を走る暗き梁 三伏の鉄鍛つ貌やわめくに似て 転げ出てピーマンそれぞれ肩怒らす 青簾主婦を忘れし妻匂ふ 肉となり鯉の冷たさ重さ掌に 一大鉄塊地鳴りして来てラッセル車 身にとほき手足...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2022.02.13 Sun 15:10

矢成緑風『句集 月下香』(本阿弥書店)より

    1993年。 「万蕾」同人。第1句集。 朝より灼けて坑夫の墓百基 秋天を突く噴水の力づき 雪蹴つて負けの嘆きを隠さざる 肩に手を置かれてゐたり虫時雨 去年今年なく作業衣をつけにけり 秋晴や電柱の影壁に折れ 群羊に重なり春の雲まろし 芥子朱し小手かざさねば沖見えず 芥子吹かれあるなしの影ちらつけり ビールの罐ぺかぺか潰し論議中 足音の落葉を踏みて遠ざかり 竹林に真直ぐな雨秋初め 蜥蜴出づ六千尺の巌の上 着ぶくれて鏡にとらへられにけり 菜の花に...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2022.02.05 Sat 00:22

田村幸江『句集 船遊び』(本阿弥書店)より

    1992年。 「草苑」「航標」同人。第1句集。 頬の傷皺となりたる終戦日 露座仏にほど近くゐて桜餅 鰤の頭をたたき切つたる光かな 風呂吹きの舌にくづれる旅疲 三日はやうねりに向ける舳かな 春立ちぬ仁王の足の裂け目にも 祝ぎごとの夜に入りたる白牡丹 帆柱に雲の行き来やサングラス シャッターを塗りかへてゐるパリー祭 一山に一路見えをり秋あかね 産声やホースの先に薄氷 あたたかや船窓に置く哺乳瓶 六甲の水を飲みをり女郎花 流灯に流るる空のありにけり ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2022.01.29 Sat 22:23

第366回坐忘会 令和4年睦月句会

JUGEMテーマ:俳句    開催日:令和4年1月16日(日)  場 所:本部道場 南寮  参加者:11名  投句者:6名    令和4年の初句会ですが、オミクロン株による感染者急上昇の兆しの中、新年会は取り止め、対策取っての開催であったが、多くの参加者があって盛会であった。    最高得点者は前回に続き ”眞澄さん”    今回の兼題は「初詣」「日向ぼこ」「雪明り」   ------各自の高得点句を紹介します。--------    女校生けふは巫女...

座禅修行だより | 2022.01.20 Thu 16:00

松原雅子『句集 紅枝垂』(本阿弥書店)より

    1991年。 「草苑」「航標」「海流」同人。第1句集。 生国や藁の匂ひのつるし柿 オペラグラスを夫と互に初芝居 鶏小屋の敷藁かわく涅槃変 昼寝覚夢は五尺の母のこと 婚の荷の遠ざかりゆく袋掛 永き日の四時で止まりし大時計 帯締むる間に満月のあがりけり きき酒は女ばかりや梅二月 太宰忌や白磁の皿に墨をとき 終戦日その朝のこと兄のこと 折箱につきし塩昆布夏芝居 倒木の蒼きを跨ぎ月夜茸 丹の橋を渡れば木の実しぐれかな 早春の船に持ち込むトルストイ ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2022.01.16 Sun 23:09

河野美千代『句集 国東塔』(コールサック社)より

    2020年。 「沖」同人。第1句集。 冬花火果て群衆に気づきたる 還暦の未だ夕焼ほど闘志あり 北風や仁王の眼こぼれさう 夏よもぎ門だけ残る校舎跡 もろもろの管抜き去つて死者涼し 爪立ちを覚えたる子に天高し お降や音に過敏な耳ふたつ 春風と睦みて水車稼働待つ 投函の音なき不安春の闇 冬帝も来し僧正の大葬儀 たんぽぽの絮奪はれて棒立ちに ぜんまいや思ひ巡らす日の多し 太陽に似合ふ水着を買ひにけり 紅葉かつ散る山門の柱瑕 木の葉髪まだ捨てきれぬナー...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2022.01.06 Thu 22:50

清水余人『句集 香日向』(飯塚書店)より

    令和2。 「田」編集長。第1句集。 単線の一駅ごとの桜かな 黄昏に人の溶けゆく寒さかな 夏掛や母たひらかに寝ておはす 睡蓮の池の明るき美術館 冬銀河笑顔で帰るために泣く 母撮らば遺影にせよと花の下 初日いま海離れむと歪みけり 母の家訪ねてしばし昼寝かな 雷鳴や虚空を摑む赤子の手 饂飩屋の隣に古墳うららけし さくら見てやぎ見て帰る土手の道 武器に触るることなく老いて終戦日 軍港にカレーの香る秋日和 風邪ひきてよく風邪ひくと言はれけり ...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2022.01.02 Sun 23:31

黒田淑子『句集 絵筆』(玉梓発行所)より

    令和3。 「玉梓」同人。第1句集。 異国より帰りて花の淡きかな 母の日の母の絵を見に帰りけり 病床の夫に若葉の風通す サングラス掛けて歩幅の広がりぬ 三世の動き出したる原爆忌 散紅葉掃かれぬままに砕けゆく 正月の母やまだまだ生きる顔 まだ雲に形ありけり走り梅雨 訪うて語らふのみの母の日や 手鏡を眺める母や半夏生 ここまでと決めて草取りはかどりぬ ひとゆらぎ待ちて湯豆腐母に盛る 腰低うすればするほど草芳し 落つるとき重さを見せて肥後椿 人...

《本の出張買取》京都・全適堂 店主ブログ | 2021.12.29 Wed 10:51

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